「時間銀行」が復活させる相互扶助社会 高齢者向けサービスとして自治体も注目
「時間銀行(Time Bank)」は、利用者が保育や修理などのサービスを提供することで時間を「預け入れ」、後になって必要な時に誰かの助けを「払い戻し」できるサービスだ。(※本記事は米NYに拠点を置く非営利組織が運営するウェブマガジン、Reasons To Be Cheerfulから許可をいただき翻訳・転載しています。元記事はこちら。)
自分の時間を提供して「預け入れ」
誰かに何かを依頼して「払い戻し」する時間銀行
カリフォルニア州ソノマ郡セバストポールに住むデイビッド・ギル氏は、町でいちばん裕福な人かもしれない。医療管理者をセミリタイアしたギル氏は、世界で最も価値の高い通貨――つまり「時間」を、地元の「時間銀行」に480時間も貯金している。「それに、2023年の時間はまだ登録もしていないんだ」とギル氏は言う。
簡単に言えば、時間銀行は他の銀行がお金で行うことを時間で行う。つまり、時間を貯めて取引するのだ。
世界中で地元の時間銀行を設立するボランティアを支援する非営利団体TimeBanks.Orgのエグゼクティブディレクター、クリスタ・ワイアット氏は、「タイムバンキングを利用すると、地域のコミュニティに提供した1時間ごとに、1時間のクレジットを受け取ることができます」と説明する。正確な数は誰も把握していないが、中国、マレーシア、日本、セネガル、アルゼンチン、ブラジル、ヨーロッパなど少なくとも37カ国に数千の時間銀行が設立され、数十万人の利用者が320万回以上取引している。米国内だけでも500以上の時間銀行に4万人以上の利用者がいると考えられている。
セバストポールでは、約250人の住民が時間銀行の口座を持ち、必要に応じて時間を貯金したり引き出したりしている。例えば、地元の時間銀行の大口顧客でもあるギルは、コンピュータープログラミング、編集、財務計画に関する専門知識を提供することが多く、その見返りに空港への送迎や重い家具の運搬を手伝ってもらっている。「隣のブロックに住むスティーブはサンタローザ空港まで送ってくれました。ケンは私たちの冷蔵庫の製氷機を修理し、エレインはうちの電気工事をしてくれたのです。」
もし、ギル氏がプロの修理やタクシーを呼んでいたら、そこそこの費用がかかっただろう。しかし、時間銀行におけるいわゆる「利子」は単なる取引の価値を超え、社会資本を築いている。「私は他では出会えなかった素晴らしい友人を作り、今ではお互いに庭のパーティーに招待し合っています」とギル氏は言う。「時間銀行の取引はコミュニティを作り、コミュニティの一部になることです。そのようなものに価格をつけることはできません。」
ギル氏は数年前に初めて時間銀行のことを聞いた時、すぐに「素晴らしいアイデアだ」と思い大半の近所の人々と同じように参加した。サービスに登録し、使い始め、そして時間銀行側が協力者を募集したとき、彼は次のステップへと進んだ。彼自身が最も価値を置く通貨である、「時間」を受け取る側に進んだのだ。
多くの時間銀行はボランティアのコミュニティプロジェクトだが、セバストポールでは市によって資金提供され、コミュニティカルチャーセンターの非営利で運営されている。
試算は1時間=約29ドル
高齢者向けサービスとして自治体が注目
結局のところ、「時は金なり」だ。
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