企業不動産を経営資源に変える——CREのDXで日本の産業を支える

「全ての企業不動産へのソリューションを通じて、日本の経済・産業に貢献する」。その理念を掲げ、ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役・宮寺之裕氏は、統計上500兆円規模ともいわれる企業不動産ストックに着目。大手が手をつけないコンパクト案件に特化し、企業の経営開示資料をAIで解析するという独自のアプローチでCRE市場を切り開いてきた。2024年11月、東京証券取引所グロース市場への上場を果たした宮寺氏に、「思考は現実化する」という経営哲学とともに、その事業構想と展望を聞いた。

(ククレブ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役 宮寺 之裕 氏)

決算対策ではなく「経営戦略」へ —— 企業不動産のもつ価値の本質

ククレブ・アドバイザーズは、CRE(Corporate Real Estate=企業不動産)に特化したコンサルティングとテクノロジーを融合させた企業だ。工場、倉庫、オフィス、社宅など、企業が保有・賃借するあらゆる不動産の売却・活用・マッチングを支援する。統計上500兆円規模に上るとされながら、長年「経営資源」として活用されてこなかったこの領域に、宮寺氏はビジネスの本質を見出した。

宮寺氏は大手リース会社の法人営業からキャリアをスタートし、担当先との関わりの中で不動産の可能性に着目。その後、大手デベロッパーなどで経験を積み重ねてきた。「様々な企業の経営課題に向き合い、不動産を通じてその解決に貢献できる。それがこの仕事の醍醐味であり、起業への原動力になりました」と宮寺氏は語る。しかし当時の市場は、CREを前向きに活用する土壌にはなかった。「決算が悪化すると不動産を売却して特別利益を生み出し、赤字を回避するという後ろ向きな使い方が主流だと感じていました」と宮寺氏は振り返る。それでも宮寺氏は、企業の経営環境が変われば不動産の役割も必ず変わると確信していた。問題は、変化のタイミングをいかに早く捉えるかだった。

そこで宮寺氏が着目したのが、企業の経営開示資料だ。中期経営計画や有価証券報告書を読み解けば、工場集約や本社移転といった経営判断。そこに生まれる不動産ニーズを、企業自身が気づく前に捉えることができる。「不動産情報を追うのではなく、経営の文脈を読む」。その発想の転換が、同社の競争優位の源泉だ。しかし上場企業だけで2000社超の中期経営計画を手作業で読み解くのは現実的ではない。「2013年頃から、この作業をどうにか自動化できないかとずっと考えていた」と宮寺氏は明かす。2019年前後に機械学習の実用化が進み、技術パートナーとの出会いが宮寺氏を動かした。「プロダクトの形にできると確信した」と断言する宮寺氏は起業を決断。2020年2月、「ククレブAI」をリリースした。

デジタルの力で、大手が踏み込まない領域へ

同社は戦略的に20億円以下のコンパクト案件に注力する。不動産取引における規模として、大手不動産会社が本格的には動かず、また専門性のない中小業者には難易度が高い、と宮寺氏は分析する。いわば市場の「空白地帯」であり、案件数は膨大に存在し統計上60兆円規模とされている。この領域こそ、CREの専門知識とデジタル技術を兼ね備えたククレブ・アドバイザーズが最も力を発揮できる舞台だ。

4000社超の中期計画やIR資料を独自システムで解析し、不動産活用の可能性がある企業をいち早く特定する。さらにマッチングサービス「ククレブ クレマ」を通じて、売却・活用ニーズを持つ企業と必要とする企業を結びつける。かつては「欲しい相手が存在するかどうかすら分からない状態だった」市場に、ニーズの可視化という仕組みをもたらした。顧客企業にとっては、不動産を動かすタイミングと相手先の両方を同社が先回りして提供してくれる存在となる。場合によっては同社自らがリスクを取って不動産を購入し、バリューアップして第三者に貸す・売却するアプローチも取る。

こうした事業の根底には、宮寺氏の社会観がある。「人口が減少していく社会で、新しいものを次々と作り続ける仕組みはいずれ終わる。既存のストックをイノベーションして活用することが、これからの日本に必要だ」と宮寺氏は語る。その確信が、次の成長軸である地域展開への布石となっている。

地方創生の現場で問われる、CREの真価

同社が次の成長軸として力を注ぐのが、地方銀行との連携を起点とした地域展開だ。地方銀行は地方創生をミッションとして背負い、行員が日々受ける相談の中には遊休不動産や事業承継に絡む課題が数多く含まれる。同社のマッチングシステムを導入することで、行員がその案件を登録し、必要とする企業へとつなぐことができる。「まず間接的にお役に立ち、そこから具体的な不動産課題をリアルに解決していく」と宮寺氏は語る。

事業承継の場面でも不動産は必ずついて回る。後継者不在で事業を閉じる場合でも、不動産には価値が残っているケースが多い。その不動産をいかに再生させるか。これが地方創生における同社の重要なテーマだ。さらに宮寺氏が注目するのが、半導体産業の地方集積だ。北海道や熊本のようにサプライチェーンが集積する動きが加速する中、製造工程で必要な危険物倉庫が地方で不足している。廃工場跡地の転用支援や自社プロジェクトの立ち上げを通じて、その課題に応えていく。

「人口が減少していく社会で、既存のストックをイノベーションして活用することがこれからの日本に必要だ」と宮寺氏は語る。建設資材高騰や人手不足で新設コストが当初見込みの3倍に跳ね上がるケースが増える中、CREの果たす役割はますます大きくなっている。

思考を現実に変える —— CREで日本の産業を支え続ける決意

宮寺氏が経営哲学として大切にしているのが、「思考は現実化する」という言葉だ。起業も、上場も、組織の形も、「全てまず思い描いてきたことだった」と宮寺氏は断言する。「ゴールを具体的にイメージできるかどうかが、物事を続けられるかどうかを決める」その言葉は、宮寺氏の行動指針であり続けている。2024年11月、ククレブ・アドバイザーズは東京証券取引所グロース市場への上場を果たした。宮寺氏はそれをゴールではなく、次のステージへの起点だと言い切る。数字・組織ともにスケールアップを続けながら、新規事業への投資も継続していく。「企業不動産を通じて日本の産業を支え続けること、そして新たな事業構想を描き続けていくこと。それが私のこれからです」と宮寺氏は力強く語る。描いた未来を現実に変えてきた経営者が、さらなる構想の実現に向かって、歩みを進めている。

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