2020年4月号

環境会議

障がい者と共に成長し価値あるサービスを提供

川島 薫(楽天ソシオビジネス 代表取締役社長)

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楽天グループの特例子会社として、楽天ソシオビジネスは、障がい者に活躍の場を提供している。グループのWeb サービス関連業務やデータ作成など幅広い仕事を請け負うなどして、長年、通年黒字を維持している。

障がい者が活躍できる場を生み出す楽天の特例子会社

――障がいのある方々が活躍できる場を作るため、これまでどのような取り組みをされてきましたか。

川島 薫(楽天ソシオビジネス 代表取締役社長)

楽天ソシオビジネスは2007年12月に設立された楽天の特例子会社で、障がい者雇用を行っています。私自身は2008年4月に入社しましたが、当時は障がい者雇用をこれから行うという状況で、仕事の内容もまだあまり決まっていませんでした。その後は多くの障がい者の方々が入社し、業務を拡大してきました。

業務の中心は楽天からのアウトソーシングで、様々な事業部から仕事をいただいています。通常の特例子会社では障がい者のために業務を切り出すという考え方が多いですが、楽天ソシオビジネスはそうでなく、楽天で外部に出されている仕事や派遣の方々がやっている仕事をご依頼いただくのが大半です。

かつては身体障がい者が中心となって活躍していましたが、社会で障がい者の雇用が増える中、現在は知的障がい者や精神障がい者の方々の雇用も増えています。しかし、従来は身体障がい者の方が中心になってやってきた仕事を、知的障がいや精神障がいを持つ人たちが同じようにできるという訳ではありません。そこで、私たちは独自の事業として植物工場やベーカリーカフェを作るなど、職域を拡大しています。

楽天ソシオビジネスに入るまで、私は障がい者の方々と一緒に働くという経験がありませんでした。障がい者雇用の仕事を始めると、自分自身ではできて当たり前と思っていた仕事も、実際にはできる人がわずかだとわかりました。

色々な仕事の相談がある中、それぞれのスキルや経験などを見ながら、仕事を少しずつ教えていくというやり方になりました。これを繰り返すことで、人を育てていくしかありませんでした。

仕事を教える際には言葉だけではなかなか伝わらないので、1つ1つの仕事を実際に一緒にやってみせます。そして、彼らがやっているところを私が見て確認するといったことの繰り返しでした。

また、スキルや経験以外に、性格的な部分も考慮する必要があります。中には、仕事はできても雑なやり方になってしまう、すぐに飽きてしまうといった方もいます。そこで一人ひとりの性格や個性を見極めながら、この仕事にはこういう人が合うのではないかと社内で探してきました。1つの仕事を、複数の方に分担してやってもらうことも多くあります。

知的障がい者の方は特に、人に感謝される仕事が向いていると思います。褒められることによって伸びていく人たちで、「ありがとう」と感謝されると「もっと頑張らなければ」、「もっと、ありがとうと言われたい」という気持ちになるのです。たくさん褒めてあげると、「一生懸命、丁寧に仕事をしました」、「次も頑張ります」といった言葉も出てきます。

楽天の社内で仕事をすることで、他のグループ社員の方々と交流を持つ機会も増えてきます。彼らが仕事をしていると他のグループ社員の方々が「ありがとう」と声をかけてくれて、これは彼らにとってすごく嬉しいことです。自分が仕事をしている姿が他の人から見られていることも、彼らの成長につながっています。

 

 

独立採算制を採用し、黒字化

――特例子会社でありながら、独立採算制を採用し、長年、黒字を維持されています。

正直なところ、当初は黒字化の達成は難しいと考えていました。当時は1つ1つの仕事を教えていかなければ、仕事が完成できない状況だったからです。しかし、どこかでこれを変えなければいけないという気持ちもありました。黒字化を目指すことはある意味、社員の考え方や意識を向上させていくチャレンジでした。

社員は当初、約50人で、当時は社内を組織に分けず、楽天ソシオビジネスという1つの箱の中で社員が働いていました。その間は、一人ひとりの社員を育てていくことに時間をかけていました。そして何人かの仕事ができる社員がいて、その何人かが手分けをし、何人かを育てていくという状況でした。

そこから一人ずつリーダーになれそうな人を選び、時間をかけてその人にマネージメントを教えていきました。それがある程度、できるようになってから、まずは1、2個のチームを作り、徐々に増やしていきました。

