編集部総論 多者協働がトレンドに、創造性が導くビジネスの進化

社会構造が複雑化し、消費者のニーズが多様化・深層化する中で企業が持続的に成長するためには、アイデアを考え出し、事業をデザインできるクリエイティブな人材と組織が不可欠だ。イノベーションを生み出す鍵となるクリエイティビティ。その育成と活用に向けた最新動向を紹介する。

英国のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、デザインミュージアムとして過去の手工芸品や工業製品などの膨大なコレクションを展示。デザインの重要性を社会に知らせるとともに、英国デザインのインスピレーションの源にもなっている Photo by coward_lion/Adobe Stock

デザイン経営定着を目指す経産省
海外では多者協働の枠組みも

デジタル技術を基盤とした現在の産業社会において、ビジネスと創造性の間には密接な関連がある。ここで生き残るためには、常に新たな価値を提示し続けなければならないからだ。そこで、クリエイティビティを企業や組織の事業に生かすためのしくみや、それを支援する方策が模索されてきた。

経済産業省は2018年に、産業競争力とデザインを考える研究会報告書「『デザイン経営』宣言」を公表。2023年には「これからのデザイン政策を考える研究会」を開催している。有識者を集め、計4回の議論を実施した同研究会では、日本のデザイン振興の大きな課題として、5項目を挙げた(囲み参照)。

国内のデザイン環境の課題

①デザインの定義が定まっていない
ー意匠から社会システムまで幅広い分野をカバーするようになっている中で、「デザイン」が意味する内容が企業や人ごとに異なっている。

②デザイン投資を促す情報の不足
ー英国などが持つ調査研究機関「デザインカウンシル」が日本には存在しないため、調査研究にもとづく経済効果の可視化ができない。そのために投資も進まない。

③蓄積した過去のデザイン資源が活用できない
ー工業製品やポスターなど、デザインに関するものを専門に所蔵・展示するデザインミュージアムがなく、過去の資源を生かすことが困難。

④教養としてのデザイン教育の不足
ー専門の教育機関で学ぶ以外、デザインへの理解を深める機会が少ない。

⑤デザイン人材の都市部への偏在
ーデザイン人材の約6割が東京・大阪に集中しており、地域のデザイン人材は不足気味。

出典:経済産業省

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