2018年2月号

スポーツ起点の地域活性

NTT西日本 自転車で地域活性、ICTが支える

NTT西日本

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2017年5月に「自転車活用推進法」が施行され、まち、人と自転車の共存をめざした取り組みが活発になりつつある。NTT西日本は、自転車の普及の過程で生じる社会課題をICTで解決するべく、「いまどこ+(プラス)*」の機能拡充と「VR自転車交通安全教室」を生み出した。

*「いまどこ+」は、西日本電信電話株式会社、エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社、株式会社ケイ・シー・シーの3社協業ビジネスとして、エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社より提供しているサービスです。

 

 

スポーツ・健康に関する
社会課題解決を模索

大野 誠司(NTT西日本 アライアンス営業本部 ビジネスデザイン部 ビジネスクリエーション部門 担当課長)

近年、自治体による地域活性の取り組みを受けて、自転車やマラソンなどのスポーツイベントが各地で活発化している。

「ICTで社会課題を解決する」をスローガンに掲げるNTT西日本。ビジネスデザイン部担当課長の大野誠司氏は「かつてのように回線を売るのではなく、お客さまが持っているサービスに当社のICTソリューションを組み合わせ、付加価値をつけて新しいサービスとして提供していくことをミッションにしています。社内のスポーツ、健康に関するプロジェクトチームが新規事業の可能性を模索する中で、まず2015年1月に鹿児島県指宿市で開催された、いぶすき菜の花マラソンをきっかけに新たなチャレンジが始まりました」と「いまどこ+」の開発の発端について語る。

マラソンイベントに加え、
自転車イベントへの提供拡大へ

吉田 守道(NTT西日本 アライアンス営業本部 ビジネスデザイン部 ビジネスクリエーション部門 主査)

当初は、参加者を楽しませるための仕掛けをと考えたが、いぶすき菜の花マラソンの事務局にヒアリングしてみると、むしろ運営面で多くの課題を抱えていることが分かった。そこでスマートフォンなどのGPS機能を活用し、広範囲に配置されたスタッフ、車両などの位置情報をリアルタイムに把握、表示し、簡単な操作で指示・連絡が行えるサービス「いまどこ+ for Staff」が完成した。

「限られた数のスタッフを効率よく配置するために、本部でスタッフ一人ひとりの位置情報を把握し、何かあったらすぐに移動を指示できるようになりました。これによって、参加者への安心のサポートや満足度向上に注力することができました」と確かな手応えを得た。

イベントスタッフ管理のアイコン表示機能では、「車両・スタッフの位置が分からない」という声をもとに、運営本部などのパソコンやスマホ画面の地図上に、スタッフ、AED班、救護車両などの位置をアイコンで示すことができるようにした。これによって各スタッフの位置が俯瞰できるようになり、要救護者が発生した際にも的確に指示を出すことができる。

また、「紙に記載された電話連絡先一覧では対象の番号を探すのに時間がかかる」という課題に対し、電話発信機能で、アイコンをタップするだけであらかじめ登録した電話番号への発信を可能にした。さらに、メッセージ機能では「急なスケジュール変更が発生した時、全スタッフに迅速に連絡をしたい」との要望をふまえ、画面上にリアルタイムで全員もしくはグループごとに伝えたいメッセージを表示できるようにした。

「大規模なイベントではスタッフが多くなり、人件費がかさむだけでなく適正配置や稼働状況の把握が大変。運営の効率化で大きなメリットを感じていただけているのでは」と、ビジネスデザイン部主査の吉田守道氏は話す。

2017年5月、自転車活用推進法が施行された。同法は、CO2を出さない、健康増進につながる、災害時に機動力を発揮する、交通混雑の緩和につながるなど自転車ならではの特性に着目し、その利用をさらに促すことをめざしている。

基本方針として、自転車専用道路や通行帯などインフラの整備、交通安全に係る教育及び啓発、観光旅客の来訪の促進、その他の地域活性化の支援などの施策を重点的に検討、実施することが示された。こうした法整備もあり、自転車イベントへの注目は高まっており、「いまどこ+」は活用の場を広げている。

図 「いまどこ+for Staff」のサービス概要(スタッフ向け)

スマートフォン等のGPS機能を活用し、広範囲に配置されたスタッフ、車輛等の位置情報をリアルタイムに把握・表示し、簡単操作で指示・連絡を行うことができる。

出典:NTT西日本・資料

参加者向けアプリ機能の
さらなる拡充

NTT西日本は2016年、本州四国連絡高速道路が主催する「しまなみ縦走」で、「いまどこ+」をさらに磨き上げた。しまなみ縦走は、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ瀬戸内しまなみ海道の中で、どこからスタートしてもよいウォーカーやサイクリストたちのためのスタンプラリー。これまで20回開催されており、2017年3月の開催時には参加者が4000人近くまで増えている人気のイベントだ。

