商用宇宙ステーションの夜明け ポストISS時代の事業チャンス

2030年に運用終了を迎える国際宇宙ステーション(ISS)。ポストISS時代をにらんで、欧米では民間による商用宇宙ステーションの開発などのビジネスが活性化している。日本企業にはどのようなチャンスがあるのか。

旅行、研究、製造に
宇宙ステーションの活用余地

NASAは2022年2月、国際宇宙ステーション(ISS)の運用を2030年で終了すると発表した。地球低軌道における宇宙ステーションの事業主体は今後、「官」から「民」へと急速にシフトしていく見込みだ。

アメリカでは、多くの企業やグループが商用宇宙ステーション開発構想を発表している。具体的には、アクシオムスペースの「Axiom Station」、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が設立した航空宇宙企業ブルー・オリジンなどによる「Orbital Reef」、ナノラックスなどの「Starlab」、航空機大手ノースロップ・グラマンの「Northrop Grumman Station」だ。例えばアクシオムスペースは、2025年以降にISS上で商用宇宙ステーションのモジュール建設を開始し、その後ISSから分離して独立運用を行う予定である。同社は今年8月にはサウジアラビア投資会社等から3.5億ドルを調達した。

左上「Axiom Station」、右上「Orbital Reef」、
左下「Starlab」、右下「Northrop Grumman Station」

商用宇宙ステーションの用途としては、宇宙滞在、研究開発・技術実証、宇宙工場、広告・宣伝などが考えられている。宇宙滞在は民間や宇宙新興国からの宇宙飛行士の受け入れや、宇宙旅行客の滞在が目的であり、今後最も市場が成長すると言われる。商用宇宙旅行はヴァージン・ギャラクティックやブルー・オリジン、スペースXなどが事業化をスタートしており、その目的地として宇宙ステーションは大きな魅力を放つ。

微重力・低温・真空といった宇宙空間の特徴を生かした研究開発や製造も、光ファイバーや合金、半導体材料、網膜移植、再生医療、創薬などの分野で期待されている。これまでもISSでは民間の宇宙実験等を受託してきたが、高価なクルー利用費などが課題だった。商用宇宙ステーションならば同分野に特化した設備・クルーを用意することも可能だ。

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