元TBSアナウンサー笹川友里さんが語る 人生を自分でハンドリングしキャリア女性の一歩を支える挑戦

(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年5月19日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

TBSアナウンサーを経て、女性ファッション誌「VERY」のモデルやラジオ番組のパーソナリティ、サウナの経営など多方面で活躍する笹川友里さん。2023年6月には、女性のキャリア支援事業を展開する「NewMe」を共同創業。CCO(チーフ・コミュニケーション・オフィサー)として、キャリアに悩む女性同士の“利害関係のないつながり”を育てる場の提供を通じて、仕事としっかり向き合いながら働く女性たちを後押ししている。自身もキャリアや働き方に対する葛藤や焦りを経験したことが起業のきっかけになったという笹川さん。その背景にある思いを聞いた。

笹川友里さん

20代半ば、「自分らしさを模索していた」

――― TBSではADとしてキャリアをスタートされ、その後、アナウンサー室へ異動して活躍されました。TBS時代の思い出深いエピソードはありますか。

もともとアナウンサーを目指して就職活動をしていましたが、思うように進まず、総合職として改めて選考を受けてTBSに入社しました。入社後はその思いにいったん区切りをつけ、目の前の仕事に向き合おうと決めて、ADとしてキャリアをスタートしました。当時、生放送で4時間にわたる「王様のブランチ」という番組を主に担当していました。オンエアのある週は36時間ほど会社にいることもあり、椅子を並べて仮眠を取ったり、深夜の編集の合間に夜食を買いに行ったりすることもありましたが、つらいと感じた事はありませんでした。がむしゃらに、その時しかできない経験に向き合っていた時間だったと思います。

その後、入社から1年ほどで、アナウンス部への異動が決まりました。与えられた仕事をしっかりとやろうと気持ちを切り替えて、アナウンサーとして一歩を踏み出しました。アナウンサーは正確な情報を届ける責任を担う仕事であり、わずかなミスも許されません。秒単位で進む現場の中で、常に緊張感と向き合いながら働いていました。また、突発の事態にも対応できるように常に世の中のニュースをキャッチアップしておく必要もあり、周りの先輩方に追いつけるように、常に焦っていました。

――― TBSで活躍されていた頃、働き方やご自身のキャリアについて、どのような悩みがありましたか。

情報番組やバラエティー番組では、自分の「色」を求められる場面が多くありました。「笹川らしさとは何か」と考えても、なかなか言葉にできなくて。「元AD」というタグはあったとしても、「自分らしい色」の正解は見いだせずにいました。

そんなとき、先輩の安住紳一郎さんと明け方のアナウンス部でお話しする機会があり、「無色透明が君の良さだから、あまり考えすぎずに、聞かれたことに淡々と答えていくのがいいと思うよ」とアドバイスをいただきました。ただ、当時の自分は「無色透明」という言葉に対して、自分が存在しないようなイメージがあって、受け止めきれませんでした。振り返ると、20代半ばの自分は「自分らしさとは何か」を必死に探していた時期だったと思います。

「アナウンサー時代は自分の『色』を出そうと悩み、模索していました」
「アナウンサー時代は自分の『色』を出そうと悩み、模索していました」

アナウンサーの看板を下ろし「フラットな自分になる」…独立を決断

――― 退社から独立の決断へと、ご自身の考えはどのようにまとまっていったのでしょうか。

アナウンス部には先輩パパ、ママが何人もいて、いつも頼らせていただきましたし、子育てもしやすく、働き続けられる環境だと思いました。でも、ニュースを読んだり、情報を長尺で解説したりする中で、自分がまだ世の中のことを十分に理解できていないのではないかという感覚が、少しずつ積み重なっていきました。

報道記者になる選択肢もあったかもしれませんし、経営戦略室や宣伝部など他部署への異動も含めて、さまざまな選択肢を考えました。実際に多くの先輩方に話を聞きながら、会社に残るという選択肢も模索しつつ、実は3年間ほど長い時間をかけて悩みました。

