"技術と信頼"をつなぐリーダーシップ──中杉社長が語るニレコの進化と挑戦

技術者集団としての原点と進化の75年
制御・検査・センシングというニッチかつ精密な技術領域において、独自の存在感を示す株式会社ニレコ。その歴史は戦前にまで遡る。海外からの制御機器輸入に端を発し、戦前に国産化に成功した機器の国内需要に応えるべく、1950年に設立。以降、産業インフラを支える技術者集団として歩んできた。
ニレコの中核技術は、厚板~薄膜素材の蛇行を高精度に検知・修正する「蛇行制御システム」に象徴されるセンシング技術だ。これにより、鉄鋼や紙、フィルムなどにおいて、高い品質を維持しながら安定した生産に貢献してきた。この技術指向をさらに推し進め、現在では半導体製造・検査装置に求められる精密な部材にもその事業分野を広げている。
同社の技術が求められるのは、単に装置を供給するというだけでなく、各業界の製造ラインにおける"要"の領域で、目に見えない変化を捉え、安定稼働を支えるインフラとして機能するからである。高精度でありながら、長期運用に耐える堅牢さを備えたニレコの製品は、「縁の下の力持ち」として多くの企業の信頼を得ている。
外部出身リーダーが挑む、信頼の構築と組織変革
そんな技術の伝統を受け継ぎながら、変革を加速させているのが、2023年6月に代表取締役社長に就任した中杉真一氏である。1990年に三菱商事に入社後、国内外での製造業支援、現地法人の経営などに従事。2007年には三菱商事テクノスで経営企画部長、2010年には中国・上海の現地法人の総経理として着任し、クロスボーダーなビジネス経験を積んだ。
2018年からは製造業の現場を率いる立場として、株式会社コイケで代表取締役社長を務めるなど、「現場を知る経営者」としての視点を確立。2021年にニレコへ経営戦略室長として参画し、2022年には取締役執行役員経営戦略部門長を経て、現職に至る。
外部出身者としての就任にあたり、何より重視したのは「信頼の構築」だった。中杉氏は、"事業承継者"として歴史ある企業に外部から参画し、経営改革を進めるという立場でもある。設立から70年以上続く同社の技術と文化を尊重しながら、現代的なマネジメントや人材育成の手法を取り入れ、次の成長フェーズへと導いている。そのバランス感覚が、同氏のリーダーシップの根幹にある。社員との信頼関係は一朝一夕には築けない。だからこそ中杉氏は、昼夜を問わず社員と直接対話する、自らの動静を写真付きで紹介する社長メールを毎月数回発信するなど、"情報の非対称性"をなくす仕掛けに取り組んだ。
社員の声を拾い上げ、経営に活かす。外部から就任したリーダーとして、共感と納得を重視した「民主的な経営」を標榜し、信頼に根ざした変革を推進している。
センシングを再定義し、事業の輪郭を明確に
中杉氏が推進するもう一つの大きな改革が、「センシング企業としての再定義」である。従来の制御・検査・オプティクスという3つの事業ドメインを、それぞれ独立した技術ではなく、"センシング"という共通言語で捉え直している。
制御分野では、蛇行・張力・厚みなどの物理的変化を検知して制御にフィードバック。検査分野では画像処理やAIによる異常検知が進化しており、センシングの“眼”としての役割を果たす。そしてオプティクス分野では、光学部品の加工技術やレーザ技術を応用し、半導体や医療機器といった先端分野での要求水準に応える高精度なソリューションを提供している。
このように、「検知=センシング」を軸とする企業としてのアイデンティティを明確に打ち出すことで、ニレコは既存事業の再成長と新領域への展開の両立を目指している。
人が育つ風土を──教育投資と組織文化改革
人材こそが技術企業の根幹。中杉氏は、教育と組織風土への投資にも注力している。
教育時間は従来以上に拡大され、eラーニングだけでなく、外部コーチによるマネジメント研修、コンプライアンスやハラスメント対策研修など、現場で活かせる「実践的な学び」を重視している。また、資格取得に向けた費用補助制度も活用し、個人のスキルアップも強力に後押ししている。
加えて、「心理的安全性」と「創造性」の両立を掲げ、社員が安心して挑戦できる環境づくりを進めている。組織の中で"自分の意見が尊重される"と感じられることは、社員の主体性を引き出し、企業全体の活力を高める。
成長と安定の両輪で描く未来
ニレコの経営は、既存事業の筋肉質化と新規成長領域の拡大という"バランスの経営"を軸に展開されている。主力の制御機器事業では、収益性を高める構造改革を進め、効率化を図っている。検査機事業では、競合との差別化による市場再拡大を模索中だ。
一方で、急成長が期待されるオプティクス事業は、医療・半導体といった精密分野において、海外の有力企業からも「この分野ならニレコグループ」と指名される案件が増えており、同社の次なる成長エンジンとして期待されている。
また、M&Aによるポートフォリオの最適化も視野に入れた展開を計画している。リニアな成長を指向するだけではなく、外部の力を取り込むことによる非連続的な事業強化は、同社にとって持続的な成長への布石でもある。
技術と信頼の"つなぎ手"として。
中杉社長のリーダーシップは、ニレコが75年かけて築いてきた技術資産と、社員一人ひとりの声に真摯に向き合う姿勢を結びつけ、新たな時代への架け橋を築こうとしている。伝統に根ざしながら、未来に開かれた経営。それが今、静かに、かつ着実に動き始めている。
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