2019年10月号

環境会議

最先端のソリューションで世界の問題解決に貢献

佐野 敏弘(JERA 代表取締役会長)

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2015年に設立されたJERAでは、中部電力と東京電力の燃料事業や火力発電事業の段階的な統合が進められ、今年4月に完全統合が実現した。これによって、燃料の調達から輸送、発電、さらにトレーディングを組み込んだバリューチェーンが確立された。JERAは、「クリーン・エネルギー経済へと導くLNGと再エネにおけるグローバルリーダー」というビジョンを掲げ、世界のエネルギー問題解決への貢献を目指す。

佐野 敏弘(JERA 代表取締役会長)

価格競争力のある
エネルギーを安定的に供給

――JERAが掲げる「世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供する」というミッションに込めた想いは、どのようなものですか。

JERAは2015年4月の設立から、段階的に統合を進め、2019年4月に中部電力と東京電力の燃料受入・貯蔵・送ガス事業および既存火力発電事業の統合を果たし、事業統合の構想段階から検討してきた1つの会社としての姿が完成しました。

統合完了に合わせて、JERAのミッション「世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供する」を策定しました。JERAは、ほとんど資源を持たない日本へ、国際的に価格競争力のあるエネルギーを安定的にお届けしようという考えを原点として持っています。

そして、世界のマーケットで厳しい競争にもしっかり勝ち抜き、1日も早く企業価値や収益を上げていこうと考えています。その際、重要なのは、単にビジネスの側面だけで考えず、世界というマーケットには日本も入っていますが、各地域や国のスタイルに合わせた、最適なソリューションを通じてエネルギーを供給していくことが重要だと考えています。ミッション策定の背景には、そのような意味があります。

 

 

LNGと再生可能エネルギーで
グローバルリーダー目指す

――2025年に向けたエネルギー・ソリューションの軸として、「LNGバリューチェーン事業と大規模再生可能エネルギー事業」を挙げています。

私たちの2025年を見据えたビジョンは、クリーンなエネルギー経済へと導くLNGと再生可能エネルギーにおけるグローバルリーダーを目指すというものです。その実現のために、具体的に何を行うのかをご説明します。

JERAのビジョン

まずLNGはJERAのビジネスモデルのベースです。LNGの上流、調達、輸送、受入れから火力発電まで、という流れにトレーディングを組み込んだ形としてバリューチェーンを確立させていますが、これをさらに強固なものにし、拡大していきます。

再生可能エネルギーについては、大規模なものに取り組む方針で、特に洋上風力の開発に力を入れていきたいと考えていますが、JERAには、まだ知見も実績も不足しています。このため、1日も早くその知見や実績を多く得ていくことが大切だと考えています。国内にはまだ大規模洋上風力発電所がないことから、まずは海外の事業に関わっていく方針を打ち出しており、昨年末に2事業への参画を発表しています。

まず1つは英国エセックス州沖合の洋上風力事業です。2010年から運転を開始している案件で、運用段階にある本事業への参画を通じて、洋上風力事業を運営する知見や経験を積んでいきたいと考えています。また、台湾で建設中の洋上風力事業への参画もしています(下写真)。本案件は、運用開始前から主体的に関与していくことで、洋上風力事業の建設管理を含む知見を得ることを目指し、数名のエンジニアを派遣しています。

台湾フォルモサ1洋上風力発電事業の設備である風車の外観

洋上風力事業は、欧州のグローバル会社が私たちより1、2歩先を行っています。私たちが追いつき、厳しい競争の中を勝ち抜いていくためには、2つの事業での知見だけでは足りないと考えており、最近、私たちは、開発の計画段階から建設、運用まで経験できるような大規模事業に参画することも検討しています。

また、導入が進む風力や太陽光の出力は、気象状況等に大きく左右され、変動することから、この特徴を考慮し、きちんと補っていくことが重要です。これについてJERAでは、2つの大きな取り組みをしています。1つ目は需給の変動に対する火力発電の機動的な運用です。JERAは国内で25の火力発電所を持ち、LNG火力を中心とした弾力性の優れた運用を培ってきています。それが今後、再生可能エネルギーの導入がさらに進んでも、需給の変動を確実に補っていくことができると考えています。

