売上ゼロから新市場を開拓 農家と挑むジェラートマリノの6次産業化支援事業
(※本記事は「関東経済産業局 公式note」に2026年5月29日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

新規事業に取り組みたいと思っていても、「何から考えればいいのか分からない」「頭の中には構想があるが、うまく言葉にできない」そんな悩みを抱えている経営者は少なくありません。
株式会社ジェラートマリノの池田代表も、その一人でした。
コロナ禍で既存事業の売上がゼロになり、事業そのものを見直さざるを得ない状況の中で、同社が取り組んだのが経営革新計画の策定でした。
計画づくりを通じて得られた最大の成果は、単なる新規事業の立ち上げではなく、経営者のビジョンやゴール、そこに至るプロセスを明確に「言語化」できたことだったといいます。
本記事では、ジェラートマリノの挑戦を通じて、経営革新計画が中小企業の経営者にとってどのような意味を持つのかを紐解いていきます。
【会社概要】
株式会社ジェラートマリノ
1986年創業。埼玉県熊谷市にて、天然素材を利用したジェラートやシャーベット、アイスクリームを製造、販売している。
池田順也代表はアトツギとしてコロナ禍による売上げゼロの状態から経営革新を決意。オンリーワン商品を作る為、小さなジェラート屋ができる可能性を日々模索中。
主力事業の売り上げがゼロに!?
Q 事業の転機となった出来事があれば教えて頂けますか
当社は今期で39期に入るのですが、これまで焼き肉屋や旅館、結婚式場、機内食用食品会社などから生産委託(OEM)を受け大量にジェラートを納めるいわゆるB to B形式での事業を行っていました。ただ、原材料の値上げや外食需要の減少の影響を受け、この事業が徐々に縮小していき、2020年のコロナの時に売上げゼロになってしまいました。何か新しいことをしないと経営が立ちゆかなくなってしまい、2024年に私が事業を承継したタイミングで経営革新を行うことを決断しました。
Q 新事業のアイデアは、どのように生まれたのでしょうか
当社のHPをご覧になったイチゴ農家の方の悩みが、新事業のアイデアが生まれるきっかけでした。規格外のイチゴを捨てるしかなく、「これをジェラートなどの加工品にして売れないか」というご相談があり、イチゴ農家のオリジナルジェラートを作ったのがきっかけです。本事業は、農家の方から材料を支給いただき、当社が得意としているジェラート作りとコンサルティングを行うもので、自社の強みを生かせる有益な事業であったので、取り組もうと思いました。
漠然としたビジネスプランをロジカルに整理。経営革新計画に取り組む理由とは?
Q なるほど。そのアイディアを経営革新計画のテーマとして取り組んだということですね
はい。経営革新計画では『「6次産業化・特産品づくりのパートナー」への革新』というテーマで、地域の特産品(農作物)を使用した加工商品を開発したいと考えている農業従事者(特に新規就農者)を対象に、以下の支援事業に取り組むことにしました。
■ 支援内容
(1)小ロットからのジェラート生産
(2)情報発信のコンサルティング
(3)パッケージデザインなどのブランディング支援
(4)英語表記などのインバウンド対応
(参考:埼玉県HP)
Q 事業計画を策定することで、どのような変化や気づきがありましたか
以前より農家の方との取引関係があったので漠然としたビジネスプランを持っていたのですが、3年とか4年とか長期的なスパンでどのくらい売上げや利益が出せるか、論理的にも数値的にも整理できていなかったので、計画を策定する過程で何故そういう展開になるのか等が整理されたのはとても有意義でした。また、SWOT分析により自社の強みや弱み、新事業を実施する上で重視するポイント(ターゲット層やプロモーション方法)などの気づきを得られたことも有意義でした。特に今回は熊谷商工会議所や中小企業診断士の方に3か月程度の期間をかけてじっくり対話や壁打ちを繰り返しながら伴走いただけたので、当社のような10名未満の小規模事業者ではなかなか取り組むことができない経験をさせてもらったと感じています。
新事業がもたらした意外な効果
Q 新事業は御社にどのような効果をもたらしているのでしょうか。
従来の事業では取引先から「お仕事を頂いている」という感覚でやっていたのですが、新事業では「農家の方と一緒に取り組んでいる」という感覚があり、ビジネスに主体性が生まれました。また、調べてみると世の中のジェラート屋さんは、店舗を構えて対面形式で少量を売る事業者か自社メーカーのジェラートを工場生産で大量に売る事業者がほとんどなんです。両者とも自社製品生産で手一杯の状態で、当社のように300個以下の小ロットでジェラート生産を受けてくれる会社はほとんどありませんでした。当社の強みを生かした新しい市場を開拓できたなと感じています。また、主体的にビジネスを構築できるようになったため、利益率も15~20%程度改善しました。
Q 今後の経営方針について教えてください。
コンビニスイーツをはじめ、どんどんジェラートのクオリティが向上する中で、本事業のように「素材からストーリーが生まれる」価値提供型のビジネスを創出していきたいと思っています。例えば、いちご狩りをきっかけに農園のファンになった方が、そのいちごを使ったジェラートを購入・取り寄せするといった流れを生み出すことができればいいなと。その中で、当社は強みを生かすことができる生産者のパートナーとして事業拡大を図っていきたいです。
経営者のビジョンを言語化するためのツールとして
Q 最後に中小企業の方々が経営革新計画を活用するにあたってメッセージがあれば教えてください。
経営革新計画の策定を通じて、最も強く感じた魅力は「ビジョン・ゴールとそのプロセスを言語化できる」点です。経営者の多くは頭の中に自社のビジョンやゴールを持っていますが、それを言語化できているケースは多くありません。中小企業の経営者ならなおさらだと思います。
特に、新規事業に取り組む際には既存事業よりも事業の実効性や実現可能性が求められます。経営革新計画では士業の方や商工会議所からの支援を受けながら多角的な視点で検証することができるので、計画の精緻化ができる点も大きな魅力だと実感しました。中小企業の経営にとって経営革新計画を活用することは非常に有益なツールになると思いますのでオススメです。
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- 関東経済産業局 公式note