ファッションはアートでありジャーナリズム 唯一の美を表現し社会問題を問う

現在、日本で唯一、パリ・オートクチュールウィークでコレクションを発表する中里唯馬。欧米の国立バレエ団やオペラなどの衣装も手がけ、物語を見事に視覚化する芸術性でも評価が高い。だが、彼が表現するのは表層の美しさだけではない。社会が抱える問題を見据え、これから先のファッションの在り方を問うている。

文・油井なおみ

 

中里 唯馬(ファッションデザイナー)

自らの哲学を服で表現したい
オーダーメイドこそ未来

「古本屋で雑誌をめくっていたら、カビの生えたドレスの写真が目に飛び込んできたんです。実際にドレスにカビが生えたら大問題ですが、私は直感的にそれを美しいと感じました」

この出会いが中里唯馬の人生を大きく動かした。

幼少期から着るものへのこだわりは強く、高校は私服で通える学校を選択。買ってきた洋服を組み合わせて着るだけでは飽き足らず、手を加えてアレンジしたり、文化祭などでファッションショーを主催するなど、ファッション中心の生活を送った。だが、それはあくまで趣味。進路として意識したことはなかったという。それまでは。

「現代アートのようなそのドレスと、私が日常的に楽しんできた衣服が、いずれも『ファッション』という言葉の中に含まれるということに、そのとき気づいたんです」

ファッションをもっと知りたい。だが、日本では自分が思う学びの場が見つからない。選んだのはベルギーのアントワープ王立芸術アカデミー。古本屋で感銘を受けたドレスのデザイナー、マルタン・マルジェラをはじめ、世界的デザイナーたちを多く輩出している伝統校であり名門校だ。中でもファッション学科は厳しい事でも有名で、卒業できるのは一部の生徒のみ。

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