次世代公衆Wi-Fi「オープンローミング」が地域を変える

利便性と安全性に優れた次世代の公衆Wi-Fi基盤「オープンローミング(OpenRoaming)」が注目されている。シスコシステムズはオープンローミングの日本での普及を目指して、自治体との連携を推進している。その特徴や地域での活用余地について担当者に聞いた。

福田 秀幸 シスコシステムズ
公共・法人システムズエンジニアリング本部 本部長

1度の設定だけで世界中の
対応Wi-Fiに自動接続

オープンローミング(OpenRoaming)とは、公衆Wi-Fiサービス関連事業者の業界団体であるWireless Broadband Alliance(WBA)による国際的なWi-Fi相互接続基盤のことを指す。高い安全性と利便性が特徴であり、1度設定するだけで世界中のオープンローミング対応のWi-Fiスポットに、セキュリティを確保した上で自動接続することができる。

図 次世代の公衆Wi-Fi基盤「オープンローミング」の特徴

出典:シスコシステムズ資料

オープンローミングの仕組みは2019年にCisco OpenRoamingとしてシスコシステムズが開発したものがベースになっている。誰もがオープンローミングを利用できる環境の構築を目指して、2020年3月に中立的組織であるWBAに開発・運用体制を移管し、現在多くの事業者の連携のもと、欧米を中心に導入が進んでいる。

「オープンローミングは、従来の公衆Wi-Fiサービスの課題であった手間とセキュリティの両方を解決できます」とシスコシステムズ公共・法人システムズエンジニアリング本部の福田秀幸本部長は話す。「公衆Wi-Fiはサービスごとにユーザ自身による登録が必要であり、提供されているSSIDを探したり、その後メールアドレスの登録、もしくはパスワードを設定することは煩雑で、特に訪日外国人には接続までのハードルが高いと言えます。また、多くのWi-Fiスポットで端末とアクセスポイントの間が暗号化されておらず通信が盗聴される、なりすましのアクセスポイントへ意図せず接続してしまい情報を搾取されるなど、セキュリティリスクの問題もありました」

一方、オープンローミングの登録は一度だけで、その後は端末にインストールされたプロファイルによって認証、自動接続されるため、都度SSIDや接続方法を探す必要がない。このため訪日外国人は、海外で登録したIDで簡単に接続できる。また、オープンローミングでは無線通信区間を暗号化するとともに、Wi-Fi相互接続基盤のアクセスポイントに自動接続する仕組みとなっているため、盗聴やなりすましのアクセスポイントに誘導されるなどを防げる。

Cisco Spacesで地域に
オープンローミングを実装

オープンローミング対応のホットスポット数は、アメリカを中心に2022年5月に世界で100万ヵ所を突破した。各国政府も普及のために政策を動員しており、たとえばEUではオープンローミングを活用したCity Wi-Fiの補助制度が創設され、3万以上のスポットが整備されている。

日本でのオープンローミング普及はまだ始まったばかりだ。東京都は自治体で初めてオープンローミングに対応した公衆Wi-Fi基盤の構築を発表、2023年3月末からバスタ新宿や都立大久保病院など4施設でサービスを開始し、今年度中に観光施設等の都有施設約600ヵ所に順次拡大する。東京都は海外との出入国の増加が見込まれる中、セキュアでシームレスな通信環境を整えていく方針だ。

自治体は近年、観光や防災・減災、住民サービス向上、デジタルデバイドの解消などを目的に地域のWi-Fi環境整備を進めてきた。利便性と公共性に優れたオープンローミングは、自治体の取り組みを強力に後押ししてくれる存在だろう。

自治体がアクセスプロバイダーとなってオープンローミングを地域に提供したい場合、どのような手続きが必要なのか。「原則としてWBAと契約する必要がありますが、自治体それぞれがWBAと直接やりとりする手間は大きいです。シスコシステムズが提供するロケーションサービスプラットフォーム『Cisco Spaces』ならば、オープンローミングのアクセスプロバイダーに必要な一連の機能を利用でき、WBAへの登録や連絡は一切不要です。Cisco Spacesに対応したアクセスポイントとしてはCisco Catalyst 9100シリーズやMeraki MRシリーズなどが存在します」(福田氏)

Cisco Spacesには、Wi-Fi管理にとどまらない様々な機能が搭載されている。1つまたは複数の施設における利用者の行動を調査する行動メトリックや、利用者の行動パターンを可視化するロケーション分析などの機能を活用すれば、自治体は高度なデータ分析が行えるようになる。また、シスコシステムズはオープンローミングを含む公衆Wi-Fiのデータ利活用推進に向けて、他社とのプロダクト連携も積極的に行っている。例えば、2022年11月にはCisco Merakiのビーコン機能とunerry社のリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を連携、Merakiビーコンと人流ビッグデータと掛け合わせた分析・可視化の高度化を実現した。

公共領域での利活用に向け、
自治体と連携

シスコシステムズは地域におけるオープンローミングの実装を目指し、様々な取り組みを進めている。例えば2023年5月には、一般社団法人名護スマートシティ推進協議会への参画を発表。同協議会は沖縄県名護市とともに「スマートシティ名護モデル」の創出を目指す産官学連携組織で、社員企業としてシスコシステムズなど7社が参画する。シスコシステムズは本取り組みにおいて、名護市に開設されたオープンイノベーションセンター「Nago Acceleration Garage」を中心に、既存の公衆Wi-Fi、市内のホテル・宿泊施設やテーマパーク、交通機関、教育機関などを繋いだオープンローミング環境の整備を急進していくという。

シスコシステムズは今後も自治体と密接に連携しながら、オープンローミングの活用と実装を推進していく方針だ。

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