世界の才能と地域の課題をつなぐ構想力 モンスターラボ・鮄川宏樹社長が描くAI時代の共創経営
世界12の国と地域に拠点を展開し、グローバルな視点で企業のデジタル変革を支援するモンスターラボが、2026年に創業20周年を迎えた。「多様性を活かす(個人をエンパワーする)」という理念を軸に、テクノロジーで企業や社会課題の解決に挑む。アジアの優秀な人材を活用しながら、地方創生にも積極的に取り組んでいる。2025年12月には新たなブランドメッセージ「AI & Digital Partners, Unlocking Human Potential」を策定し、AI時代の変革パートナーとしての姿勢を鮮明にした。
同社代表取締役社長の鮄川宏樹氏に、多様性を力に変える経営哲学と、AI時代における共創の未来構想を聞いた。
祖業がうまくいかず、事業転換
――2006年の創業時、なぜ音楽配信事業を選ばれたのでしょうか。
当時はまだスマートフォンもない時代でしたが、インターネットには大きな可能性を感じていました。私自身音楽が好きだったこともあり、マスメディアでは紹介されない多様なジャンルの音楽を、響く人に届けられる仕組みを作りたいと考えたんです。
――社名「モンスターラボ」にはどのような想いが込められているのですか。
フランス語で「私の」を意味する「Mon」に、英語の「Star」を組み合わせた造語で、誰もが誰かのスターになり得るという想いを込めました。根本にあるのは、個人が持つ可能性や才能を解き放ち、多様性を活かす社会を実現したいという理念です。この想いは今も変わりません。自分たちが社会・世界に大きなインパクトを出す存在でありたいという意味も込めています。
――音楽配信から現在の事業への転換はどのように進んだのでしょうか。
正直、音楽配信事業は当初ビジネスとしてはうまくいきませんでした。パソコンで音楽をダウンロードする習慣がまだなかったし、新しい文化を創れず力不足でした。試行錯誤の上、店舗向けのBGM配信に転換し、ようやく軌道に乗りました。一方で、会社を存続させるために技術力を活かした受託開発も始めました。エンジニアが多い会社だったので、この強みを活かしたんです。実は、この受託開発で培った経験が、後のグローバル展開・今のデジタルコンサルティング事業の礎になりました。
部門を超えたつながりを醸成し、イノベーションに挑む
――2014年から始めたグローバルソーシング事業の発想はどこから生まれたのですか。
日本ではエンジニア不足が深刻化する一方、アジア新興国には優秀な若者がたくさんいるのに仕事の機会が限られている。この両者をつなぐことで、創業時の「個人をエンパワーする」という理念を実現できると考えました。特性が異なる国や地域のチームを繋げ、世界中の人材を活用してDXを推進する新しいモデルです。例えば、バングラデシュは人口約1億7000万人で、勤勉で親日的。優秀なエンジニアが皆、高い英語力を持っています。
――AI時代において、組織や働き方はどう変化していますか。
AIの活用は大きく2つの側面があります。一つは顧客のプロダクトや、業務にAIを組み込むこと。AIソリューションの提供やAIエージェント開発などが該当します。もう一つは、AIを使って開発プロセス自体を革新することです。あらゆるプロセスでAIを活用して生産性を上げるのはもちろんですし、例えば、レガシーシステムの複雑化や老朽化によって起こる様々な問題も、AIを使えば新しいアプローチが可能になります。ただ、重要なのはAIによって人間の創造性がより発揮できるようになることです。定型的な業務はAIに任せ、人は構想力や創造力を活かす。そういう組織を顧客に対しても自社としても目指しています。
――エンジニアの創造性を引き出す秘訣は何でしょうか。
当社ではエンジニアもビジネスディスカッションに参加し、デザイナーもテクノロジーを一定レベルでは理解していたりと複合的なケイパビリティを醸成しようとしています。ビジネス、デザイン、テクノロジー、データという複数の領域のメンバーが早い段階から一緒にお客様の課題を考える。すると、エンジニアから革新的なアイデアが出てくることも多いんです。ビジネスだけでなく、デザインやテクノロジーで何ができるか理解しているからこそ、イノベーティブな発想が可能になると感じています。
島根県発信、世界へ広げる地域構想
――出雲市CDO補佐官に就任された背景をお聞かせください。
私の出身地ということもありますが、地方の課題は日本の課題であり、将来の世界の課題でもあると考えています。島根県は人口減少や高齢化が特に進行した「課題先進地域」。ここでの解決策は、必ず他の地域でも応用できる知見になります。
――グローバルとローカルをどのように融合させているのですか。
出雲市では海外(東欧)のエンジニア人材を誘致し、地域のDXを推進しています。人口減少に直面する日本で、海外の人材を活用することで企業誘致も進み、地域のDXも進む。そういう好循環を生み出そうとしています。グローバルとローカルは対立するものではなく、融合させることで新たな価値が生まれるんです。
――今後のビジョンについてお聞かせください。
モンスターラボは先日、創業20周年を迎えました。これに先立ち、新たなブランドメッセージ「AI & Digital Partners, Unlocking Human Potential」を策定しています。
いま、時代は大きな転換点を迎え、人間とは何か、何を担うべきかを問い直す時代に入っています。だからこそ「個人をエンパワーする」という理念を、AI時代の文脈で改めて実現することを目指しています。
このメッセージには、2つの想いが込められています。ひとつは、AIとデジタルを組み合わせることで顧客の事業変革や新たな価値創出に伴走するパートナーであること。もうひとつは、テクノロジーによって、人間がこれまで担ってきたオペレーションから解放され、創造力や挑戦する意志によって新たな価値を生み出すことです。
事業においては、AIを顧客のビジネスに導入するだけでなく、開発プロセスにおけるすべてのフェーズにAIを活用することで、AI時代の企業変革のリーディングカンパニーになることを目指しています。
さらにその先には、グローバルなチームでテクノロジーを活用し、内部から新たな事業を次々と生み出していく「事業開発カンパニー」へと進化していきたいと考えています。
これからも、日本にとどまらず、アジア新興国やグローバル市場においても、現地の才能と共に新しい価値を創出していきます。
鰆川 宏樹
代表取締役社長・CEO
コンサルティングファーム、テクノロジーベンチャーなどを経て、2006年に「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」というミッションを掲げモンスターラボグループを創業。世界12の国と地域でデジタルコンサルティング事業、プロダクト事業を展開しながら、バングラデッシュのストリートチルドレンへのIT支援やパレスチナ・ガザ地区での雇用創出など、事業を通じた社会貢献にも意欲的に取り組む。また、2021年より地元である島根県出雲市のCDO補佐官を務める。

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