TBSが大好きでしたし、退社することは自分の中で最も意外な人生の決断でした。けれど、恋焦がれたアナウンサーという肩書を持ったまま新しいことに挑戦するよりも、一度その看板を下ろして、何者でもない自分としてフラットになろうと思いました。

人生は長いので、何かを始めるなら早い方がいい。第一子の出産を経てライフスタイルが変わった30歳というタイミングで、自分の働き方そのものを見直してみようと決断しました。

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女性たちの切実な声 「キャリアを相談できる場所がない」

――― 2023年10月、女性向けキャリア支援事業を展開するNewMe(ニューミー)を篠原さくらさんと共同で設立されました。篠原さんとの出会いから起業まで、どんな経緯がありましたか。

彼女はHR(ヒューマンリソース)領域でキャリアを積んできた人で、サイバーエージェントなどでの人事経験を経て独立し、人事コンサルタントとしての経験も豊か。たまたま、子どもが同い年で、それがきっかけで出会いました。自然と会話をする機会が増えていったのですが、不思議なことに、気づけばいつも仕事の話ばかりしていたんです。

話していくうちに、理想の社会像みたいなものがとても近いことに気づきました。「女性がもっと人生をしっかりとハンドリングして仕事も前向きに楽しみながら、働けるようになったらいいのに」と、お互いに考えていました。最初から二人で起業を目指していたわけではなく、「こういう仕組みがあったらいいよね」「こういう場が必要だよね」と対話を重ねながら行動して行く中で、気づいたら起業という形にたどり着き、ごく自然な流れでNewMeが生まれました。

――― ご自身がキャリアに悩んだ経験が、起業へと結びついていったのですね。

今、多くの女性が日々の仕事と向き合う中で、自分の将来やキャリアについて、じっくり考える時間を取れていないという悩みを持つ人が多いと感じています。気づけば同じ会社でキャリアを重ね、結婚して子どもが生まれ、いざ、新しいチャレンジをしよう、環境を変えようと思ったときに身動きが取りづらくなっている。

だからこそ、キャリアの参考になる情報や多様な価値観をキャッチアップできる場所が必要だと考え、NewMeを立ち上げました。今の女性たちは感度が高く、現実的で、自分の将来にしっかりと向き合おうとしている方が多いと感じています。一方で、どこに信頼できる情報があるのかが分からないという悩みも抱えています。実際に話を聞くと、「ロールモデルが見つからない」「気軽にキャリアを相談できる場所がほしい」「社外での利害関係のないつながりを作りたい」といった声が多くありました。そうした一人ひとりのリアルな悩みに向き合う中で、温度感のある情報、リアルな体験談を求める切実な声をサービスの中に取り入れていきました。

動画などを通じて、働く女性に向けた情報を積極的に発信している
動画などを通じて、働く女性に向けた情報を積極的に発信している

NewMeのサービスは、悩みの深さやタイミングに応じて、段階的に設計しています。もっともライトな接点はSNSやYouTubeでの、働く女性に向けた情報発信です。次の段階が、年に20回ほど開催しているキャリアイベントで、他の人の考えに触れたいという方に向けた場です。さらに、社外で深いつながりを持ちたい、安心して相談できる場所がほしい、という方にはコミュニティ「Fourth」という選択肢もあります。そして、「一歩踏み出したい」「働き方を変えたい」と思ったタイミングでは、転職支援サービス「NewMe Jobs」も用意しています。

「つながりがほしい」「一歩踏み出したい」という思い、そして実際のキャリアの変化に至るまでには循環した流れがあります。どのフェーズにいる方でも、ここに来れば、何かしらのヒントや次の一歩が見つかる、そんな場でありたいと考えています。女性は、結婚や出産などライフイベントによってキャリアに変化が生まれやすいからこそ、キャリアを俯瞰して捉えながら選択していくことが大切だと感じています。

