【7月21日上野賢一郎厚労大臣会見詳報】生活保護、受給していない世帯にも追加給付へ 8月1日から申出受付

上野賢一郎厚生労働大臣は2026年7月21日、閣議後の記者会見に臨んだ。記者からの質問に答える形で、熱中症対策や電子カルテの普及方針、生活保護の追加給付、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針、向精神薬の不正取得問題、社会福祉協議会の体制強化について説明した。

夏本番、熱中症対策を要請

気温の上昇に伴い、熱中症で救急搬送される人が増えている。上野氏はこの傾向を踏まえ、職場における熱中症対策の重要性を強調した。厚生労働省は2025年6月1日、労働安全衛生規則を改正し、事業者に対して熱中症のおそれがある労働者を早期に発見し、重篤化を防ぐ措置を義務付けた。

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続いて2026年3月18日には「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を公表し、業種や業態に応じてリスクを把握・評価したうえで対策を選ぶよう促している。上野氏は、暑さが厳しくなる時期に向けて、事業者にはガイドラインを踏まえた予防対策と早期発見、迅速な対応を求めた。労働者に対しても、体調の変化を感じたら無理をせず、すぐに周囲や管理者に伝えるよう呼びかけた。

電子カルテ、導入義務化を否定

電子カルテの導入義務化に関する質問も出た。上野氏はまず、2025年12月12日に公布された「医療法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第87号)について説明した。この改正法は、地域医療介護総合確保法に電子カルテの普及目標を盛り込んだものであり、2030年12月31日までに普及率を約100%とする目標達成の義務を負うのは政府であって、医療機関に導入を義務付けるものではないとした。

現在開発が進む「標準型電子カルテ・導入版」についても言及した。紙カルテを使う診療所でも利用できるようシンプルな画面設計とし、電子カルテ情報共有サービスによる情報連携を可能にする予定だが、こちらも導入は義務ではないと明言した。加えて、2026年3月に公表した電子カルテの標準仕様は電子カルテベンダー向けに示したものであり、既に電子カルテを導入している医療機関にシステムの改修や更新を求めるものではないと述べた。医療機関は現在利用している電子カルテを継続して使うことができる。ただし、標準仕様に準拠した電子カルテには全国的な情報連携やセキュリティレベルの確認といった利点があり、上野氏は準拠したシステムの利用に期待を示した。

生活保護、追加給付が8月開始

生活保護基準の改定をめぐる最高裁判決への対応にも質問が及んだ。最高裁判所は2025年6月27日、2013年から2015年にかけて実施された生活扶助基準の引き下げの一部について、国の判断に誤りがあったと判断した。これを受け厚生労働省は、現在生活保護を受給していない世帯についても、自治体への申出により追加給付を行う方針を示している。申出の受付期間は全国統一で、2026年8月1日から2027年7月末までの1年間と設定された。

対象者の中には制度自体を知らない人も少なくないとみられ、周知の徹底が課題となっている。上野氏は、新聞やインターネットなど各種媒体を通じた全国規模の広報に加え、2026年3月から設置している相談センターや自治体との連携を強化し、対象者への追加給付が円滑に進むよう取り組む考えを示した。

GPIF運用、方針転換は否定

年金積立金の運用をめぐっては、高市早苗首相が2026年7月17日の参院予算委員会集中審議で、参政党の安藤裕氏の質問に対し、年金基金による国内金融資産への投資を後押しする方策を追求する考えを示したことに関連して質問が寄せられた。

上野氏は、GPIFの運用が法律に基づき、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から市場や民間活動への影響に留意しつつ行われる必要があると説明した。そのうえで、GPIFは定められた運用方針のもとでオルタナティブ投資を実施し、国内案件への投資も積み上げ、国内経済の成長にも寄与しているとの認識を示した。現在の運用環境については、基本ポートフォリオが想定するものから大きく乖離しているとは考えていないとの見方を維持した。一方で、基本ポートフォリオは専門的見地から毎年度検証しており、必要が生じれば見直しを検討する考えも併せて示した。

向精神薬、重複処方の是正へ

向精神薬の不正取得をめぐる問題についても質問が出た。テレビ朝日の取材により、1日1錠の服用を前提とする向精神薬について、都内の複数の病院や薬局を利用した1人の患者が、年間で1万錠近くを処方されていた事例が確認されているという。オーバードーズや転売への悪用が疑われ、都内にとどまらず全国に同様の問題が広がっているとの指摘もある。

上野氏は、健康被害につながる可能性があるとして適正使用の重要性を強調した。厚生労働省は、電子処方箋システムに向精神薬の重複投薬を確認し警告を出す機能を設けており、2026年5月時点で9割以上の薬局に導入されている。客観的に疑わしいと判断される場合には、薬剤師法に基づき薬剤師が調剤を拒否できることを明確に示すなどの対策も講じているという。また、処方された向精神薬を他者に譲渡する行為は麻薬及び向精神薬取締法に違反しており、麻薬取締部などが取り締まりを行っている。上野氏は、医療機関を過剰に受診している人による向精神薬の不正転売などの問題について、調剤段階での対応や取り締まりの強化を含め、実効性のある対応を検討していく考えを示した。

高齢者支援、福祉協議会が担う

社会福祉協議会の体制についても質問が寄せられた。2026年6月19日に成立した「社会福祉法等の一部を改正する法律」は、身寄りのない高齢者への支援を強化する内容を含んでおり、担い手の一つとして社会福祉協議会が想定されている。しかし、一部の社会福祉協議会からは、既に人手不足が続いているとの声が上がっているという。

上野氏は、頼れる身寄りのない高齢者らを支援する新たな第二種社会福祉事業について、全国どの地域でも支援を受けられるよう、都道府県社会福祉協議会に実施を義務付けたと説明した。一方で、社会福祉協議会が現在行っている日常生活自立支援事業には、利用の順番を待つ人がいることや、担い手となる専門員の確保に課題があることも認めた。社会保障審議会の報告書では、新たな支援の詳細を検討する際に、現行事業の実施状況や社会福祉協議会が積み重ねてきた経験を踏まえること、十分な準備期間を設けて関係者への丁寧な説明や調整を行うことなどが指摘されている。新事業の施行時期は、改正法の公布から2年以内に政令で定める日とされており、上野氏は施行に向けて関係者と相談しながら必要な対応を取っていく考えを示した。


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