運輸部門のCO2削減へ 新たな選択肢「水素エンジン」の可能性

i Laboはディーゼルトラックを水素燃料で走行する水素エンジントラックに改造する「水素化コンバージョン」技術を開発し、運輸部門の脱炭素化を目指す。自動車メーカーなどで50年以上水素エンジンを研究してきた同社の山根公高社長に構想を聞いた。

山根 公高(i Labo 代表取締役社長)

排出の約2割を占める運輸部門に
新たな選択肢「水素エンジン」を

日本のCO2排出量のうち、運輸部門からの排出量は17.7%(2020年度)を占めており、特に大型商用トラックのCO2削減は喫緊の課題となっている。日本における積載量4トン以上のトラックの保有台数は150万台以上で、乗用車に比べ1台当たりのCO2排出量が大きい。

この課題に着目し、2019年創業のi Laboはディーゼルエンジントラックを水素燃料で走行する水素エンジントラックに改造する「水素化コンバージョン」技術の開発に取り組んでいる。2021年度には環境省が実施する「水素内燃機関活用による重量車等脱炭素化実証事業」に採択され、同技術と水素供給インフラの開発・実証を進めている。i Labo代表取締役社長の山根公高氏は、日産自動車や武蔵工業大学(現・東京都市大学)で50年以上に渡り水素エンジンの開発・研究に取り組んできた。

「水素を内燃機関で燃焼させる水素エンジンの開発は1970年にスタートしました。水素はガソリンに比べて燃焼範囲が広いため異常燃焼が発生するという課題がありましたが、1992年には防止方法が解明されています。しかし、化石燃料が安価で使い勝手も良いこと、水素の供給インフラが十分でないこと、CO2排出量抑制への社会の関心が低かったことなどが要因で、水素エンジンはこれまで普及してきませんでした」(山根氏)

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