編集部総論 競争で生き残るため イノベーションが不可欠な製造業
世界の工業生産は成長を続け、特にアジア太平洋地域はそのコアと言える。日本にとって重要な産業である製造業の成長を促すため、政府は企業経営の在り方の変革とデジタル化の推進が必要だと指摘。先端的な製造業各社では、自社技術という資源の活用と、社外との連携の取組が進んでいる。
世界の製造業は成長続ける
日本の競争力は相対的に低下
世界の製造業は活気にあふれ、成長の中にある。国連の工業開発機関(UNIDO)による世界工業生産報告書によると、2021年以降、世界の工業生産はおおむね右肩上がりで伸びている(図1)。四半期ごとの成長率は、将来のさらなる成長の加速を予感させるものだ。先進国を中心とする既に工業化された国々でも、工業化の途上にある国々でも、工業生産は2024年第2四半期には前四半期比で1%増加した。世界の製造業の成長をけん引しているのはハイテク製造業で、コンピュータや電子機器、自動車、製薬などの中~高度な技術が必要な製造業では、同四半期の成長率は1.6%に達した。
図1 世界の工業生産の成長
世界の工業生産は81億人超の人類の生存に欠かせない要素の1つ。コロナ後の回復から成長軌道に入っている
世界経済は、落ち着きつつあるとはいえ高水準のインフレ率や、不安定なエネルギー価格、止まらないサプライチェーンの混乱に地域紛争の影響など、さまざまな課題に直面している。それでも製造業の成長が止まらなかったのは、アジアとオセアニアが世界をけん引したためだと同報告書は分析している。前年比では、中国の製造業の生産は6.7%増加、アジアとオセアニアのその他の地域では2.5%増加した。2024年第2四半期に限れば、日本の製造業も2.7%の成長と、成長率だけ見れば中国・米国など主要な工業国よりも高くなっている。一方欧州では価格の高騰、消費者需要の低迷などの影響で、製造業の成長率は抑制された。
世界の製造業が成長する一方で、日本の製造業のプレゼンスは低下している。製造業の競争力を国ごとに分析した指標であるUNIDOの製造業競争力指数(CIP)を見ると、1990年に日本は世界ランキングで2位だったが、2022年には8位となっている(図2)。この間、日本の製造業が極端に弱体化したということはなく、30年余りの間に日本の1人当たり製造業付加価値や、1人当たりの製造品輸出額は増加している(図3a、図3b)。ただし、成長のスピードが他国に追いついていないことが、ランキング低下の原因といえる。
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