2017年10月号

環境会議

カルネコ・モデルやEVIで SDGsの達成を目指す

加藤 孝一(カルネコ 代表取締役社長)

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カルネコでは、企業の販促物を実需に沿って必要な数だけ製作し、作り過ぎによる廃棄をなくす、環境配慮型の販促システムを生み出してきた。今年10月からはビール業界の4社と共に、販促物の共同配送を行うことで、効率化や温室効果ガス排出削減を進めていく。森林事業者や企業、消費者を結ぶ環境貢献プラットフォームのEVIも運営しており、社会の幅広いアクターとのパートナーシップの下、SDGsの達成を目指す。

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加藤 孝一(カルネコ 代表取締役社長)

環境配慮型の販促で
心に響くメッセージを伝える

「CalNeCo(カルネコ)」をメイン事業とするカルネコ株式会社は昨年8月、お菓子メーカーのカルビーから独立しました。カルネコは、2005年9月にカルビーが生み出したビジネス・モデルです。このモデルは価値創造型のメッセージを伝えるプロモーションを行えば、不要なディスカウントをせずに商品を販売できるという知見に基づきます。

その目的は、販促物を通じてお客様の心に響くメッセージを届け、適切な価格で商品を購入していただき、小売・卸・メーカー・消費者の方々が皆、適切な利益を得られるようにすることです。第2の目的は、効率的でロスのない販促を実現することです。

多くの企業は、お客様にメッセージをお届けする販促物を最初にたくさん作り、その後に商談を始めます。このため、当初の目論見と実際に展開される数字が異なり、販促物の作り過ぎや不足が生じます。販促物を作り過ぎれば、それらを捨てて燃やすことになります。これはロス金額を増やすだけでなく、二酸化炭素(CO2)排出にもつながり、企業収益に悪影響を及ぼします。

一方、私たちのカルネコ・モデルでは、先に商談を行ってから販促物の注文をしていただきます。その後に販促物の印刷加工や梱包を行い、最短5日で全国各地へお届けします。つまり、仮の目論見で販促物を作る「仮需型」ではなく、実際の需要に基づいて作る「実需型」なのです。

「仮需型」では企業は通常、製作した販促物の約半分を捨てることになります。ですから、仮需型から実需型への転換で、その半分の販促費を確保できるようになるほか、CO2排出もゼロにできます。

私たちは昨年4月、ダンボール製の立体什器等、販促用の立体成型物も1台から発注いただける工場をオープンさせました。これによって、店頭プロモーションで使われるPOPや什器のほぼすべてで実需対応が可能になりました。

また、私たちの販促物製作では年間約1400tのCO2が発生しますが、昨年4月からはそれらをカーボン・オフセットしており、CO2排出が実質ゼロになりました。これに伴い、お客様である企業が私たちから調達される販促物に対しても、CO2削減量の証明書を発行できるようになりました。これらの企業には、この分をCO2削減量として、CSR報告書などで報告していただけます。

10月からビール業界の
販促物で共同配送を開始

今年10月には、物流に関する新たな取り組みも開始します。物流業界では荷物が増え過ぎ、ドライバーが運びきれないという問題が生じています。このため、今年10月には宅配便料金が値上げされます。

このような中、販促物を全国各地へ配送する私たちは、そのばらつきをうまく調整し、「カルネコ・タリフ」という利用しやすい配送料金を生み出そうとしています。カルネコを利用していただいている企業は現在、約30社で、それらの販促物全体の3%に当たる約3万件が年間、同じ日に同じ宛先へ運ばれています。

ですから、この約3万件について約30社の販促物をまとめ、「共同配送」すれば、件数を何分の1かに減らせる可能性があります。共同配送が増えれば、宅配便の値上げ分を吸収でき、従来と同じ配送料金にできるかもしれません。

これを実現させようと、まずはビール業界の4社にご提案し、同意をいただきました。現在、その骨格を作り上げるプロジェクトを進めており、10月1日から実用に入ります。同じ宛先へ同じ日に届けるなら、4社分をまとめて届ければ、配送料も排出するCO2も減らせます。今後はこの共同配送モデルを軌道に乗せ、他の業界にも提案していきたいと思っています。

森林再生に取り組むEVI

2011年3月には、森林事業者、企業、消費者を結ぶ環境貢献プラットフォームの「EVI(Eco Value Interchange)」も開始しています。日本の木材自給率は1955年には94%でしたが、現在は33%に低下しています。2011年には、26%まで下がりました。日本の面積全体の67%が森林であるにもかかわらず、木材自給率はこれだけ低いのです。

森林は日々、CO2を吸収し、それを酸素に変えて空気を浄化してくれます。これは地球温暖化抑制のために重要ですが、木を売って収入を得られなければ林業は成り立たず、森林は荒廃します。

