息苦しい時代だからこそ 講談界初を重ねた経験を活かし新たな講談界を

世襲を前提としない講談界で、三代続く初の講談師としてその芸を継承する、一龍齋貞鏡。令和4年度文化庁芸術祭新人賞を受賞し、翌年5月に第四子を出産。10月には真打昇進と快進撃が続く。女性が約半数を占めるようになった講談界でも、四児の母は初。表舞台に立つ華やかな姿の一方で愚直に突き進んできたその道のりに迫る。

文・油井なおみ

 

一龍齋 貞鏡(講談師) 撮影協力/経王寺

生まれて初めて聴いた
父の講談で人生が決まった

張り扇で釈台を叩き、どっしりとした声で講談を読む姿は凛として華やか。

講談は年齢の高い男性客が多いといわれる中、一龍齋貞鏡の独演会には若い世代や女性客の姿も見られる。

「講談は、関ケ原の合戦において敗れた武士たちが糊口を凌ぐ為に、此度の戦ではあの武将がこんな出で立ちでこんな働きをした、などと大名や道行く人にお聞かせしたのが始まりなどとも言われます。男性が築き上げてきた世界ですが、この30年で女性の講談師が急激に増えました」

通常の講談では男着物を颯爽と着こなし高座に上がる。写真は浅草見番での独演会の様子

1975年に宝井琴桜が女性初の真打となってから道が拓かれたという。

「男性しかいない中で、結婚、出産を経て、また高座に戻られるというのは心身ともに想像を絶するほど大変な事だったと思います。先輩方のご活躍がなければ今もまだ女性には無理と言われていたかもしれません」

貞鏡自身、講談師の七代目一龍齋貞山を祖父に、八代目貞山を父に持ちながら、講談に触れることなく育った。

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