しまなみ縦走が開催されるタイミングで、参加者向けアプリ「いまどこ+」の機能拡充を行った。

従来機能である友達位置情報共有機能では、「友達や家族の現在位置が分からないのでイベント会場での待合せや応援ができない」という問題に対応すべく、一覧から選んだ友達のアイコンをタップすると位置情報が表示される。

また、周辺情報表示機能は、イベント周辺の観光スポットを参加者にアピールしたいとの要望を受け、地図上に観光や店舗および周辺情報を表示できるようになっている。

さらに、新たに追加されたデジタルスタンプラリー機能は、「スタンプを入手するのに行列で待たないといけない」「スタンプラリーに割く対応スタッフの稼働負担が大きい」といった声に応えたもので、そのエリアに近づき、スタンプ取得アイコンをタップすればスタンプを取得できる。

「いまどこ+」は、自転車等のイベント参加者向けに、友達の位置情報や周辺情報の表示、デジタルスタンプラリーなどの機能を備えている
※画面はイメージです。

デジタルスタンプラリー機能で
待ち時間を大幅に軽減

しまなみ縦走では2016年の大会で試験導入した後、2017年から本格運用をスタート。当日参加申し込みをする際に「いまどこ+」のアプリをダウンロードするかどうかを選択してもらったところ、約4000人の参加者中、約1700人がダウンロードしたという。

「受付場所が最初のチェックポイントとなるため、とくに初日の受付は長蛇の列に並ばなくてよくなり、受付時間を大幅に短縮できたことが参加者に喜ばれました」(大野氏)

また、途中のチェックポイントでも立ち止まることなくスタンプが得られることに加え、「紙でもらうとくしゃくしゃになってしまうが、スタンプがスマホにきれいに残るのでうれしい」という声も寄せられるなど、デジタルスタンプラリー機能の評価は特に高い。

友達位置情報共有機能も好評だ。友達同士の参加の場合、集団になって走るケースがあるが、時に赤信号で集団が離れ離れになってしまうことがあり、そのような時に位置を確認できるようになった。

また、ゲストタレントの位置情報を把握できるゲスト位置情報共有機能は、参加者だけではなく、コース上の地元住民が利用し、ゲストタレントが近づいてきた時に沿道で応援するという使われ方もしている。

導入事例は延べ100件以上、
活用広がる「いまどこ+」

しまなみ縦走の取り組みを映像化したCMを見た他の自治体から反響があり、「いまどこ+」の利用が他の自転車イベントや市民マラソンにも広がっているほか、新たな活用も増えている。

例えば、熊本ではJ2リーグ、ロアッソ熊本のスタジアム周辺の駐車場における満車・空車情報や、最寄駅とスタジアムの間を運行しているシャトルバスのリアルタイム位置情報を提供する実証実験に利用された。「2019年に予定されているラグビーワールドカップ2019を踏まえた取り組み」という。

また関西実業団対抗駅伝競走大会では、どのチームのどの選手が今どこを走っているかを知らせるサービスや、石川県七尾市で開催された青柏祭では、観光客が目当てにしている山車がどこに位置しているのかを知らせるサービスも提供されている。「いまどこ+」はすでに延べ100件以上のイベントで採用されており、「今後、位置情報を活かしたサービスを広げていきたい」(大野氏)としている。

「いまどこ+」は、すでに延べ100件以上のイベントで採用。自転車イベントや市民マラソン、駅伝のほか、祭りでの山車の位置把握や、シャトルバスのリアルタイム位置情報把握に利用されている

自転車交通事故を減らすために

恩田 壮人(NTT西日本 アライアンス営業本部 ビジネスデザイン部 ビジネスクリエーション部門 主査)

イベント支援アプリとは異なるアプローチで、自転車向けの新しい取り組みとしてトライアルを実施したのが「VR自転車交通安全教室」だ。「ある地域の自転車事故件数は全国平均を上回っており、16歳~19歳の若年層における負傷者数も多いことがわかりました。そうした背景をもとに交通安全教育に何かお役に立てないか、そこにICTを活かせないかと考えました」と、ビジネスデザイン部主査の恩田壮人氏は開発の経緯を語る。

自治体や交通安全協会、学校などは若年層の自転車交通事故防止に向けて、交通安全教育を積極的に展開している。その際、事故への理解を深めるためによく使われているのが、事故の恐怖をリアルに感じさせることで危険な行為を未然に防ぐ、「スケアード・ストレイト教育」という手法だ。