その際、各チームやグループに、しっかり売上目標を持たせることにしました。当初は各チームに売上目標を持たせても、皆がどこまで理解できるのかという疑問もありました。しかし、会社経営をきちんとやらなければいけないという本質的な考え方があり、これを進めました。

そして損益計算書(PL)の考え方や見方といったところを、毎月しつこいほどやっていきました。初めのうちは皆、聞いても全然わからないという状況でしたが、徐々に売上目標や現状の売上があり、どのように計算すれば良いのかということを理解できるようになりました。

そして、目標を達成すれば会社に利益が出るということもわかってきました。さらに、売上目標を達成したチームを表彰すると「自分たちのチームも頑張りたい」という気持ちが皆に出てきました。また、個人でも貢献した社員を表彰するので「自分も頑張らなければ」と良い意味での競争意識が芽生えたと感じます。

これらの取り組みの積み重ねで「会社に利益が出れば、自分たちの生活が豊かになる」ということが理解できてくると、彼らの意欲の向上にもつながっていきました。

図1 社員構成

 

図2 年度別売上の推移

出典:楽天ソシオビジネス提供資料

 

テレワークの拡大で
より働きやすい職場に

――働き方改革は、障がい者の方々の雇用にどのように影響していますか。

障がい者雇用における働き方改革のメリットとして、テレワークが挙げられると思います。テレワークは従来、なかなか推進されませんでしたが、働き方改革が打ち出されたことで、どの企業も積極的に導入を考えるようになりました。これによって、雇用の場が大きく広がったと思います。

楽天ソシオビジネスでは元々、テレワークを行っていましたが、当初はオフィスで働くのが難しい重度の障がい者だけを対象にしていました。しかし、現在は家庭の事情でオフィスへ通勤できない方などにも、その機会が広がっています。

週末に仕事が発生すると、オフィスで働く社員の場合は管理者がいないと仕事ができませんが、在宅勤務者はその点でもメリットがあります。そういった面では、テレワークによる在宅勤務の人がいるからオフィスで働く人たちも助かっています。在宅勤務の人たちは、サービスサイトのレビュー・チェックの仕事などをしています。平日はオフィスでもできる仕事ですから、オフィスで働く人たちと協力して作業することもあります。

テレワークの社員には、仙台で働いている人たちもいます。仙台に支社があり、そこにエリアの部長がいるので、何か必要が生じた場合は彼らの自宅を訪問します。通常はテレビ会議などでコミュニケーションが取れますが、顔と顔を合わせてきちんと話をしなければいけない場面もあるので、そういった時はオフィスの人が出向いたり、オフィスに来てもらったりしています。

楽天のカフェテリアに隣接し、多くの社員が行き交うエントランス

店内ベーカリーでパン焼きの作業をする職員

――今後、新たに取り組んでいきたいことには、どのようなものがありますか。

創業から13年が経過し、楽天グループの中でもある程度、認めてもらえる会社になってきたと思います。

現在は、楽天グループの色々なところにご協力いただいています。今後については、特例子会社の楽天ソシオビジネスだけでなく、楽天グループ全体で障がい者雇用を促進していけるようになれば良いと思います。それによって、多くの障がい者の人たちが、様々な場所で活躍できるようにしていきたいです。

その一方で、楽天全体で色々な事業が新しく生まれる中、私たちもそれを支えられる存在であり続けたいと思っています。現在はグループ内に新しい事業ができれば、私たちにも相談が来る仕組みになってきています。ですから、常にお声がかかるよう、私たちも成長していかなければいけません。

また、最も重要なのは、より多くの障がい者が活躍できるよう、私たちが活躍の場を広げていくことだと思います。いずれは楽天グループの中だけでなく、グループの外にも出ていって事業を展開できれば良いな、と考えています。

――地方にも展開する事業所では、地域とどう連携していますか。

私たちは東京だけでなく、地方でも様々な取り組みを進めています。地方で障がい者雇用を促進するため、昨年は静岡県磐田市に植物工場を建てました。他には仙台や大阪、広島にも拠点があります。楽天グループは全国に拠点があるので、その中に私たちの事務所も入れさせていただき、少しずつ拡大していきます。今後は福岡や札幌などにも事務所を作り、障がい者雇用の幅を広げていきたいと思います。

 

川島 薫(かわしま・かおる)
楽天ソシオビジネス 代表取締役社長

 

『環境会議2020年春号』

『環境会議』は「環境知性を暮らしと仕事に生かす」を理念とし、社会の課題に対して幅広く問題意識を持つ人々と共に未来を考える雑誌です。
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(発売日:3月5日)

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