「自分で良い環境を選んで働く」という意識を持つこと

――― NewMeのこれまでの取り組みの中で、特に「やってよかった」と感じた出来事はありましたか。

あるイベントに参加してくださった、社会人4年目ほどの女性が印象に残っています。初めてお会いしたときは、どこか表情が曇っていて。コンサルティングファームで働きながら、海外や地方への駐在、パートナーとの関係、今後のキャリア設計など、様々な要素が重なり、「漠然とした不安」を抱えていらっしゃいました。

将来どこで、どのように働いているかがイメージできない。仕事と子育ての両立ができるかどうかも分からない。社内での評価にも手ごたえを感じられない。そうした複数の悩みが絡み合っている感じでした。

その後、NewMeのコミュニティ「Fourth」に参加され、同じように悩みを持つ方や、少し先を歩んでいる先輩たちと率直に想いを共有する中で、少しずつ気持ちが整理されていったようでした。最終的には、よりフラットで自分らしく働けるベンチャー企業への転職を決断されました。表情も柔らかくなり、顔色もどんどん明るくなっていったのが印象的でした。

――― NewMeのビジョンには「人生を自分でハンドリングし、前向きに生きる女性を増やす」とあります。現状では、その実現にあたってどのような課題があると感じますか。

以前と比べると、男女をフラットに評価する企業は確実に増えてきていると感じます。一方で、地域差に関しては課題が山積みだと感じています。ただ、社会や環境の変化を待ち続けるだけでは、自分自身の時間も同時に過ぎて行ってしまいますので、「自分にとって良い環境を選んで働く」という意識が、これからは一人ひとりに求められていくのではないかと感じています。

特に20代のうちに一度、自分のキャリアと向き合い、どのように働きたいかを考えておくことで、その後の選択肢は大きく広がります。30代以降、子育てなどのライフイベントと仕事を両立していくうえでも、早い段階での意思決定が、自分のキャリアと向き合うことで大事だと思っています。

「NewMeを通じて、キャリアに悩む女性たちの表情が明るくなるのがうれしい」
「NewMeを通じて、キャリアに悩む女性たちの表情が明るくなるのがうれしい」

「背伸び案件」に出合ったら、まずは手を挙げよう

――― METI journal オンラインは20~40代の働く女性もたくさん閲覧しています。キャリア、働き方、人生設計に悩む女性の皆さんへのエール、メッセージをお願いします。

私自身も、今は6歳と2歳の子どもを育てていて、特に下の男の子は「イヤイヤ期」真っ最中で、毎日を本当に必死に過ごしています。まさか、自分が起業するとも思わなかったですし、人生何があるか分かりません。

仕事の中でも、大きなプロジェクトを任されたり、管理職への昇格の話があったりと、ちょっとした「背伸び案件」が降ってくることがあると思います。それは「できるか、できないか」ではなく、「やりたいか、やりたくないか」で判断して、少しでもやってみたいと思えたなら、まずは手を挙げてみる。最初の一歩は怖いけれど、一緒に小さなチャレンジからやっていきましょう。

――― 今後の目標や夢について、お話しください。

NewMeは、これからも少しずつ丁寧に育てていきたいなと考えています。大きな会社にしたいとか、社会的なムーブメントを起こしたい、というよりも、仕事やキャリア、生き方に迷ったときに、ふと立ち寄れる居心地のいい場所になって、次の一歩を踏み出すきっかけになればいいなと考えています。一緒に悩みを解決しながら、歩んでいけたらいいなと思っています。

【プロフィール】

笹川 友里(ささがわ・ゆり)
NewMe株式会社CCO
2013年新卒でTBSテレビに入社し情報制作二部で制作ADを経験。その後人事異動でアナウンサーに。8年在籍し独立。2023年NewMe株式会社を共同創業。自分の人生を自分でハンドリングし前向きに生きる女性を増やすべく、ミドル〜ハイクラス女性向け転職サービス「NewMe Jobs」や、女性のキャリアに特化したメディア「NewMe Story」、キャリアイベントなどの事業を展開。ファッション誌VERYではカバーを担当、女性専用サウナSaunaTherapyの共同経営、TOKYOFMでのラジオパーソナリティなど、幅広く活動している。

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