高知県の施設園芸DX クラウドでのデータ共有で地域農業活性化

高知県が現在推進している、「Next次世代型施設園芸農業プロジェクト」。施設園芸農業DXにより、農家所得の向上や産地のブランド化につなげることを目的にした産学官連携の取り組みだ。関連データを一元管理する基盤をいかに構築し、どのように運用しているのか、同プロジェクトの担当者に聞いた。

カリスマ農家の個人データを
地域農業の質の向上に活かす

単位面積当たりの農業産出額で日本一を誇る高知県。それを牽引するのが、ビニールハウスなどを利用して園芸作物を栽培する施設園芸だ。高知県は2014年頃からオランダの最先端技術と関連機器、IoT・AI技術を採り入れた営農支援に力を注いできた。

「土地利用型の重量野菜(キャベツ、人参、白菜など)に比べ、栽培管理の手間はかかるけれども単価の高い、ピーマン、ミョウガ、シシトウ、ナスといった野菜が高知県の特産品です。県の農業出荷額(2020年)約1100億円の8割を園芸品目が占めます」と、高知県農業振興部農業イノベーション推進課の松木尚志氏は説明する。

(左より)株式会社高知電子計算センター 情報事業本部ネットワークシステム部 UL技師 前田 恭兵氏、高知県農業振興部農業イノベーション推進課IoP推進室 主幹 松木 尚志氏、プロンプト・K株式会社 最高技術責任者 天辰 健一氏

こうした強みを活かすべく、2018年度の内閣府交付金をもって開始したのが、産学官連携プロジェクト「IoP(Internet of Plants)が導く『Next次世代型施設園芸農業』への進化」だ。構想段階から農家と大学担当者にヒアリングを重ねていくと、他県に比べて営農環境を測定する機器の設置が進んでいるにも関わらず、集めたデータの活用が進んでいないという実態が明らかに。例えば、高収量を実現したカリスマ農家のローカルデータがあっても、それが共有されないままでは、他の農家や新規就農者の指導に役立てることはできず、宝の持ち腐れだ。

「クラウドでこれらのデータを一元管理し、農家や指導員で共有したいと考えました。さらに、大学での研究やメーカーの機器開発にも活かせればと、2020年度にクラウド構築の公募をかけたのです。クラウド自体は同年9月頃に準備できましたが、サービスインまでが大変でした。というのも、個人情報取扱いに関わるルールが、農家は個人情報保護法、大学は独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律、県は個人情報保護条例とバラバラだったからです」(松木氏)

図 IoPクラウドのデータ活用の仕組み

出典:高知県

ハウス内環境データとの相性の
良さなどから、AWSを選択

公募を経て、県内外の4社から成るジョイントベンチャーが、IoPクラウドの構築・運用保守等委託事業を受託した。また、IoTコンサルなどを手掛けるプロンプト・K株式会社が、4社と連携しながらRFPの詳細な仕様を固め、全体をマネジメントする役割を担った。

「展開するサービス範囲の広さや、カスタマイズ性の高さとそれに呼応する重量課金制の料金体系、カメラを含むIoTデバイスのみならず、気象や出荷量などの多様なシステムが持つ多彩なデータを安定的に集約できるプラットフォームとして、クラウドはAWSを第一候補としました。事前検証では、インフラ系サービスの手軽さや、大学研究室が使用する学術情報ネットワークとダイレクトコネクトできるといった使いやすさに圧倒されました」と、ジョイントベンチャーの1社である高知電子計算センター情報事業本部の前田恭兵氏は振り返る。

一方、プロンプト・Kの最高技術責任者である天辰健一氏は、弁護士との面談を重ねながら、IoPデータ利用のポリシーを策定した。

「まずは、県知事と個々の農家がデータ利用への同意を締結しました。その上で、第三者が案件ごとに県と契約し、集積されたビッグデータを指導・研究・開発に活用するスキームを規約に落とし込みました」(天辰氏)

高知から全国の自治体へ
拡がりつつあるIoP農業

「Next次世代型施設園芸プロジェクト」は昨年4月からの実証実験を経て、本年9月より本格稼働のフェーズに移った。

すでに環境測定装置1500戸(主要7品目全体で58.7%)が普及し、環境制御技術(データ農業)普及率は全国トップとなった。さらに、ハウス内環境データ273戸、生産履歴180戸のほか、病害虫、エネルギー、光合成・生物生育、労務管理まで、様々なデータが収集され、農家・指導員・JA・大学・企業などに共有されることで、県内全体の農業のレベルアップに活かされている。

図 IoPクラウドの生産者画面の例

ハウス内環境データのグラフ(左)や定点カメラ(右)により、設備の稼働状況や作物の生育状況などをスマホやPCからいつでも、どこからでも確認できる

出典:高知県

「多くのデータを必要としない農家には廉価版を準備するなど柔軟に対応し、2023年には県内農家のほぼ全数にあたる6000戸のデータ集約を目指します。施設園芸は稲作などに比べて収集できるデータ量が圧倒的に多く、スマート化の効果が見えやすい分野です。内閣府もデジタル田園都市国家構想はアプリケーションサービスから進めるよう謳っているので、IoP農業に取り組む動きは全国に拡がっていくのではないでしょうか」(天辰氏)

農業における生産性の向上は、高知県に限った課題ではない。クラウド運用開始以来、すでに15を超える他府県から問い合わせや視察申込みが舞い込み、システムの構築方法や委託業者の選び方などの基本的質問にとどまらず、個人情報の取り扱いや規約作成などにまで踏み込んだ相談も増えているという。

「農業DXというと、クラウドシステム自体にばかり皆さん目を向けがちです。しかし、最も重要なのは、『それを使って社会をどう良くしていきたいのか』。行政としてのその目的を明確にすることが、最初のステップとしては大事だと思います」(松木氏)

 

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