事業化困難だったレアメタルの「水平リサイクル」で社会変革
原子力分野で培われた技術を活用し、レアメタルを低コスト、高効率、かつ高純度に回収する水平リサイクル技術を確立したエマルションフローテクノロジーズ。NEDO主催の「ESG TECH BATTLE 2022」で最優秀賞を獲得するなど、注目を集めている。
レアメタルの水平リサイクル
SDGsの目標12は「つくる責任 つかう責任」だが、12.2には「天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する」というターゲットが掲げられている。天然資源というと水や土壌、森林などが思い浮かぶが、鉱物資源も天然資源のひとつである。
日本は鉱物資源に乏しい国であり、ベースメタルとレアメタルのいずれも、ほぼ全量を輸入に頼っている。政府は資源国との関係強化による海外資源確保やレアメタルの備蓄、領海・排他的経済水域における海洋鉱物資源の開発などに取り組んでいるが、合わせて、鉱物資源のリサイクルにも注力する必要がある。
こうした中で、「限りあるレアメタル資源を未来につなぐ」をビジョンに2021年に設立されたのがエマルションフローテクノロジーズだ。同社は日本原子力研究開発機構の研究者4名が立ち上げたディープテックスタートアップであり、独自のレアメタルリサイクル技術を保有している。
「レアメタルは、あらゆるものが電化される未来社会の実現に欠かすことのできない金属元素ですが、現在レアメタルは供給不足の危機に陥っています」と代表取締役社長CEOの鈴木裕士氏。そもそもレアメタルは地政学的な問題を数多く含んでいる。2004年には、新興工業国の経済発展による金属消費量の拡大とそれに伴う供給不足でレアメタル危機が発生。2010年には、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に伴い、中国によるレアアースの輸出制限が行われた。そして足元ではロシアのウクライナ侵攻に起因したレアメタルの供給不安が世界中を戦々恐々とさせている。「こうしたレアメタルショックは約10年に1度の周期でやって来ています。危機に負けないための我が国のサプライチェーンの強化が強く求められています」
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