社会課題解決を「自分事」にする ソマノベースの「MODRINAE」
林業と防災を結びつけた取組を展開するソマノベース。同社が販売する「MODRINAE(以下、戻り苗)」は、どんぐりから苗木を育て、山林に植林するプロセスを個人や企業が体験できるユニークな商品だ。社会課題解決を目指す活動に、多様な業界や人々を巻き込む鍵は何かを、同社の取組から考えていく。
MODRINAE for BUSINESSでは、企業のオフィスで苗を育てる(左)。
右はソマノベース代表取締役社長の奥川季花氏
紀伊半島大水害で被災した体験から
植林による土砂災害防止を着想
ソマノベースが販売する「MODRINAE(戻り苗)」は、どんぐりから苗木を育てる植林用苗木育成キットだ。購入した個人や企業は2年間、観葉植物として自宅やオフィスで苗木を育てたのち、ソマノベースに返送する。戻された苗木はその後、山に植林される。ソマノベースのミッションは「林業を通して土砂災害リスクの低い山林を増やす」。代表取締役社長の奥川季花氏、同社スタッフの浅利知波瑠氏と西来路亮太氏に、2019年に始めたこの事業に込める思いや描く未来を語った。
── まずは、ソマノベース設立や入社のきっかけについてお聞かせください。
奥川季花氏 私は出身が和歌山県那智勝浦町で、高校1年生だった2011年、紀伊半島大水害という台風災害を経験しました。死者・行方不明者61人という大災害で、私自身も被災し、友人の一人を亡くしました。そこから、災害対策に従事したいと思うようになりました。
大学では、ソーシャルマーケティングを研究をしている先生のゼミに入りました。社会課題にもマーケティングが活用できるという理論そのものが興味深かった。人間は、学術的に分析すると確固としたロジックがあって行動しているのです。それを利用して、社会的に良い行動を起こすためにマーケティングをする、という考え方が新鮮でした。例えば防災にマーケティングを活用する場合、平時から災害への人びとの関心を高めるだけでなく、いざという時には避難という行動につなげることが重要です。防災に関しては、人の行動までを変えることが絶対に必要で、それならばどうすべきかを考えるようになりました。
大学在学中の2017年にも和歌山県で台風災害が発生。防災と林業をテーマに起業したいという思いがより強くなりました。大学卒業後はソーシャルビジネスの会社に勤務し、その後、2019年にソマノベースを創業しました。
浅利知波瑠氏 実は私も和歌山県出身。奥川の出身地の隣、新宮市で生まれました。奥川は高校時代のクラスメートで、紀伊半島大水害では私も被災しているので、地元のことや被災のことなど、奥川とは共有できることが多いんです。高校時代から、奥川が防災に関する事業をやりたいというのは聞いていました。それが今やっと形になっているのかなと思います。
大学卒業後は銀行勤務で融資などを担当していました。その経験を生かし、ソマノベースで財務を中心に、営業や企画も担当しています。
全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。
-
記事本文残り77%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。