QUICK Data Cast データ活用で目指す県民生活向上 人に寄り添うデジタル活用が成功の秘訣

QUICKは、50年以上に渡って、金融・経済情報を証券会社、銀行、事業会社などに提供してきた。そのデータは、利用しやすい正確なデータとして定評がある。データを扱うエキスパートとして近年力を注いでいるのが、自治体における地域課題解決を目指したDX支援。石川県では、様々な取組が進められている。

馳 浩 石川県知事

石川県庁でデジタル化が
一気に加速

髙見 QUICKはもともと金融機関向けに株価などのデータをリアルタイムに提供する会社として設立されましたが、今はより広く、データで社会に貢献すること、データで社会を見える化することを目指しています。

髙見 信三 QUICK 代表取締役社長

馳 社会には、デジタルで時代を先取りしようという動きがすでにあります。経済界でもデジタルを通して、はるか先の技術革新やサービス、商品の開発を行っている。ところが、石川県庁では、「デジタルはよく分からない」という固定概念や、「この程度でいいか」とか「他の人に任せておけばいい」といったような消極的な姿勢があり、デジタル化が遅々として進まないという状況がありました。そんな中で私は、令和7年度までの3年間で県庁のデジタル化を成し遂げるという目標を掲げました。簡単ではありませんが、トップが言わなくては進まないと考え決断しました。

髙見 石川県のデジタル化推進でキーマンとなっているのが、経済産業省から出向されている西垣淳子氏ですね。2022年7月に副知事に就任後、EBPM(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング/証拠に基づく政策立案)を推進しておられます。馳知事は、先導役として、西垣副知事に大変な期待をされているとか。

馳 西垣副知事には、石川県庁にある既成概念を壊し、それをはるかに超えていく発想力と行動力を期待しています。西垣副知事は、石川県のデジタル化のためにひと肌もふた肌も脱いで、石川県だけでなく隣接する自治体や霞が関さえも走り回ってくれていますよ。

髙見 西垣副知事の旗振りで、石川県庁にはビジネスチャットツールも導入されたそうですね。デジタル化で、空間を超えた情報共有がしやすくなり、一方通行ではなく双方向のやりとりができるようになり、認識のすり合わせもしやすくなる。デジタルは目に見えないから一見分かりにくいですが、人間に寄り添うものだと私は思います。そういう使い方をされているから、石川県ではデジタル化の成果も出始めていらっしゃいますよね。

馳 ビジネスチャットツール導入以降、まずは紙ベースのやり取りが圧倒的に減りました。4月から半年、昨年の同時期と比較して紙の使用が3割減少しました。ビジネスチャットツールは365日24時間やり取りが可能。私は知事として危機管理もあるため、いつでも情報が入ってこないと困りますが、職員に関しては使用時間等のルールを作り、働き方改革にも配慮した上で情報共有ができるようになったと考えています。

それだけではなく、ビジネスチャットツールでは、意思決定の過程を複線化できます。部下から上司、副知事、知事へとピラミッド型に単線でやっていく議論の仕方を否定はしませんが、職員が直接幹部職員に対してフラットに情報を伝え、それを全員で共有できれば、議論の幅が広がります。それを、職員の皆さんは出張先や在宅勤務の時も行える。最終決定は私や副知事が行いますが、そこまでのラインが複線化していることで、私自身、多様にイメージを膨らませることができるようになり、良かったと思っています。

また、県内の市町の首長との会議等も、原則オンラインになりました。石川県の市や町のすべてにデジタルに精通した人がいるわけではありませんから、市町に対しては、県庁職員が市町のコンサルティング的役割を担い、システムや広域データ連携基盤の構築を行っていくことが必要だと考えています。

AIが自動生成する情報を発信
石川の魅力を伝える「デジヒロシ」

髙見 QUICKで開発した生成AIを利用した新サービス「QUICK Smart Brain」を使い、石川県で「デジヒロシ」の利用が始まりました。馳知事の画像を広報キャラクターに使って、石川県のプレスリリース、文化・スポーツイベント、観光関連情報などからAIが生成した動画を毎日発信する、石川県が日本で初めて導入した新しい広報ツールです。実は、今日乗ったタクシーの運転手さんが、「デジヒロシ」を使っていると話していました。タクシー運転手にとっては、お客さんを効率よく拾うためにイベント情報が大事で、それに「デジヒロシ」が有効だそうです。

 