ただ、屋外でスタントマンに演じてもらうことになるため、場所の確保や当日の天候、体験者の積極性に課題があったという。そこでVR(バーチャルリアリティ)技術を使って事故を疑似体験できるようにしたのが「VR自転車交通安全教室」だ。

学習できる内容は大きく2つ。一つは走行体験で、3次元CGで再現された街中を自転車で走行し、車道や歩道の通行時、交差点の横断時などの周囲の状況に合わせて注意しなければいけないポイントを確認していく。途中、事故を防ぐために標識や後方の確認など、視点を向けなければいけないチェックポイントがいくつかあり、一つひとつのポイントで安全確認したかどうかでスコアを集計し採点できるようになっている。

もう一つが、自転車交通事故体験だ。体験できる事故のケースは「出会い頭の事故」「交差点での左折巻き込み事故」「路側帯から車道への進出事故」の3つ。それぞれ「自転車視点」だけでなく「自動車視点」「俯瞰視点」で体験でき、多角的に交通事故の状況理解ができるようになっている。「自分で自動車を運転したことのない中高生は、自動車側から見て自転車がどれだけ危険であるかは理解しづらい。これを体験することでより安全な運転につながれば」と期待する。これらのコンテンツ制作に関しては大阪府警察の協力を仰いだ。「どのような状況で事故が起きやすいのか、また、道路や標識の見せ方などについて、どうすればよりリアリティが出るのかなど、アドバイスをいただいた」という。

「VR自転車交通安全教室」では事故防止の視点を学ぶ走行体験や事故疑似体験ができる
※画面はイメージです。

NTT西日本ならではの技術力

操作面でもNTT西日本ならではの技術力が活かされている。貸し出しを主体とした運用が考えられるため、パソコンを使わずモバイルVR機器とタブレット端末の組み合わせで簡単に操作できるようにした。Wi-Fiネットワークを使って一度に5台までを同期させ、5人同時に体験できるようにしたことでオペレーションの効率化を図ることも考えている。また、VR機器は装着者が覚えなければならない操作ルールがあるが、その手間を無くすため、すべて説明者側でまとめて操作できるようにした。

NTT西日本は、自治体が中学校、高校で行う交通安全教室のほか、企業が社会貢献で地域向けに行う交通安全教室などへ、「VR自転車交通安全教室」の活用を提案している。それに加えて、自転車通勤をする従業員が多い会社で交通安全意識を高めるための啓発に使いたいという声も寄せられているという。

「VR自転車交通安全教室」の今後の展開について、「通信技術を活用してストリーミングによるコンテンツの配信を増やしていきたい。また、装着者の視点のログを収集し、運転しながらどこに視線を置いているのかを分析することで、事故軽減のアドバイスができるようにするなど機能の拡充を図っていきたい」と恩田氏。

自転車のイベントを活かした地方の活性化を支援する「いまどこ+」、自転車のさらなる普及に伴う交通事故の防止に向けて開発された「VR自転車交通安全教室」。「NTT西日本では、これからもそれぞれの地域が抱える社会課題に目を向けながら、そこにICTを使うことでその課題をどのように解決できるのかを模索し続け、地域に貢献していきたい」と、さらなるサービスの進化を見据えている。

ちゃりんと「VR自転車交通安全教室」をイベントで実施

NTT西日本は大阪府警察の交通安全イメージユニット「ちゃりん娘」と「VR自転車交通安全プログラム」を実施している。

ちゃりん娘は2011年6月、Doorが組織した女性ロードチームユニット。チームとして、メンバー個人としてさまざまなレースに出場し、実力も折り紙つきだ。イベントやレース参加などの活動のかたわら安全運転啓発活動にも取り組んできたことが評価され、2015年から大阪府警察本部交通部「自転車対策室」広報啓発モデルユニットにも任命されている。

2017年3月、NTT西日本による「VR自転車交通安全教室」のトライアル開始以降、府内で行われている交通安全イベントで事故を疑似体験できるVRコンテンツを提供。そこにちゃりん娘が交通安全ナビゲーターとして参加し、イベントでは「VR自転車交通安全教室」の使い方を一般参加者に手引きしながら、安全な自転車の乗り方をアドバイスしている。

 

西日本電信電話株式会社への

お問い合わせ



西日本電信電話株式会社
アライアンス営業本部 
ビジネスデザイン部 ビジネスクリエーション部門

■「いまどこ+」に関して
Mail:locainfo-ml@west.ntt.co.jp

■「VR自転車交通安全教室」に関して
Mail:vr-bc@west.ntt.co.jp

 

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