飲食店を先払いで応援 音楽家が構想した与え合う時代のビジネス

飲食店を先払いで応援するサービス「さきめし」は、音楽家が構想した"与え合う時代"の先駆けと言える事業であり、2020年度グッドデザイン賞でグッドフォカース賞を受賞した。先行サービスの「ごちめし」と共に、構想の経緯と展望をGigiの今井了介代表取締役に聞いた。

文・矢島進二 日本デザイン振興会 理事

 

今井 了介 Gigi代表取締役

今井了介氏は作詞や作曲、プロデューサーとして有名な音楽家だ。25年間で、多くのアーティストに曲を提供。代表作には、リオデジャネイロオリンピックNHK公式テーマソングとなった安室奈美恵「Hero」、ラグビーワールドカップのテーマソングLittle Glee Monster「ECHO」などがある。音楽会社も経営し、都内各地や海外にスタジオを持つ。

「両親ともクラシックの音楽家で、1995年頃から自分の"時代感"の価値を信じて音楽をつくり始めました。音楽は、空気の振動だけで人が泣いたり踊ったり笑ったりできる、目に見えない至高の芸術であり、人に寄り添い彩ることができるという価値を持っていると思います」と今井氏。

音楽活動に取り組む一方で、サービスデザインなど"目に見えないもの"に価値を与えることにもずっと興味を持っていたという。その思いを具現化したものが2019年にスタートした「ごちめし」だ。

サービス立案の契機は東日本大震災だった。「音楽で被災地の方々を元気づけられたらと考えましたが、被災地では温かな食べ物やお風呂などの衣食住が第一で、それらが足りて初めてエンターテインメントが求められるのだと痛感させられました。困っている人をダイレクトに支援できる、音楽業界のような"お金を分配するプラットフォーム"をつくることが、自分のやるべきことではないかとずっと考えていました」

2018年初頭に今井氏は、北海道帯広の定食屋「結」が、誰かが先払いして他の人が無料で食事ができるサービスを提供していることをSNS上で偶然目にする。名称は「ゴチメシ」。地元の食材を若い世代に口にしてもらうきっかけづくりが目的だった。結の店主は、イタリアの「Suspended Coffee(保留コーヒー)」という客が飲まない分も一緒に前払いしたり、釣り銭を受け取らず、たまったお金でホームレスに温かいコーヒーをサービスする仕組みをヒントにしたという。

2019年に開始した「ごちめし」は、電子チケットを通じて他人に食事をごちそうできるサービス

今井氏は、「これだ!」と直感、オンラインサービス化することを思いつき、許諾を求めに帯広に飛び直談判。店主にも株主の一人になってもらい、2018年9月に運営会社のGigi(ジジ)を法人化、2019年10月31日にスマホアプリ「ごちめし」のサービスを開始する。

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