揺らぐ「水素大国」の地位 国家間競争が加速する水素ビジネス
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、政府は水素を新たな資源と位置付け、社会実装を加速していく。水素を「つくる」「運ぶ」「貯める」「使う」というサプライチェーン全体で官民を挙げたさまざまな取り組みが始まっている。
電源構成の1%に位置付けられた
水素・アンモニア
2020年10月、日本は当時の菅義偉総理大臣のもと「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。また2021年4月には、2030 年度の新たな温室効果ガス削減目標として、2013 年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるとの新たな方針も示された。
カーボンニュートラル実現には、温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みが特に重要となる。再生可能エネルギーの最大限の導入や、CO2回収などの新技術の確立・導入に加えて、政府がカーボンニュートラル実現への有望な選択肢の一つとして位置付けているのが「水素」だ。
水素は利用時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーであり、太陽光や風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーを使って水素を製造することで、製造工程においてもCO2の排出を抑えることが可能だ。そして水素は、水や化石燃料などのように他の元素との化合物として地球上に大量に存在しているため、さまざまな原料をもとに製造することができ、エネルギーキャリアとして再生可能エネルギー等を貯め、運び、利用することができる特性を持つ。
2021年10月に公表された「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度におけるエネルギー需給の見通し(エネルギーミックス)で、水素・アンモニアについては電源構成の1%をまかなう目標が新設された。わずか1%であるが、これまで工業原料としての用途が主だった水素が電源構成の一部に位置付けられた意義は大きい。
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