コミュニティバンクの理念を形に 信用金庫が地域交流拠点を整備

「コミュニティ」という概念が一般化されてない半世紀前に、「コミュニティ・バンク」という考えを提唱した京都信用金庫。その理念を可視化し、実装させるためにデザインしたのが2020年オープンの地域交流拠点「QUESTION」だ。榊田隆之理事長に同金庫の歴史から、開設に至るまでの話を聞いた。

(文・矢島進二 日本デザイン振興会 常務理事)

 

榊田 隆之(京都信用金庫理事長)

京都信用金庫は、地域の発展のために新しい時代のコミュニティ・バンクを実践することを標榜している。コミュニティという言葉が日常用語になったのは東日本大震災後のことと考えるが、同金庫は1971年に日本の金融機関として初めて「コミュニティ・バンク」を掲げ、その思想を提唱してきた稀有な存在である。

「50年前の高度成長期において、文化やコミュニティなどを前面に捉え、中央集権に対する『地域主権』という、自分たちがプライドを持って地域を発展させていくという自治の考えに基づいたことなのです」と榊田隆之理事長は語り始めた。

「建築家菊竹清訓氏の他、建築評論家川添登氏、社会学者加藤秀俊氏、デザイン事務所GKなど、当時のオピニオンリーダーを従えて、私の父親にあたる当時の理事長榊田喜四夫が書籍『コミュニティ・バンク論』にその思想をまとめました。信用金庫は地域を豊かにしていくために存在する。経済的な豊かさだけでなく、文化的、人的、心の豊かさを含むものまで責任を負うとの考えです。今読み返しても違和感がない、50年先を見据えた思想です。人と人が繋がり合うことで新しいものを生み出していくとか、コミュニティの一員という安心感が心の豊かさになるとか、コミュニティという概念は、経済成長が止まった日本で、当時以上に必要とされています。そして高度成長期の金融業は、お金を融通することで、企業や社会の成長を支えるのが主な役割でしたが、ここ20年間で急速にその役割が変わり、事業者や市民に寄り添い、各々の課題や問いに親身に向き合って解決する姿勢が、今の金融機関に求められています」

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