コロナ禍が新事業の契機に 新たな旅行業のあり方を提示
東武トップツアーズはコロナ禍の苦境を機に、旅行業で培ったホスピタリティーとコーディネート力を生かし、国や自治体からの受託事業に果敢に挑んできた。大型イベントの運営など、旅行業から派生するビジネスへのチャレンジは、旅行業の新たなあり方を提示している。

旅行会社としては引き続き、魅力的なツアーづくりに力を入れている。2023年7月に導入された東武鉄道の新型特急スペーシア Xで日光へと紅葉を見に行くプランは秋の目玉といえる
Photo by Tozawa/Adobe Stock
コロナ禍で旅行が停止
窮地を救った社員からの発案
東武トップツアーズは、東武鉄道グループの旅行会社「東武トラベル」と、東急観光を前身とする「トップツアー」が2015年4月に合併して誕生した。「個人旅行に強い前者と、団体旅行に強い後者が補完し合って誕生した会社」と 社長執行役員の百木田康二氏は言う。「ありがとうの連鎖を」を経営理念とし、「設立以来、人が主人公、財産であることを経営の根幹に据える」とともに、全47都道府県に店舗を有し「それぞれの地域固有の課題解決を通して地域を元気にし、ひいては日本を元気にしていくことが私たちの使命」と語る。
そうした「人の力」をベースにした理念と思いは、コロナ禍で移動が制限され、旅行ビジネスが立ち行かなくなるという危機に直面した際に行動となって表れた。同社がこれまでに培ってきた、顧客におもてなしの気持ちで接する「ホスピタリティー(おもてなし)力」と、交通事業者、宿泊事業者をはじめとするビジネスパートナーを巻き込む「コーディネート力」を生かして、この局面をどのように打開するかを社内で議論。そこで社員からアイデアとして挙がってきたのが、ワクチンの大規模接種会場の運営受託だったという。
会場・備品の手配から、接種対象者への告知、医療スタッフの手配、記録の管理まで業務は多岐にわたるが、「そうしたプロセスは、私たちが手がけてきた旅行ビジネスと非常に似たところがあるということに社員が着目し、提案してくれました。一刻も早くコロナ禍が収束し、人々が自由に動ける状態に戻したいという思いも後押ししての発案だったと思います」と振り返る。とはいえ、それまでだれも手掛けたことのない新しい事業。試行錯誤の連続だったというが、これをやり切ったことで視界が開けてきたという。
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