日立建機、油圧ショベルの操作を学ぶ「フィジカルAI」開発へ
日立建機は2026年10月より、油圧ショベルのオペレータ操作を学習する「フィジカルAI」の研究開発を開始する。カメラ映像や作業指示をもとにオペレータのレバー操作をAIに学習させ、状況に応じて適切な操作を判断・実行させる技術を確立する狙いだ。経済産業省とNEDOが推進する生成AIの国家プロジェクト「GENIAC」に採択されており、スタートアップや大学と組んだ産学連携体制で開発を進める。2026年9月9日に発表した。
油圧ショベルは、対象物の形状や位置、周辺環境、天候など、現場ごとに異なる状況に応じた操作が求められる機械だ。そのため自律運転の実現には、周囲の状況を認識しながら適切な操作を判断できる技術が不可欠となる。日立建機はこれまでも自律運転の研究開発を進めてきたが、今回はオペレータの操作データを学習したAIを新たに開発し、現場環境に応じて自律的に作業を行う建設機械の実現を目標としている。将来的には、災害現場におけるがれきの除去作業や、建設・鉱山現場での掘削・積込作業などにおける自律運転の実現を視野に入れる。
開発にあたっては、オペレータの作業映像と操作履歴など長時間のデータを収集し、AIに学習させる。通常の作業に加え、作業ミスから立て直す復旧(リカバリー)の過程や、天候・周辺環境・機械の状態・対象物の位置といった多様な条件下で取得したデータを学習させることで、実際の現場でも高精度な施工を実現するAIを目指す。
今回の研究開発は、経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する生成AIプロジェクト「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」の支援を受けて行われる。GENIACは、国内の生成AIの開発力強化と社会実装の促進を目的としている。開発は産学が連携して推進し、日立建機のほか、AIスタートアップの株式会社Jizai(東京都文京区)、奈良先端科学技術大学院大学が参画する。
なお、日立建機は2027年4月1日付で商号を「ランドクロス株式会社」に、コーポレートブランドを「LANDCROS」に変更する予定だ(関連記事)。
建設・鉱山業界では、労働力不足への対応に加え、厳しい作業環境における安全性や生産性の向上が課題となっている。加えて、近年激甚化する自然災害への迅速な対応や、鉱物資源の安定確保の重要性も高まっている。
フィジカルAIとは、現実世界の状況を認識し、自律的に判断・行動できる技術を指す。産業用ロボットやヒューマノイドへの応用が進む領域だ。日立建機はこれを、建設機械・鉱山機械が「周辺環境の把握(認知)」「作業計画の最適化(判断)」「操作の実行(実行)」という一連のプロセスを自律的にこなし、安全で効率的な施工を実現するための技術と位置づけている。単なる機械の自動化ではなく、AIが機械や周辺環境を理解したうえで自律的に施工を行う点が特徴だとしている。