2つ目は、燃料の調達です。再生可能エネルギーの導入が進むにつれ、燃料消費の見通しも流動的になります。JERAはLNG船を18隻保有しており、また燃料基地も日本だけで8基地を運用し、さらに燃料のトレーディングを行うことで、LNGの弾力的な調達を可能としています。

こうした取り組みによるLNGと再生可能エネルギーの補完関係は、他社にはないJERAの大きな強みだと考えています。今後はこれらJERAの強みを活かし、LNGと再生可能エネルギーの2つの事業をJERAの柱としていきたいと考えています。

環境と経済、エネルギーの
安定供給で持続可能な社会へ

――「グローバルな連携」も掲げておられますが、諸外国とのパートナーシップはどのように構築されていますか。

JERAは火力を中心に海外へ投資しながら、各投資先と良好な関係を保っています。燃料の調達についても同様に、海外の地域の方々と良い関係を築いてきました。最も重要なのは、信頼関係だと感じています。

私たちが関わった事業では、単なる投資として資産を評価するだけでなく、その運用にも責任を持ち、地域の方々との信頼関係を維持しながら、最後までしっかり取り組んでいく姿勢も重要だと考えています。

今後、アジアを中心にエネルギー需要が拡大し、かつ、既存の天然資源の枯渇が進む中で、LNG輸入のニーズを持つ国も多いと考えています。JERAは強みを活かして、燃料供給やガス関連施設、火力発電設備までの一体開発、そして建設だけではなく運用面を含めてなど、それぞれの地域に合った形で提案していこうと考えています。計画から建設、そして運用まで責任を持ち、しっかり対応していくことが、今後の私たちの、海外を中心としたビジネスモデルになると考えています。

環境方針を公表
CO2排出削減にも責任を

――化石燃料に代替するエネルギーに基づく電力供給は、持続可能な社会にどう資するとお考えですか。

気候変動枠組条約の「パリ協定」に関する取り組みが世界的に進められる中、化石燃料を取り扱うJERAは、二酸化炭素(CO2)の排出削減に関し、責任を持たなければいけません。国内では火力発電設備の容量の半分以上をJERAが持っており、その責任は大きいと感じています。

私たちは今年4月、事業計画と共に環境方針を公表しました。これは、世の中に対するコミットメントだと考えています。

環境方針では、国が定めた省エネのベンチマーク指標について、JERAはトップランナーとして数値をクリアしていくと宣言しています。さらに、2030年を見据えた国の温室効果ガス削減目標に関しても、私たちはトップランナーとしてしっかり取り組んでいきたいと考えています。

その一方で、持続可能な社会の構築に向けては、環境という観点だけで物事を捉えてはいけないと考えています。社会が持続可能な形でしっかり機能することも重要で、環境と経済性、エネルギーの安定といったものをバランス良くやっていく必要があると思います。私たちは、バランスのとれた最適なソリューションを提供することで、国際的に優位な形でCO2の削減を進めていこうとしています。

もう1つ、気候変動問題に関して重要なのは、欧州や日本のような成熟した社会では、それに合った取り組みが必要ですが、世界全体を見ると、経済発展のためにより多くのエネルギーを必要とする国や地域がまだ多いということです。

このような国々で、私たちが日本で培ってきた省エネやCO2削減の技術を役立てていければ、世界規模のCO2削減にも貢献できるはずです。JERAとしては今後、このような考え方で事業を推進していきたいと考えています。

CO2削減に関し、今は特に石炭火力への批判が強まっていますが、私たちは逃げるのではなく、これをしっかり受け止め、対策を進めていきたいと思っています。中長期的には、LNGや石炭でも、より効率性の高い火力発電を作っていけば、古くて効率的でないものは必然的にフェードアウトされます。そのように全体で考えると、CO2削減に関する私たちの取り組みは、国の施策に合致していると思います。

アジアにはまだ、国として成長していくために、より多くのエネルギーや電気を必要としているところが多くあります。そういうところに効率の良い、優れた技術を適用することで、CO2削減に貢献していくことには、私たち事業者だけでなく、国と一緒になってしっかり取り組んでいくべきだと思います。(談)

 

佐野 敏弘(さの・としひろ)
JERA 代表取締役会長

 

『環境会議2019年秋号』

『環境会議』は「環境知性を暮らしと仕事に生かす」を理念とし、社会の課題に対して幅広く問題意識を持つ人々と共に未来を考える雑誌です。
特集1 SDGs時代に描く 開発の未来
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(発売日:9月5日)

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