「デジヒロシ」(上)と、人流データの表示画面(下)。温泉地や景勝地、各道の駅で人流の増減する時期の違いが分かる

馳 「デジヒロシ」によく似た役割として地元紙があります。今、石川県で何が起こっているのか、今日、何が行われるのかというニュースを分かりやすく伝えるという点で、この2者は同じです。伝える相手が、地元紙は読者、「デジヒロシ」は石川県民だけでなく世界中の人々を対象にできるところは違います。ただ、「デジヒロシ」は、石川県の出来事をより深堀りした思索や思想、そういったものを伝える面では地元紙にはかないません。

では、「デジヒロシ」には何ができるか。「デジヒロシ」は、石川県の魅力を発信し続けて、そのデータはアーカイブにもなります。私は、デジタルは新しい文化や価値観を生み出していくものだと思います。例えばチームラボのように、デジタルを使い伝統文化を巻き込み新しいものを創造していくことができると考えています。石川県民や県庁職員の行動変容も、そうやって促されていくと思います。

デジタルは、人に寄り添う
行政サービスを実現するツール

髙見 10月3日には能登で、西垣副知事が石川県の観光DXについて記者発表をされました。取組の中にあるのがQUICK Data Castを活用した「観光デジタルマーケティングプラットフォーム(観光DMP)」。観光関連の企業や団体が利用でき、非常に有効だと思います。

知事室の大型モニターでも、QUICK Data Castのリアルタイムデータが確認できる

馳 観光DMPは、西垣副知事が最高デジタル責任者として進める施策「3本の矢」のうちの第1の矢です。人流やSNSの投稿などから得られる観光に関わる様々なデータを把握できるプラットフォームです。そのデータから、どこにどれくらいの人がいて、その人たちの属性がどうなっていて、どこへ移動したのかが分かります。

データは蓄積されていくので、リアルタイムの情報としてだけでなく、次回のイベントにおける人の分散化計画に使ったり、観光地の流行を把握して今後のPRに活用することも可能です。こういったデータの集積と活用が重要だと思います。

髙見 第2の矢が、これまで埋もれていた様々な観光データや観光客の意見をオープンデータ化し無料で共有できる「Milli(ミリー)」の立ち上げ。そして第3の矢が、「いしかわ観光データ会議」ですね。QUICKではこちらのサポートもさせていただいています。

馳 「いしかわ観光データ会議」は、石川県観光DMP事業において、石川県と市町の観光関連職員と各観光協会が毎週会議を開催し、観光データを見ながらディスカッションする取組です。職員や観光協会が持つ「デジタルツールやデータの活用法が分からない」「他の市町の最近の動向を共有したい」などという、県全体の課題を解決するために毎週集まって話し合う「講」の機会。観光データを普段の業務でより効率的に活用することを促すための会議です。

DMPは観光関連ですが、DXで県民の生活も向上させることが可能です。例えば、公共サービスのひとつであるバスや電車は、ダイヤが決められていて、乗客がそれに合わせなければいけません。しかしできることなら、使いたい人が使いたい時に使えるサービスのほうがいいですよね。今、ある状況で何かを必要としている人を、サービスを提供する側の都合に合わせるのではなく、サービスをその人の都合に合わせる。例えば過疎化地域におけるドローンを活用した拠点配送型のサービスの提供や、小松駅から小松空港までの自動運転サービスも、ある程度の需要のボリュームがあれば提供できる可能性があります。

さまざまなIoTセンサのデータを分析すれば、リアルタイムで何がどこで起こっているのかが分かるような社会になります。例えば、現在、石川県で進めている広域データ連携基盤には電子地図機能を搭載することとしており、浸水、雪害、雪崩や土砂崩れの可能性があるエリアや、通行止めなどを表示することも可能となります。また、平時においても、電力のスマートメーターから電力消費のデータを行政が分析することで、空き家を特定する手間が減ったり、家人の見守りにつながる行政サービスができるようにもなります。デジタルによって公共サービスが、県民の安全・安心な生活を支える、より良いものになっていくと考えています。

髙見 馳知事は、デジタルによる情報通信の整備は、公共事業と同じインフラ整備だとおっしゃいます。それがよく分かる事例ですね。

馳 人に寄り添う行政サービスを実現してくれるのがデジタルツールです。観光も災害対策も、情報を分析したうえで何が最適解なのかを見つける、見分ける、そこにデジタルの力を借りることには、大きな意味があると思います。

 

馳 浩(はせ・ひろし)
石川県知事

 

髙見 信三(たかみ・しんぞう)
QUICK代表取締役社長

 

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