日榮新化の挑戦 ラベルの「裏側」から資源循環を再設計
(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2026年7月30日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

こんにちは、近畿経済産業局 環境・資源循環経済課です。サーキュラーエコノミーの「いま」を知る ― Rethink Design Journalでは、現場の実践を通じ、サーキュラーエコノミー(CE)に関する取組を少しでも“自分ごと”として捉えるためのヒントを発信しています。
Rethink Designとは、モノのつくり方や使い方を見直し(Rethink)、廃棄を前提としない形へと再設計(Design)することで、CEの実現を目指す考え方です。
本企画では、これまでに当局のホームページで紹介してきた実践事例におけるキーパーソンへのインタビューをお届けしています。
今回は資源循環プロジェクト代表を務める日榮新化株式会社 准執行役員 資源循環事業部長 本池 高大さんにお話を伺いました。
―誕生秘話|取組はどこから始まったのか
「資源循環プロジェクト」は、ラベル産業に対する危機感から始まりました。SDGsやサステナビリティへの関心が高まる中、ラベルを貼り付ける際に発生する台紙(剥離紙)の廃棄が問題視されるようになってきました。国内では年間約13.9億m2、琵琶湖2個分に相当する量が焼却されています。
こうした状況を受け、同社では「このままでは市場や産業そのものが縮小しかねない」という危機感が高まっていました。さらに、ラベルユーザーから回収要望が出はじめるなど、従来の“当たり前”にも変化の兆しが見え始めます。
従来のラベル台紙「剥離紙」は、紙と樹脂の複合素材という構造上、リサイクル技術やインフラ面・経済合理性・法令対応面で限界があると判断。そこで着目したのが、「資源循環を前提とした製品設計への転換」という発想でした。2020年4月、同社清水社長の方針で本取組が社内プロジェクトとして正式に発足。その時、プロジェクトリーダーに任命されたのが本池さんでした。
―Rethink|何を見直したのか
同社が見直したのは、「台紙は剥離紙である」「使用後は廃棄・焼却される」という当たり前です。
従来の「剥離紙」は紙に樹脂をコーティングまたはラミネートした複合材料であり、多くの自治体で古紙回収の「禁忌品」に設定されています。そのため再利用が困難で、回収自体も企業単位では難しく、資源循環につながりにくい素材でした。
こうした前提に対して同社は、「誰かにしわ寄せがいく形で無理にリサイクルする」のではなく、「最初からリサイクルを前提に製品設計をし直すべき」と考えました。
そこで注目したのがPET素材です。PETボトルに代表されるようにマテリアルリサイクルに非常に適しており、同社にとっても様々な製品に使用する馴染みの深い素材でした。
同時に重要視したのが、モノづくりの責任と言える「品質・コスト・事業の継続性」です。
本池さんは、「仮に資源循環という付加価値がなくても、この製品を使いたいと思われなければならない。それがメーカーである日榮新化のポリシー」と語ります。
環境負荷低減を理由に顧客へ負担を求めるのではなく、製品としての魅力・競争力を確保した上で環境価値を実現する方針を取りました。
―Design|どう再設計したのか
本プロジェクトは、日榮新化を含む異業種6社により共同運営されています。サプライチェーン全体を巻き込むことで、ラベル台紙の水平リサイクルを実現しています。
当初設計の核となったのは、東洋紡(株)から提案を受けた「カミシャイン(R)」をベースとした「リサイクル専用台紙」の設計です。リサイクル原料や空気の発泡層を含む「カミシャイン(R)」の特性を活かすことで、品質とコスト競争力、リサイクル性能を最適化を実現しています。
また同社は、回収から再資源化までのいわゆる「静脈側」の仕組みづくりにも踏み込みました。三重県に専用のリサイクル工場(三重RP工場)を導入し、回収した台紙を再びフィルム原料に戻す「水平リサイクル」プロセスを構築。現在も事業の普及に伴い、異物除去技術の高度化などに取り組んでいます。
さらに、ヤマトボックスチャーター(株)との連携により、同社が展開する「JITBOXチャーター便」を活用した合理的な回収スキームを整備。ヤマトグループのネットワークを活用し、回収範囲を全国へ広げています。
しかし、課題はこうしたスキームの構築だけではありませんでした。
本池さんが難しいと語るのは「共感を起点に会社を動かしてもらうこと」です。現状のままでも不自由なくラベルを使用できるため、多くの企業にとって「やらなくてはならないこと」というよりは「やった方が良いこと」と受け止められます。そうした現状を変えるにはどうしても手間やリスクを感じ、現状維持の力が働くもの。
それでも賛同・参画の輪が広がっている背景には、この取組に共感した各社の担当者が、情熱を持って推進役となり会社を動かしてきたことがあります。こうしたキーマンの存在と、企業間、そして担当者同士の信頼関係が各社導入の鍵となりました。
―現在地|その後どう広がっているか
社内プロジェクトとして開始してから約6年。シオノギファーマ(株)の医療用医薬品への採用をきっかけに、取組は医薬品、日用品、電子機器など多様な分野へ広がっています。
現在では参画企業は56社(2026年7月時点)に拡大しており、その輪は着実に拡大。企業のみならず、自治体との連携も増え、業界横断の資源循環モデルとして波及しています。
そのような国内での取組が評価され、世界的に権威のあるパッケージング技術のコンテスト「WorldStar Global Packaging Awards 2025」において、「WorldStar Awards 2025」及び、特別賞の Sustainability 部門で 銀賞(世界第2位)を受賞しました。
共同運営企業のシオノギファーマ(株)古島さん(写真左側)とともに映る本池さん(写真右側)
―キーパーソンの想い|原動力と今後の展望
本池さんが繰り返し語るのは、「自社のためだけではなく、ラベル産業の未来のために取り組む」という姿勢です。ラベルが環境負荷の高い産業と見なされれば、その影響はサプライチェーンに関わるステークホルダー全体に及びます。だからこそ、この取組は産業を次世代へつなぐための挑戦でもあります。
CEの実装に欠かせない要素は「共感」だとも語る本池さん。優れた技術があっても、それだけでは社会実装は進みません。社内外で共感した人が推進役となり、はじめて取組が広がっていく――そんな実感を、このプロジェクトを通じて強く感じているといいます。
「これまでお世話になったラベル産業に関わる皆様のために、この事業を成し遂げる」。一貫した経営方針のもと、同社は工場建設から回収網の整備、評価手法の構築まで、一つひとつ形にしてきました。
本池さんの原動力となっているのが「恩返し」の気持ちです。参画や導入を決断した企業・団体の期待、この事業に投資を決断した清水社長や同社社員の期待に応えるため、変化を臆せず事業の成長にも妥協なく挑戦し続けています。
今後は、リサイクル技術の高度化や製品ラインナップの拡充、海外展開を進めていく方針です。
ラベル産業の未来のために―
将来的には「ラベル台紙の廃棄ゼロ」を目指して、資源循環プロジェクトと同社の挑戦は続きます。
まとめ|この取組が示すヒント
- 環境負荷低減を理由に顧客へ負担を求めるのではなく、品質・コスト・安定供給を担保した上で、「選ばれる製品」であることが重要です。
- 実装を前に進める鍵は、技術だけではなく、共感と信頼関係にあります。
本事例が、CEを「自分ごと」として捉えるための、思考やアクションのヒントになれば幸いです。
<関連リンク>
近畿経済産業局 CE実現に向けた取組 Rethink Designプロジェクト
Rethink Designからみるサーキュラーエコノミーの実践知
(資源循環プロジェクト 該当ページ)
元記事へのリンクはこちら。
- 近畿経済産業局 公式note