カインズが挑む物流DX データ活用と共同配送で進めるSCM・ロジスティクス戦略

(※本記事は「関東経済産業局 公式note」に2026年5月21日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

カインズのSCM・ロジスティクス戦略

関東経済産業局で毎月開催する記者会見(定例プレス・ブリーフィング)では、関東管内で活躍する企業にご登壇いただき、現在までのストーリーなどをお伺いしています。

令和8年4月22日には株式会社カインズ SCM・ロジスティクス本部 本部長 兼 株式会社アイシーカーゴ 取締役の藤原氏にご登壇いただき、物流効率化への取り組みやサプライチェーン改革について話していただきました。

この記事で分かること

  • カインズの事業概要と物流の特徴
  • 物流効率化に向けた具体的な取り組み内容
  • 今後を見据えたSCM・ロジスティクス戦略

カインズの事業概要

株式会社カインズは、ホームセンターチェーンを中核事業とする企業です。売上高は5,738億円、店舗数は264店舗にのぼり、ベイシアグループの一員として事業を展開しています。店舗は、専門性の高い売り場が集まる「ショップ・イン・ショップ」の形態を取っており、キッチン、インテリア、園芸など、多様な専門売り場が一体となった構成が特徴です。

商品面では、ナショナルブランドに加え、プライベートブランドの強化を進めてきました。プライベートブランド商品は14年連続でグッドデザイン賞を受賞しており、デザインや機能性を重視した商品開発が行われています。

これらの商品は、海外および国内の拠点を経由し、物流センターから各店舗へ供給されています。カインズはSPA企業として、調達から販売までを一体で設計している点に特徴があります。

グッドデザイン賞を受賞したプライベートブランド商品
グッドデザイン賞を受賞したプライベートブランド商品(※画像クリックで拡大)

物流ネットワークと店舗起点の考え方

カインズの物流は、海外メーカーや国内サプライヤーから商品を調達し、DC(ディストリビューションセンター)で在庫を管理します。その後、地域ごとに配置されたTC(トランスファーセンター)で仕分けを行い、各店舗へ配送される仕組みとなっています。

物流オペレーションの基本となっているのは「店舗起点」の考え方です。店舗での品出し作業をしやすくすることを重視し、売り場単位で商品をまとめて配送します。プライベートブランドだけでなく、ナショナルブランドの商品も含めて、売り場ごとに一括してカゴ車に積み込み、店舗に届ける形を取っています。

また、ベイシアグループ内の一部物流機能では、カインズの物流拠点を活用することでグループ全体の効率化も図られています。

物流効率化に取り組む理由

近年、物流を取り巻く環境は大きく変化しています。人手不足やコスト上昇、いわゆる「2024年問題」など、外部環境の変化が企業活動に影響を及ぼしています。

藤原氏は、これまで各社が進めてきた個社最適の効率化だけでは限界があり、サービスレベルとコストの両立が難しくなっている状況を説明しました。「運べなくなる」リスクが現実味を帯びる中で、企業単独ではなくサプライチェーン全体を視野に入れた最適化に向けて、継続的な取組が必要だと捉えています。

サプライチェーン構造改革のロードマップ全体像
サプライチェーン構造改革のロードマップ全体像(※画像クリックで拡大)

フェーズ1:現状把握とデータによる可視化

カインズではまず、自社の物流がどこで非効率になっているのかを把握することから着手しました。2023年までの輸送データの定量化と可視化を進めることで、非効率な輸送が積載率、実車率、輸送距離、輸送回数といった観点から整理され、データドリブンな物流改革が可能となりました。

フェーズ2:非効率輸送の解消と「共同配送」の推進

可視化によって明らかになった課題のうち、自社で改善できる部分と、単独では解決が難しい部分を切り分け、2025年度まで優先順位を付けて対応してきました。

例えば、物流現場では、トラックの荷待ち時間や荷役時間の短縮も重要なテーマです。カインズでは自社倉庫(TC)に2023年度からバース予約システムを導入することで、車両の呼び出し時間を劇的に改善しました。

また、サプライヤーや同業他社との共同輸送に取り組んでいます。2024年にはP&Gとの協業により、店舗配送の復路便でサプライヤーの荷物を積載する取り組みを開始しました。

また、競合関係にあるホームセンター各社とも、物流分野では協力し合い、共同輸送を実施しています。物流企業も含めた複数社での連携により、空車時間の削減や実車率の向上を目指しています。

サプライヤーとの協業事例
サプライヤーとの協業事例(※画像クリックで拡大)

フェーズ3:SCM・ロジスティクス改革

今後に向けて、カインズでは物流だけでなく、需要予測や発注を含めたサプライチェーン全体の改革を進めています。2026年度以降は、データドリブンな取り組みをさらに発展させ、AIを活用したSCM・ロジスティクスの実現を目指しています。

また、組織体制も見直し、物流、発注、売場管理まで全体最適化を目指す体制も構築しています。

物流を「経営」に近づける

カインズの戦略の軸には、「ものを無駄に運ばない」「ものを非効率に運ばない」という考え方があります。物流拠点の東西分散や在庫配置の見直しなど、自社努力で改善できる点と、他社との連携が必要な点を整理しながら、物流を経営に直結するテーマとして捉えています。

藤原氏は、物流改革は一過性の施策ではなく、企業存続に関わる継続的な挑戦であると語ります。データと協業を軸にしたカインズの取り組みは、今後の物流やサプライチェーンの在り方を考える上で、多くの示唆を与えてくれるものと言えそうです。

元記事へのリンクはこちら

関東経済産業局 公式note