総務省 自治体DX推進計画改定 領域横断の変革を環境整備で支える
人口減少と行政需要の拡大が同時に進む中、地方自治体は限られた人的資源で複雑化する事務に向き合わねばならない。総務省自治行政局地域DX推進室の石川祐帆課長補佐が、2026年1月に第5.1版へ改定された「自治体DX推進計画」のポイントと狙いを語った。
総務省自治行政局地域DX推進室
課長補佐 石川祐帆氏
計画期間を撤廃し 継続的な取組へ
2050年までに日本の人口は約2150万人減少し、生産年齢人口の割合は52.9%へ低下する見込みだ。地方公務員も2040年頃に団塊ジュニア世代が退職する一方、入庁が見込まれる20代前半の人口はその3分の1程度にとどまる。他方で行政需要は多様化の一途をたどり、カーボンニュートラル対策、インバウンド受入施策や、インフラ老朽化対策など、数十年前にはなかった事務が増えている。
「人は減る、事務は増えるという中で、行政サービスを持続的に提供するためには、スピーディなDXが不可欠です」と石川氏は語る。
こうした状況を踏まえ、総務省は自治体DX推進計画を改定した。前版は2025年度までの5カ年計画だったが、今後も中長期的に継続的な取組が必要なため計画期間を撤廃。代わりに5年間の取組スケジュールを別紙で示し毎年度更新する構造へ改めた。
重点取組事項も、2024年6月21日閣議決定の「国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針」を踏まえ、情報システムの「共通化等の推進」を独立項目に切り出し、7項目から8項目へ再編している。
出典:総務省
フロントヤード改革 横展開を推進
自治体DXは住民との接点を改善する「フロントヤード改革」と、行政内部事務を見直す「バックヤード改革」をデータ連携で一体的に進める。フロントヤード改革では手続の原則オンライン化を進めつつ、窓口を希望する住民には来庁予約とワンストップ窓口で丁寧かつ迅速に応じる姿を目指す。
静岡県裾野市では、来庁予約と申請書のオンライン入力を導入し、繁忙期の待ち時間を60分から15分へ、手続時間を34分から15分へ短縮、年間9500時間の業務削減を実現した。
こうした改革を全国へ横展開するため、総務省はフロントヤード改革推進手順書を策定し、地域未来交付金やデジタル活用推進事業債の創設、アドバイザー派遣による人的支援を整備した。加えて、市町村単体ではデジタル化の費用がかさみ事務量も限られるため、複数自治体が同一事務を共同で外部委託する「共同BPO」や、ある市町村が設立した地方独立行政法人を周辺自治体が共同活用する「窓口地独法」の仕組みづくりも進められている。都道府県と市町村が連携した共同調達により、職員の負担軽減やコスト低減、導入後のノウハウ共有を図る。
図 2015 年度需要分野別ユニフォーム市場構成
出典:総務省
バックヤード改革と財政措置
バックヤード改革では、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」に基づき、住民基本台帳・戸籍・税など20業務の情報システム標準化を推進する。原則2025年度までの移行を目指してきたが、対応が難しいシステムについては基金の設置年限を5年延長し2030年度末までとした。
公金収納の面では、2024年の地方自治法等改正により2026年9月以降、地方税統一QRコード「eL-QR」を活用した公金の電子納付が可能となる。原則として2028年4月までに全団体での収納開始を目指す。
この取組に対処するには財務会計システム等の改修が必要となるが、これについては、2026年度に事業費1500億円へ拡充されたデジタル活用推進事業債を活用することができる。充当率90%、交付税措置率50%で、システム導入や共同調達のほか、今年度からサイバーセキュリティ対策に必要なシステム整備も新たに対象に加わった。
セキュリティ・AI・人材の基盤整備
DXの推進にはセキュリティ基盤の強化が欠かせない。2024年の通常国会で成立した改正地方自治法により、地方公共団体は2026年度からサイバーセキュリティを確保するための方針策定と必要な措置の実施が義務付けられた。総務省は方針策定の指針を2025年年4月に示したうえで、ペネトレーションテスト(脆弱性診断)やリスクアセスメント等の経費に新たな地方交付税措置を講じ、全自治体が利用可能な脆弱性診断システムを国が一括構築する。今年の春には検討会で支援策を取りまとめ、夏頃に省令等を制定する予定だ。
AI活用については、2025年12月に「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック」を改訂し、生成AIの利活用事例やAI統括責任者(CAIO)の設置等の留意点を盛り込んだ。北海道当別町では生成AIによる要約を組み合わせた議事概要の作成、神戸市では住民からの税関連電話に自動応答するボイスボットの実証が進むなど実装が広がる。
人材面では、DX担当者が1人以下の「1人情シス」団体が189にのぼる現状を踏まえ、都道府県にデジタル専門人材のプール機能を確保する取組を推進する。広島県の県と市町でのデジタル人材共同採用や熊本県の民間デジタル人材派遣など先進事例も生まれている。DXアドバイザー制度は2026年度から派遣回数を年10回へ倍増し、対象分野にAI・RPAを明記した。
「フロントヤード、バックヤードの改革を両輪で進めつつ、優良事例の共有、共同調達によってコストを抑えつつスピーディに取組を広げていく。都道府県、市町村との連携体制の構築も重要です。」と石川氏は結んだ。