異動による業務の引き継ぎをDXで容易に 石狩市役所の業務マニュアル改革

春は異動の季節、自治体の担当者が毎回頭を悩ませるのが後任担当者への引き継ぎだ。石狩市ではスタディストのマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz(ティーチミー ビズ)」を活用。引き継ぎ事務を大幅に簡素化した。同市では今後庁内だけでなく住民サービスにも活用を広げていこうとしている。

スタディストは「伝えることを、もっと簡単に。」をミッションに、後述するマニュアル作成・共有システムや販促実行管理・支援システムの開発・販売を行っている。 「Teachme Biz」はビジュアルベースのマニュアルを簡単に作成でき、配信、運用、管理できるクラウドサービス。

ビジュアルベースで作りやすく、
人事異動時の引き継ぎの悩みを解消

「例えばPCの設定。パソコンの操作画面やキーボードの画像に矢印を付けたり、枠で囲んだりした上で文字を添えて説明できます。単に文字だけのマニュアルより容易に理解できるというだけでなく、クラウドで常に最新のマニュアルを共有できるのです」と、スタディストの小原義和氏はその特長を説明する。

小原 義和 スタディスト カスタマーサクセス部
リニューアルG アシスタントマネージャー

石狩市では、毎年4月に行われる100人規模の人事異動に伴う大量の引き継ぎ業務に頭を悩ませていたという。

400人弱の職員が働く石狩市では、異動の際の円滑な引継ぎが課題だった

「自治体における業務は、業務フローが明確に確立されている定型業務が多く、マニュアルの有用性が活かされる 環境のはず。しかし実際には作るのも更新するのも大変で、古いマニュアルが放置されたまま活用されずにいるのが実態ではないでしょうか」と、石狩市の菅原太樹氏は問いかける。

石狩市の菅原 太樹氏

この問題を解決するため、画像や動画を使用したわかりやすいマニュアルを整備すべく「Teachme Biz」の導入に踏み切ったという。菅原氏は導入後の改善点を3つ挙げた。

石狩市で、「Teachme Biz」を用いて作成したマニュアルの例

1つ目はリテラシーのレベルに関わらず誰が異動してきても対応できる環境になったこと。「従来は担当者によってフォーマットも粒度もレベルもバラバラなため理解に時間を要していましたが、統一されたフォーマットで1カ所に集中して管理されているので、理解しやすく探しやすくなりました。前任者への問い合わせが減り、引き継ぎコストも抑えられました」。

2つ目が、新任者が1~2週間で独り立ちし、異動後すぐに戦力化するようになったこと。「以前は戦力化するまで2、3カ月も要していました。導入後はマニュアルの精度が向上したことで、ルーティン業務については引き継ぎがすぐにできるようになり、新任者の仕事の立ち上げが大幅に早くなりました」。

そして、3つ目が、ナレッジを個人単位ではなく組織単位で蓄積することができ、業務を高度化できたこと。「内部でナレッジが途切れることなく共有できます。それをベースにやり方の改善、効率化が図られ、業務をレベルアップできるようになりました」と語る。

さまざまなマニュアルでの活用

菅原氏は、具体的な活用事例として5つを挙げた。

1つ目はリモートワーク対応マニュアル。「石狩市では個人の端末を使って利用の認証を行っているため、証明書のインストールなど初期設定が必要です。利用手順をわかりやすくまとめたことから、修正が生じた際にも最新のマニュアルが常に共有できるようになりました」。

2つ目は大規模な震災などの緊急事態に対応するためのBPO対応マニュアルを電子化したことでした。 「従来は電子ファイルで整備し、紙のマニュアルも印刷して補完していました。これでは緊急時に関係者全員に共有することが難しいのですが、現在はスマホやタブレットでいつでも、どこでも閲覧できるようになりました」と語る。

3つ目は庁舎内における業務システムの操作マニュアルの改善です。「コロナ禍でTeamsなどの新しいツールを導入する際には、職員が習熟するまで情報システム部門が問い合わせに追われることが多かったのです。マニュアルがわかりやすくなったことにより問い合わせが減り、コア業務へ注力できるようになりました」。

4つ目は人事部門任用の決議、辞令、給与に関するマニュアル。「たまにしか発生しない業務だからこそ忘れてしまう、『久しぶり業務』のマニュアル。検索できる形で迷わず正確にできるのがメリットです」。

最後は、投開票事務、ポスター開示などミスが許されない選挙事務関連のマニュアルです。 「他部門の人たちが応援に入ることの多い業務なので、すぐに内容を理解できる環境が整備できるメリットは大きいです」と述べた。

α版環境下でも
クラウドサービスを活用

実際に導入するに当たっての問題と、庁内で定着させるまでの工夫も菅原氏は紹介した。「ツール導入前の全庁ヒアリングではほとんどの職員がマニュアルは必要と答えるのですが、実際に作るとなると、時間がない、だれが作る?となってハードルが高くなります。仕事が楽になるという動機づけがないとなかなか定着しない。そこで、あえて便利と感じられバズりそうなマニュアルを戦略的に作ることでTeachme Bizを広めていきました」と秘策を明らかにする。その結果、これまでは異動の内示が出てから引継書、マニュアルを作り始めていたのが、現在は日常業務を回す中でマニュアルを整備するようになっているという。記載時の抜けや漏れがなくなり、異動の際の負担減につながった。

自治体でのクラウドサービスの利用には、自治体セキュリティポリシーによる制約がある。2020年末にポリシーが改定され、新しく提示されたβモデルでは自治体業務においてクラウドサービスの利用ができるようになった。これについては、「当市ではαモデルを利用していますが、クラウド接続用のプロキシを用意して、適切にセキュリティコントロールを行っています」と述べ、従来からのαモデルでもクラウドサービスが利用できる環境を整えている現状を説明した。

石狩市における今後の「Teachme Biz」の活用の展開について、菅原氏は「今まで以上に全庁的に利活用を進めていくとともに、内部で活用するだけでなく市民が行政サービスを利用する際に使うことのできるマニュアルを公開し、市民にとってもオンラインで各種手続きの操作が簡単にできるよう後押しをしていきたい」と展望を話した。

 

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