第4回 脱炭素とサーキュラーエコノミー、PaaS化する製造業

環境領域の研究・政策提言を行う地球環境戦略研究機関(IGES)のメンバーとともに脱炭素時代の事業環境を考える本連載。脱炭素社会の生産・消費のあり方として存在感を増す「循環経済」の実現には、製造やサービス提供のあり方とともに、パートナーシップ構築が必要だ。

粟生木 千佳 地球環境戦略研究機関〔IGES〕

循環経済でPaaS化する製造業

――循環経済(サーキュラーエコノミー)の定義を教えてください。

定まった定義はないのですが、英国のエレン・マッカーサー財団によるバタフライ図が用いられることが多いです(https://ellenmacarthurfoundation.org/circular-economy-diagramを参照)。「リサイクルだけでなく、ライフサイクルのあらゆる段階で循環を促す」とされており、製品デザインの段階で資源の循環を想定し、使用後には修理・メンテナンスにより製品の長寿命化を図ることも含めて、資源の消費を抑えること、すなわち、製品の製造から使用後までのすべての段階で資源の消費と廃棄物の発生を最小化するあり方が循環経済といえます。国際資源パネルは、天然資源の採掘・加工という生産のプロセスだけで温暖化ガス排出の要因の5割を占めていると試算しています。つまり、私たちの生産と消費のあり方を変えることも脱炭素の実現に必要で、循環経済はそのための一手段であるといえます。

企業の取り組みでよく名前が挙がるのは、欧州ではドイツのBASFです。プラスチック循環の観点から新製品・サービスを開発しています。また、循環経済によってプロダクト・アズ・ア・サービス(PaaS)への転換もみられます。例えば電機メーカーのフィリップスから派生したオランダのシグニファイは、「照明器具の販売」から「電気をつけるサービス」を提供するビジネスを、フランスのタイヤメーカー・ミシュランもタイヤの走行距離に基づいて支払いを行うビジネスを展開しています。

また最近は、プラスチックをはじめとして、日本企業の積極的な動きが出てきました。循環経済パートナーシップ(J4CE)のウェブサイトでは、各種取り組み事例を見ることができます。

3つの視点:リサイクル・修理・
耐久性

――循環経済の取り組みは欧州が先行しています。どんな動きがありますか。

EUの「エコデザイン指令」という法律では、企業は一定の省エネルギー基準を達成しなければEUでの製品販売ができません。現在、その要件に「リサイクル可能性」「修理可能性」「耐久性」という観点を盛り込む議論が進められています。

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