裾野市でDX人材育成の実証研究 デジタル&クリエイティブな人材育成を目指す

「スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ(SDCC)構想」を打ち立て、トヨタの実証都市「ウーブン・シティ(Woven City)」の開発なども進む裾野市。新たに、ベネッセコーポレーションとDX人材育成に関する実証研究を実施し、SDCC構想に欠かせない、職員のDXスキル向上に取り組む。

2020年3月、裾野市は独自の次世代型近未来都市構想となる「SDCC構想」を発表した。地域のあらゆる課題をクリエイティブ・マインドとデジタルの力で解決する未来都市を目指す。

東日本大震災で注目を集めるようになったスマートシティ。震災以降、再生可能エネルギーを使って環境に優しく災害に強い、エネルギー起点のスマートコミュニティが議論されてきた。エネルギーや交通といった分野に特化した取り組みは進んできたが、分野横断的に全てが結びついた真のスマートシティは、まさにこれからというのが実情だ。

裾野市・人事課の根上 泰名氏(左)、同みらい政策課の長田 雄次氏

裾野市・みらい政策課の長田雄次氏は「DXという言葉ばかりが先行し、実態が追い付かないのはサービスを提供する〈人〉に原因があります。デジタルでまちの仕組みやサービスを抜本的に変革していくには、利用者目線に立ったサービスデザインが必要です。そのためには、既存の枠組みやルールに捉われないクリエイティブなマインドセットで物事を発想し、実行できる人材の育成が必要不可欠になります」と話す。

SDCC構想の実現へ向け、デジタルの基礎知識を持ち、かつ新たな価値創出を行えるDX人材の育成と組織の底上げを図るべく、裾野市が試験的に導入を決めたのが、実践的オンライン学習サービス「Udemy for Business( ユーデミー・フォー・ビジネス)」。同学習サービスは、ベネッセが自治体のDX人材育成の実証研究をするべく、全国自治体への協力を呼びかけているもので、裾野市はその第1号として手をあげた。

Udemyの画面イメージ

組織全体の
DX知識の土台を作る

実証研究では、ベネッセが裾野市の職員に対し、2021年4月から3か月間、最大50名に対して学べる環境を用意。DXの基礎からビジネススキルまで、約5500講座を提供する。

SDCC構想を推進する裾野市庁では、様々な企業や団体とのディスカッションや、部署横断的な活動が欠かせない。その時に、ITリテラシーの高い職員とデジタルやICTに苦手意識を持つ職員との間の温度差や知識レベルのバラつきが、円滑なコミュニケーションを妨げる大きな壁となる。

「Udemy for Businessを受講していただくことで、DX推進に必要な組織全体のDX知識の土台を作り、組織内での議論を進めやすくしていくような環境づくりを目指していきます」とベネッセの大宮千絵氏。

ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部 大宮 千絵氏

また、コロナ禍でこれまでのような集合対面研修が思うように行えない現状もある。裾野市・人事課の根上泰名氏は「集合対面研修以外にも、職員に学ぶ機会を提供し、個人が柔軟に知識を吸収できる環境を整えることが必要だと考えています。学ぶ場所、時間を選ばず、いつでもできるという点で、職員の学習意欲の醸成も図りたい」と話す。

裾野市では「Udemy for Business」を、自己研鑽・自己開発研修プログラムの1つのツールとして効果検証していく予定。実証研究では、受講者の学習前後の変化、学習傾向、受講の多い講座の傾向、PCやスマホなどの受講形態などを分析し、更なる効果的な学習に繋げていく。

オール自治体でのDX推進に繋げる

裾野市が求める人材とは、DXに特化したプロフェッショナルではなく、DXに対し基礎的・標準的な知識を身に着けた上で、それを自治体内での施策推進に活用できる人材だ。

「行政は時間をかけて策定した計画を基にPDCAサイクルを回して業務を行っていますが、これからの時代はどちらかというと、アジャイルに状況の変化に対応できる職員が必要です。スモールスタートでも、トライアル&エラーを重ねて動いていける人材を育てることが必要になると考えています」(裾野市・長田氏)。

「Udemy for Business」では、知識を身に着ける講座も用意しているが、デザイン思考やアジャイルなプロジェクトの管理など、知識を実務に活かしていくことに重きを置いている。

新しく柔軟な発想でICT化を進め、市民サービスや仕組みを変革していくためには、問題意識の共有と小さくても早い段階で成果を出す、アーリースモールサクセスがポイントとなる。

例えば、裾野市の市民課の窓口サービスでは、コロナ禍で、同じスペースで多くの人が待機することへの危機感から、無料のコミュニケーションツールを使い、受付番号で届け出の処理状況を確認できるサービスとして展開。その成功事例を、市民課から税務課に横展開し、確定申告でも同じ仕組みを作り、待ち時間の密の空間を回避した。

ベネッセは今後、自治体の先行事例や成功事例における知見を共有できるネットワーク作りにも注力していくという。

「裾野市のような先進的な取り組み、自治体内の成功事例を共有し、横のネットワークを広げていくことで、オール自治体でDXを推進していけたらと考えています」(ベネッセ・大宮氏)。

自治体業務のベースは同じで、どこも同じような課題を必ず抱えている。

「それに対する失敗例、成功例は必ず学びになるはずです。そういうものを繋げて、オール自治体でDXを推進していければ、日本のDXがもっと進んでいくのではないかと思っています」(裾野市・長田氏)。

裾野市では、積極的にデジタル&クリエイティブな人材を育てることで、市民生活を豊かにし、市民が生きる喜びを実感できるまちの実現を目指す。分野横断的に全てを結びつけるSDCC構想の具現化により、真のスマートシティを目指すフロントランナーとして、裾野市は新たな取り組みに先陣を切って挑戦していく。

Udemy for Businessとは

「Udemy for Business」は「Udemy(※)」に公開されている世界約15.5万講座の中から、法人向けに厳選した約5500講座を、定額制学び放題で利用することができるオンライン動画学習サービスです。

2019年6月の提供開始後、トヨタ自動車、富士通、みずほフィナンシャルグループなど、日経225に登録されている20%以上の企業で採択いただき、DXを始めとした様々な経営課題の解決を学びを通して支援しています。また、2020年12月からは福井県庁、2021年1月からは神戸市にも「Udemy for Business」を導入いただき、行政職員のDX推進にご活用頂いています。

※ベネッセコーポレーションは2015年より日本における独占的事業パートナーとして提携を開始しています。

 

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