地域の「偉大なルーティン」を全国発信 くまもと手仕事ごよみ

県内の一般ボランティアが、暦をキーワードに地域の伝統工芸や文化、芸能、食などの「手しごと」を紹介する、熊本県の「くまもと手仕事ごよみ推進事業」。見過ごされがちだった地域の“偉大なるルーティン”を全国に語り継いでいく。
文・鈴木 紗栄 日本デザイン振興会

 

ホームページ「くまもと手しごと研究所」とFacebookを中心に情報発信をおこなう

現在、日本の各地で、その土地ならではの資源や価値に「デザイン」の力を掛け合わせることで、地域に新しい息吹を吹きこむ挑戦が行われている。デザインはものづくりだけではなく、課題を発見し、仕組みを再設計し、ひと・もの・ことを繋げることにとても有効だ。本連載では、地域×デザインの先進的な事例を、プロジェクトのキーパーソンへの取材を通して紹介していく。

県民約100名をキュレーターに、「手しごと」の価値をWEBで発信

震災、そしてその後に続いた集中豪雨と、今年は特に自然災害による大きな被害に見舞われた熊本県で、県内各地の四季を伝える、まさに手しごとのような心の通ったSNSによる情報発信がおこなわれている。「くまもと手仕事ごよみ推進事業」は2013年に県の事業としてスタート。県民がボランティアで「キュレーター」となり、暦をキーワードに地域の出来事や文化をFacebookで伝えていく。

ここでいう「手しごと」は、いわゆる伝統工芸などの職人技に収まらない、地域の食や農業、芸能や祭なども、人の手が入った「手しごと」として紹介される。キュレーターは県内の各地域で活動する感度の高い、独自のセンスをもった人たちに声を掛けて募集、いまでは県内11地域に100名近くのキュレーターがいるという。年齢層は40〜50代が多く、8割方が女性だ。

この事業を立ち上げ、推進してきたのが熊本県副知事の小野泰輔氏。「いまはとかく便利な世の中で、私たちの暮らしが画一化し、丁寧な手しごとはどんどん切り捨てられています。このままでは担い手も少なくなり廃れてしまう。このプロジェクトでは暦と手しごとに改めて私たち県民自身が着目し、旬に対する敏感さを取り戻すことで、経済的豊かさだけではない、真の豊かさについて考えるきっかけづくりをしています」

キュレーターのひとり、井澤るり子さんは美里町からフットパスという取り組みを広めている。ウォーキングによる体験、交流を通して、その地域の素晴らしさを感じてもらおうという新しいフィールドワークの提案だ。「ネジバナの花の咲き方とか、昔はおばあさんたちから口伝えで教わっていた話をFacebookに投稿しています」。確かにこれまで口承でおこなわれていた文化の伝達も、いまやSNSで広く伝え記録を残していく時代なのかもしれない。

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