児童養護施設出身のモデルとして 社会的養護の支援に挑む

「生い立ち関係なく、誰でも好きな『じぶん』になれる!」。そう伝え活動するモデル・田中れいか。児童養護施設出身であることを公表し、社会的養護の啓発・支援活動にも取り組んでいる。虐待などの事件や問題ばかりが取り上げられがちだが、それは一部分であって全てではない。「古いネガティブなイメージをアップデートしたい」。それが未来を切り開く鍵となると信じている。

文・油井なおみ

 

田中 れいか(モデル・社会活動家)

施設とそこで懸命に働く
職員のことをもっと知ってもらいたい

「私の場合、親の離婚によって、7歳から11年間を児童養護施設で過ごしました。その間、施設を理由にいじめられたり、『かわいそう』などと言われたこともなかったですね。自分も、友達と住む環境がちがうだけで、他は変わらないと思って生活していました。学生寮の延長。そんなイメージです」

3人兄妹の末っ子で元気なおてんば娘として育った田中れいか。4歳上の姉とともに児童養護施設へ入所した日は、施設に着いた車から降りず、ずっと泣いていたという。

「その記憶は全くなくて。私自身は集団生活に向いていたと思います。入所当初は施設でいちばんの末っ子で、みんなにかわいがってもらいました」

しかし、少しすると、自分より小さい幼児が入所し、状況が変わった。

「幼児さんが呼んだり泣いたりすると、一緒にいてくれた先生もそっちへ飛んで行くんです。自分も甘えたいけど、今は自分じゃないんだな、と幼児さんに配慮したり、周りの状況を察知して行動するようになりました」

おてんばだった少女は、いつしか自己表現が苦手な「おとなしい子」に育った。だが、田中自身はそれをネガティブなことと捉えていない。それは今の自分を形成したひとつの要素に過ぎず、また、早くから集団生活をしたことで社会性も育まれたのだと。

「とはいえ、やはり、集団生活に馴染めない子もいると思います。社会的養護には、乳児院や児童養護施設などの施設養護のほか、里親やファミリーホームといった少人数の家庭養護もありますが、現状、子ども自身が行きたい施設を選べるわけではありません。施設に関しては定員が埋まっているところが多く、また、子どもたちひとりひとりの要望を聞くにはかなりのマンパワーが必要です」

課題のひとつとして、施設職員の人材不足を挙げる。

「施設職員の主軸は、保育士の資格保持者か児童指導員。保育園の人材不足と同じような状況にあります。ただ保育園と異なるのは、社会的養護の施設については職員の配置基準や処遇も改善されてきたのに人が集まらないという点。施設職員の仕事自体が知られていないというのもあるし、知っていてもドラマなどで見た程度で、荷が重いと思われているのかもしれません。施設や施設職員の仕事をもっと知ってもらうことで、よい人材が集まれば、そこに暮らす子どもたちの環境もより良くなる。私がいろんなところで現状を伝えていくことで、施設への理解を深めてもらえたら。そう考えています」

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