実務家教員を定義する意味 教育における多様性の担保の観点から

実務家教員を定義することにどのようなメリットとデメリットがあるのか。その意味について、教育における多様性を担保する観点からも考えてみたい。

実務家教員の実際上の定義

現段階において実務家教員の定義は、それぞれの大学が独自に判断している(あるいは大学以外での勤務経験をもってして実務家教員と判断している大学があるかもしれない)。

一般的にいえば、それぞれの大学が実務家教員として求める資格や経験を設定し、それに基づいて採用をおこなっている。たとえば、ある大学では、実務経験が5年以上あることが必須条件にあげられたり、ある業界でのトップランナーであることが求められたりする場合がある(実際の大学設置の手引にもそのような記述が見られる。ただし、トップランナーの要件が明確ではない場合も多い)。

大学が実務家教員を定義する方法には、様々なバリエーションがあり一様ではない。しかし、多くの場合、大学が実務家教員を採用する際には、ある程度の実務経験やスキル、能力が求められる。

実務家教員を
定義する積極的な理由

実務家教員を定義することには、いくつかの積極的な理由が存在する。まず、実務家教員を定義することで、どのような教育水準を準備すればよいか(あるいは教育の質)を明確に定義することができる。実務家教員は、実務経験を持っているため、実践的な知識やスキルを持っており、それを学生に指導することが期待される。そのため、実務家教員を積極的に採用することで、大学での教育がより実践的になり、一定の質が担保された上で、学生が社会で役立つスキルを身につけることができるようになる。

また、実務家教員を定義することで、どのような能力をもった人間が実務家教員になれるかを明確にすることができる。具体的な実務経験をもち、かつ教育に熱心でその能力を身につけた人物が実務家教員として採用されることになる。このような定義があることで、採用基準が明確になり、実務家教員として採用される人材の質を担保することが可能となる。

実務家教員を定義するデメリット

ただし、実務家教員を定義することには、いくつかのデメリットもある。まず、実務家教員の定義を定めることで、多様性がなくなる可能性が高い。実務家教員は、企業や業界で実務経験を持つ人物であり、その背景や経験は多種多様である。だからこそ、それぞれの業種や実務経験の基準を定めることができるのか、という問題がある。しかし、ある特定の定義に従って実務家教員を採用する場合、その多様性が失われることになる。また、実務家教員が教育における多様性を担保するものであったはずなのに、定義を設けることでその多様性が担保されなくなることは、大学教育の多様性を損なう可能性がある。大学教育には、専門的な知識やスキルを身につけるだけでなく、多様な価値観や考え方を学ぶことも重要であり、それが実務家教員に期待された点でもある。しかし、実務家教員の採用基準が厳格化され、ある特定の定義に従って採用される場合、多様性が失われ、本来意図した大学教育の質の向上が実現できない可能性が高い。

実務家教員の定義については、慎重な舵取りが求められる。実務家教員を定義することには、多くの利点がある一方で、デメリットもある。そのため、実務家教員の定義に関しては、多様性や大学教育の質を担保することの両立が求められる。

また、定義を設ける必要性は認識しているが、あくまでも目安であり、実務経験や教育に対する熱意を持った人物であれば、採用の対象とすることが望ましいと考えられる。さらに、採用された実務家教員に対しても、定期的な研修やアップデートを行い、最新のトレンドや技術に精通するよう求めることもまた重要ではないか。