電子サインとPDFで実現する自治体DX

押印を含む手続き関連作業は、自治体においてデジタル化が遅れている領域だ。これを改革するのが、アドビが提供するクラウド型電子サイン「Adobe Sign」。本人確認や非改ざん性の証明を担保し、スムーズなオンライン申請や認可・認定を実現する。

岩松 健史 アドビ デジタルメディア事業統括本部
営業戦略部 ビジネスデベロップメントマネージャー

紙の書類と印鑑による押印は、契約書や請求書の作成、制度の申請などにおいて当然の作業と考えられてきた。書類へのサインで契約書を交わす欧米と異なり、日本はハンコ文化が浸透している国。諸外国と比べて電子サインの普及にも消極的だった。電子サインでは、手書き署名の代わりに電子形式の文書やフォームに同意・承認の意思を記録し、法的な効力を証明する。

「Adobeのグローバル調査でも、日本は3割以上が電子サインの安全性に不安を抱いているという結果が出ています。押印業務を含めた手続き関連作業のデジタル化の遅れは、国際競争力の低下につながると、政府にとって懸念事項でした」とアドビの岩松健史氏はいう。

コロナ禍に顕在化した
電子サイン導入メリット

しかし、コロナ禍が長期化し、押印業務がリモートワーク推進の阻害要因になっていることが可視化され、電子サインに注目が集まるようになった。ワークフローシステムやコミュニケーションにより自治体内の業務のデジタル化を行っている自治体でも、業務効率向上につながる押印プロセスの電子化への対応が求められている。

現場での需要の高まりを受けて、電子サインの利用を推進する施策の整備は急ピッチで進んだ。政府は2020年末から2021年はじめにかけて、「地方自治法施行規則」「契約事務取扱規則」を改正。関連する電子署名法や電子帳簿保存法の見直しを図り、クラウド型電子契約サービスを利用するための環境づくりが加速化している。

アドビが提供するのは、クラウド型電子サインの「Adobe Sign」だ。そこには文書ファイル形式「PDF」や「Adobe Acrobat/Reader」などデジタルドキュメント分野で開発してきた技術が活かされている。

図 Adobe Signによる申請・認可業務のデジタル化

行政DXを達成するためには、契約行為の一部分のデジタル化のみではなく、契約プロセス全体を考えた検討が必要だ。Adobeでは、他社アプリを利用している既存システムとのシームレスな連携も可能

出典:Adobe

 

「ユーザーが心配するのは、電子サインのあるドキュメントが正式文書として認められるのかということでしょう。その点では、Adobe Signの法的有効性は、実績もあり問題はないと考えられます」と岩松氏は話す。

山形 伊織 ダイワボウ情報システム

署名者認証については、署名プロセスを時系列に記録し、パスワードや電話認証などで本人がサインしたことを確認。文書内容に同意した旨を電子記録で残すことができる。また、誰がいつ署名し、閲覧し、送信したかといった履歴は一目瞭然だ。電子サインの暗号化、操作手順も記録される。本人性の確認、非改ざん性の証明を担保している。

また、証跡を保管する電子サインと、電子署名の2種類に対応。営業の契約書や請求書など汎用性の高い利用には電子サインを、より高い法的効力を求められる文書にはデジタル署名を選択するといった使い分けも可能だ。

電子サインを採用すると、書類は紙からPDF形式のファイルへと変わる。PDFの開発元であることもアドビの強みと言える。PDFはISO32000-1で標準化され、異なるデバイス、異なるOS・バージョンでも同じように表示できる。対応している言語は34を超え、世界中で年間80億件の契約処理に使用されており、米国の公的機関での導入実績も多い。契約書は、電子化されたものであっても10年以上保管し、必要があれば閲覧できなければならない。Adobe Signでは、環境や時間の経過に影響されない電子書類を作成でき、裁判の資料としても使用できる信頼性を担保している。なお日本におけるサービス提供では、国内のデータセンターですべてのデータと処理記録を管理している。

業務全般を最適化し
オンライン申請もスムーズに

岩松氏は「お客様からのご相談では、最終ドキュメントの送付や合意のみのデジタル化を検討する傾向がうかがえます。Adobe Signがめざすのは、一部の効率化ではなく、紙のプロセスをデジタル化し、業務全般を最適化することです」と指摘する。契約業務だけでなく、業務プロセス全体をデジタル化することで、DXの効果として期待される生産性向上、顧客満足度アップなどを達成できるのだ。Adobe SignはMicrosoft OfficeやTeams、Salesforceなどの外部システムとも組み合わせられる。様々な既存業務に電子ドキュメントを組み込める使い勝手のよさは大きな魅力といえる。

「自治体業務の中では、電子サインにより主に3つの場面でデジタル化が進むと予想されます。まず、調達・入札など企業との契約業務。認可を受けた業者がログインできる仕組みと連携することで、契約相手の身元照会などを安全に行えます。次に住民、企業からの申請業務。オンラインでも申請者の身元確認を徹底すること、セキュリティの確保、短期間に申請が集中した際の処理を検討する必要があります。3つめが認可や認定を行う業務。印鑑の代わりに行政の認証サーバが発行する電子証明書を活用することで証明ができます」。

例えば住民の「オンライン申請」に利用する場合は、Adobe Signの標準機能でシステム構築できるため、コストを削減しつつ迅速に立ち上げできる。給付金や助成金のように申請が急増する際も、セキュリティやシステム負荷はクラウド上で管理できるので安心だ。PDFによる既存の申請フォームをAdobe Signに転送し、署名欄や入力欄を設定した入力フォームをウェブ公開する仕組み。入力が完了した申請者にはメール通知が届く。

民間からの認可申請では、認可した自治体担当者が認定ドキュメントを返信する際に、GPKIやLGPKIで電子署名を行い、申請企業へ送付する流れを自動化する。

ダイワボウ情報のネットワーク
きめ細かい支援で導入が可能に

アドビでは、認定パートナーとともに、システムの開発、構築から業務コンサルティングまでの導入・利用支援を実施してきた。ダイワボウ情報システムは、20年以上にわたりアドビと協力してきた販売代理店だ。ICT普及に欠かせない機器や情報サービスを提供するマルチベンダーである。同社の山形伊織氏は「全国93拠点でエンドユーザーをフォローする『顔の見えるディストリビューター』がモットーです。地域密着の営業体制には自信があります」と胸を張る。販売促進活動として、2021年は国内外のITベンダーが集結する総合イベントや、電子契約についてのセミナーも開催。アドビ、販売店との三位一体で自治体DX推進に寄与している。

 

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