国は2008年3月、国内の温室効果ガス排出削減・吸収を促進するための「オフセット・クレジット(J―VER)制度」を創設しました。これによって、国内のプロジェクトで実現された温室効果ガスの排出削減・吸収量が、クレジットとして認証されることになりました。この制度はその後、「国内クレジット制度」と統合され、「J―クレジット制度」として運営されています。

制度の創設に際して補助金が出されたこともあり、森林保全に必要な副収入を得ようと、多くの森林でクレジット創出の取り組みが始まりました。そして、2014年8月までに69万tものクレジットが創出されたのですが、実際に売れたのは全体の15・3%だけでした。

このような状況を知り、私たちは、より多くのクレジットを売って森林保全につなげようとEVIを開始したのです。EVIは企業が森林事業者からクレジットを購入し、自分たちの企業活動に伴うCO2排出を相殺する「カーボン・オフセット」を促進する仕組みです。

EVIを立ち上げた2011年3月以降、この仕組みを通じて約6500tのクレジットが購入されました。当初は8つの森林のクレジット販売を支援していましたが、この森林数は現在、90に増えています。1団体で支援している森林数やクレジットの販売t数としては、日本一と評価していただいています。

しかし、69万t創出されたクレジットのうち84・7%に当たる40数万tが売れ残ったわけですから、私たちが支援できた販売t数はわずかです。今後は販売できるクレジットを月1000tにし、さらに月1万tへと増やしていくための努力を続けます。

国内の森林保全では、国産材を活用した商品を、より多く販売することも重要です。このため、それらの商品を販売する「森のめぐみのおとりよせ」という通販サイトも開設しました。このサイトでは、売上の1%をクレジット購入に回しています。

EVIについては、環境貢献型プロモーションのプラットフォームとして認知が進んでおり、2015年には「第5回カーボン・オフセット大賞」の特別賞も受賞しました。また、一般の方々にも広く活動を知っていただくため、毎年10月には東京・有楽町で「EVI環境マッチングイベント」を開催しています。

「道の駅ネットワーク」で
CO2削減や地域活性化

地球温暖化対策では、世界の気温上昇を2℃未満とする目標に向けて、全世界が本気で取り組んでいます。日本や日本企業も本気でやる必要がありますが、環境問題以外にも様々な課題があるのが実状です。このような中でSDGsは、多様な課題への取り組みを1つにまとめようとする素晴らしいものだと感じます。

私たちのEVIは、「気候変動に具体的な対策を」というSDGsの13番目の目標に該当します。他にも、海や陸の豊かさに関する14、15番目の目標や「平和と公正をすべての人に」という16番目の目標にも関係します。私たちはEVIを通じて、都市だけでなく地方や森林にも目を向けようとしているからです。

さらに、EVIでは「自然でんき」を提供するソフトバンクとも提携しており、これはエネルギーに関する7番目の目標に関係します。このほかカルネコのビジネス・モデルはイノベーションで、9番目の目標に該当するなど、私たちの活動はSDGsの様々な目標と関わっています。

地方創生への取り組みでは現在、「道の駅ネットワーク構想」も始動しています。2016年4月に鳥取県日南町でオープンした「道の駅 にちなん日野川の郷」は、日本初のカーボン・オフセット道の駅となりました。私たちはその立ち上げに関わりましたが、その際、冬場は地元の野菜や果物がほとんど出品されず、客数が激減すると知りました。

全国には約1100の道の駅がありますが、約半分が赤字だと聞きます。このため、道の駅のネットワークを作って各地の一押しの商品を交換すれば冬場も珍しい商品が店頭に並び、地元の人たちも多く訪れ、売上を伸ばせるのではないかと思いました。

現在は、そのネットワークづくりに着手しています。あわせて、カーボン・オフセットでCO2排出がゼロになる道の駅も広げていきたいと考えています。カルネコではこれらの取り組みを通じ、多くの方々とのパートナーシップの下、SDGsの達成を目指していきます。

加藤 孝一(かとう・こういち)
カルネコ 代表取締役社長

 

『環境会議2017年秋号』

『環境会議』は「環境知性を暮らしと仕事に生かす」を理念とし、社会の課題に対して幅広く問題意識を持つ人々と共に未来を考える雑誌です。
特集1 環境と事業の共生 SDGsに根ざす経営
根本かおる(国連広報センター 所長)、玉木林太郎(経済協力開発機構[OECD] 前事務次長) 他
特集2 環境教育で次世代リーダーをつくる
望月要子(ユネスコ)、寶 馨(京都大学大学院総合生存学館[思修館] 学館長) 他

(発売日:9月5日)

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