「行政手続き」は隠れた巨大市場 テクノロジーで民主主義を拡張へ
行政手続きに市民や事業者がどれくらいのコストを投下しているのか。グラファーの石井大地CEOは独自の試算を行い、そこには巨大な市場があることを見出した。そして、日本の民主主義を拡張すべく、行政手続きを効率化するサービスを次々に開発し、事業を拡大させている。
システムそのものよりも、
その利用に関して膨大なコスト
行政手続きを効率化するためのウェブサービスやソリューションを一般市民、事業者、官公庁等に向けて提供し、急成長を遂げているスタートアップ企業がグラファーだ。役所に行った際、たくさんの人が事務手続きに時間を要している風景を目にするのは特別なことではない。しかし、グラファーの石井大地CEOは、そこに隠れた巨大市場があると目を付けた。
「行政サービスが不便なことは、多くの人が知っています。しかし、それがどのようなマーケットなのかは言語化されておらず、ほとんどの人がそこにチャンスを見出そうとしていませんでした」
いくつかの興味深い数字がある。例えば、国と地方を合わせた行政手続きの種類は5万8000種以上。個人や事業者による行政手続きの回数は主要なものだけでも年間約12億回に及ぶ。これらに要する人件費コストは、事業者だけでも5~10兆円規模になるという(欧州各国事例からグラファー推計)。一方、国や地方自治体がITシステムに投じるコストは年間1.7兆円だ。
「システムそのものよりも、そのシステムを利用する人の手間や時間、人件費に膨大なコストがかかっていて、それは巨大な市場であると言えます。行政手続きを効率化するビジネスには大きな可能性があると考えました」
これまで行政システムのビジネスと言えば、職員が使う業務システムが一般的であり、その領域には既存のITベンダーが存在する。一方、グラファーが手掛けるのは、各種申請をはじめとする市民、事業者が利用するサービスだ。一例として、役所に行かなくても、スマホで住民票の請求ができるサービスなどを提供している。
「使いやすいサービスを実現するためには利用者目線で考えることと、改善を繰り返すことが重要です。事前にどれだけ綿密に計画を立てても、使ってみて初めてわかる気づきが必ずあるからです」
また、従来型の受託開発のシステムではなく、クラウドでサービスを提供している点もグラファーの特徴だ。
「クラウド型の汎用的なシステムなので、自治体ごとにつくり込む必要がなく、素早く安価に提供できて、導入後の変更・改善も容易です。現在、当社のサービスは1万7000社の法人、18の自治体に利用されています。横浜市が5月から始めた、新型コロナ関連の融資に伴う申請のオンライン化にも当社のシステムが使われています」
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