埼玉の商工会を支える伴走支援の実践 本音を引き出し事業者の自走を促す人材像
(※本記事は「関東経済産業局 公式note」に2026年4月17日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

こんにちは、関東経済産業局 中小企業政策グループです。
地域への熱い想いを持って奮闘するキーパーソンに、その情熱のルーツや取組などを伺う「地域HOTパーソン」。今回の地域HOTパーソンは、地域の商工会を支援する埼玉県商工会連合会でご活躍されている笹本 陽介(ささもと ようすけ)さんです。
笹本さんは、寄居町商工会で2年間、地域の事業者に真正面から向き合い、「わからないことは素直に聞く」「対話を重ねて本音を引き出す」ことを大切にし、事業者の気づきを促し、自走につながる支援を行ってきました。
現在は商工会連合会へ戻られ、寄居町で培った現場感覚を活かし、忙しい現場に寄り添いながら、事業者支援を支える商工会職員を後押ししています。
営業職から商工会へ
──笹本さんの経歴を教えてください。
大学卒業後は不動産関係の会社に就職し、自分の強みであるコミュニケーション力を活かして営業を担当していました。その後、「商工会」の求人に偶然目が留まり、埼玉県商工会連合会に転職しています。
商工会は、地域のお祭りを一生懸命盛り上げているイメージが強かったのですが、調べてみると地域の小規模事業者支援にも力を入れていることを知りました。特に、商工会の「地域で頑張る人を応援します」というスローガンに強く惹かれたことを覚えています。入職してからの4年間は、総務、組織支援、青年部の事務局などを担当しました。県内商工会が相手の業務が中心だったため、事業者と直接向き合う機会は、多くはありませんでした。
──埼玉県商工会連合会での4年間は県内商工会のために尽力され、その後、寄居町商工会へ異動されるのですね。
いずれは現場(商工会)で事業者支援を行いたいと思っていましたし、今後のキャリアにおいて現場経験は必須でしたので、ある程度は心の準備はできていました。とはいえ、税務、金融、補助金などの事業者支援の実務経験はゼロ。前任者の笠原さん(地域HOTパーソン♯5笠原 亮彦)の後任として配属されるという重圧もあり、「自分に務まるのだろうか」という不安を抱えたままのスタートでした。
“わからない”から始まった伴走支援
──事業者支援未経験の中で、事業者との関係性作りのために工夫したことはありますか?
寄居町にはものづくり系企業が多く、専門知識を求められました。
「旋盤って何ですか?」
企業訪問の際に思わず口にした質問です。
ネットで調べてもすべてを理解するのは難しく、知ったかぶりしても意味がないと思いました。あるとき、思い切って社長に尋ねると、笑いながら一つひとつ教えてくれました。素直に聞けば、皆さんちゃんと教えてくれるんです。
もちろん、その後自分でも勉強しましたが、そこから信頼が少しずつ積み重なっていった気がします。
──事業者支援で意識していたことはありますか?
事業者からの相談は売上向上や補助金申請、創業支援など多岐にわたり、正解が一つではない難しさがありました。当初の私の対応は、「補助金を活用したい」という事業者からの要望に対しては、単に申請支援にとどまっていました。
そんななか、先輩職員に指導・サポートしていただき、補助金活用後の展開、例えば展示会への出展支援まですることの大切さを学びました。そのおかげで今は、次の一手まで伴走することを意識しています。
真剣に向き合うことで、見えてきた「支援の本質」
──印象に残っている支援事例はありますか?
寄居に移住してきた方が創業したカフェ「門口寄居(かどぐちよりい)」さんですね。寄居町に着任して最初に担当した支援先です。経営支援について何も知らなかったのですが、先輩職員にOJTしていただきつつも、試行錯誤したことを覚えています。
創業希望者である門口寄居さんの相談では、資金が限られるなかで、やりたいことの取捨選択を数か月かけて一緒に整理しました。
対話と傾聴を重ねる中で、「多角化を通じて新たな事業の柱を構築する」という経営課題が浮き彫りになりました。そこで、経営革新計画の策定を通じて事業内容を見える化し、本当に取り組むべきことの優先順位を整理しました。
その結果、当初の壮大な計画をすべて実行するのではなく、門口寄居さん自身が判断し、現実的にできることに一歩ずつ取り組みながら前進していきました。私はこうした事業者の自走化こそが、商工会による支援の本質であり、目指すべき姿だと考えています。
またこのように考えられたのは、本事例を商工会職員で構成される団体(職員協議会)で事例発表をさせていただけたからこそです。埼玉県商工会職員協議会の毒島会長や副会長の方々をはじめとする多くの先輩や仲間達に支えられ、自身の取り組みについて振り返ることができたからこそ、伴走支援の大切さや商工会職員の暖かさを感じることができました。本当に感謝しています。
そして今、商工連へ“現場の声がわかる人”として
──商工会という組織の役割をどのように捉えていますか?
商工会は「関係人口づくり」と「企業の魅力づくり」を実現するための「ハブ」だと考えています。事業者同士をつなぐこともそうですし、事業者と公的支援機関や自治体などをつなぎ、地域を元気にするための「ハブ」の役割を商工会は担っています。
実際に私の経験でも、寄居町商工会の先輩指導員と共に事業者が活用する寄居町の補助金制度の改正にも関わらせていただいたことがあります。上限額の見直しや事業計画の策定を必須要件とするなど、単なる資金支援で終わることがないよう、補助金申請に取り組む過程を通じて事業者に気づきを与えることなども意識して寄居町と議論し、実現することができました。
また、寄居町商工会の先輩方は、町の歴史はもちろん、人間関係など色々な情報において、町のプロフェッショナルだと感じました。そんなプロフェッショナルがいる商工会は町の情報が集まる場所、そして地域の方が困ったら相談に行ける場所であり続けてほしいと思います。
──最後に、今後の意気込み・目標を教えてください。
支援者としては、事業者と同じ目線に立ち、ともに悩み、整理し、気づきを与える存在であり続けたいです。この想いは寄居町での2年間が、あったから生まれたモノだと思います。
そして、商工会連合会に戻った今の立場では、「地域のために」という想いを持ちながら、商工会職員の役に立ちたいですね。商工会という組織が、事業者同士などをつなぐ「ハブ」であるなら、自分自身は商工会連合会と商工会をつなぐ「ハブ」になれるといいなと思います。
目標は「誰に聞けばいいかわからないことがあれば、笹本さんに聞こう」と県内商工会の多くの方に思ってもらえるような存在になることです。実際に、寄居町周辺の商工会職員との関係性はそのようになってきています。そして、商工会と商工会連合会が力を合わせ、現場の声を国の政策へつなげていく。そのハブになって、地域の事業者が自走できる環境づくりにも貢献していきたいです。
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