2019年4月号

環境会議

SDGsから考える活力ある地域づくりとパートナーシップ

環境省、国連大学サステイナビリティ高等研究所

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1月18日、国連大学エリザベス・ローズ国際会議場でシンポジウムが開催。地域に関わるステークホルダーの目線でSDGsを捉え、その達成と地域課題の解決を目指したパートナーシップにつき議論を深める目的がある。

SDGsとSociety5.0に連動
地域循環共生圏

冒頭に環境省総合環境政策統括官・中井徳太郎氏が挨拶。2018年4月に閣議決定した第五次環境基本計画で、パリ協定と国連「持続可能な開発目標(SDGs)」に連動する今後の目指すべき社会像として、「地域循環共生圏」を掲げた。各地域が、美しい自然景観や再生可能エネルギーなどの地域資源を生かし、自立・分散型の社会を形成すると同時に、地域間でネットワークし、補完し、支え合うという考え方だ。デジタル革新の次なる変革を受けた超スマート社会「Society 5.0」にも通じる。

続いて登壇した国連大学サステイナビリティ高等研究所所長・竹本和彦氏は、2018年のハイレベル政治フォーラムで「地域・地方政府フォーラム」が開催された例を引きつつ、「地域が抱える主要課題とつながり、地域の課題解決に活用できる目標」としてのSDGsの意義を強調。国連大学でも、タイ・バンコクにある国連のESCAPと連携し、昨年作成したSDGs実施に向けてのマルチ・ステークホルダー・パートナーシップの構築ガイドラインで加盟国を支援し、環境省との「地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)」の運営に尽力している。こうした流れを踏まえ、竹本氏は、2030年の目標達成に向け、政府や自治体、企業などの緊密なパートナーシップの重要性を強調した。

 

 

第五次環境基本計画の特質

基調講演に登壇した武内和彦氏は、第五次環境基本計画の意義を、「プラネタリー・バウンダリー」とSDGsを初めて採り入れた点に見出す。環境のみならず、社会と経済の統合的向上を目指すSDGsの組み入れで、本質的に「サステイナビリティ基本計画」と呼ぶべき統合性を備えたと指摘する。しばしばなされがちな17の個別目標に対する当てはめでなく、全ての項目にSDG17「パートナーシップ」を視野に入れ、相反する要素(トレードオフ)を相乗効果(シナジー)に変えていく必要がある。

また「プラネタリー・バウンダリー」を念頭に置き、いかに私たちは環境の制約を認識しながらも、経済と社会を発展させるのか、が重要になる。気候変動・生物多様性・富栄養化といった諸課題を科学的に解決・緩和し、地球の持続可能性を考える必要があるという。

またパリ協定をはじめ国連の諸条約は、数量的な評価を定期的に行い、現在の削減目標との乖離状況をどう埋めるかを2年に一度の締約国会議で議論する。過去にも日本は名古屋議定書(2010年採択)や愛知目標(2020年までに達成)の取り決めで貢献してきた。今後SDGsの趣旨も入れて発展させることが、ポスト愛知目標につながる。

ハイレベル政治フォーラムでは毎年、主要課題とする目標を軸に議論されるが、物理的な目標が中心となった昨年に対し、今年は人間が中心となる。ここでも日本が予て提唱してきた「人間の安全保障」との連動が期待される。

地域循環共生圏とは、脱炭素社会の構築と資源循環の最適化を目指す「地域循環圏」と、生物多様性を担保する「自然共生圏」を重層的に実現する統合的なアプローチと言える。今後、IGES(公益財団法人地球環境戦略研究機関)で東南アジアなどを拠点にその国際発信をも図っていくという。

武内 和彦氏(東京大学サステイナビリティ学連携研究機構 機構長・特任教授)

自治体のパートナーシップ

SDGs未来都市に選ばれた長野県で副知事を務める中島恵理氏は、5カ年計画「しあわせ信州創造プラン」を紹介。「学び」「経済循環」「健康長寿」「自然エネルギー」を軸に、地域から社会課題解決を図る行政スキームを構築している。また「未来都市」への選定を受けて、産官学連携の「地域SDGsコンソーシアム」を立ち上げ、県内中小企業によるSDGsへの取り組みを支える仕組みづくりを始めた。来年度からは経済産業省と連携し「地域SDGs推進企業応援制度」の導入を予定している。この制度は、SDGsの観点で社会・市場から求められる要件を一覧し、そのコミットメントと達成を明示していくものである。中島氏によると、登録企業の取り組みが、金融機関や取引先に広がることでESG投資を促すなど、波及的効果を狙っており「このような制度がいずれ全国にも広がるとよい」と期待を寄せる。また2013年に策定した「長野県環境エネルギー戦略」では、省エネ・断熱型の建築物で熱中症予防や地域の工務店の活性化につなげ、ソーラーマッピングやバイオエコノミーも推進する考えだ。

次に鈴木康友氏(浜松市長)が取り組みを紹介。浜松市は2005年、平成の大合併が行われたこの年に、天竜川以西の県西部12市町村が合併し、非常に大きな市となった。市域面積の約半分が過疎指定を受けている。この意味で、あらゆる自然資源が凝縮された「国土縮図型都市」(豊橋技術科学大学学長の大西隆氏)と言える。

鈴木氏が市長に就任した当時は、中山間地域の森林再生が課題だった。持続可能な森林・林業経営を実現すべくドイツに拠点のある国際基準・FSC(森林管理協議会)認証を取得した。結果、2018年度時点での認証林面積は全国第1位(4万5000ヘクタール)に及び、民有林の約五割を占めるに到った。また地産地消を進める「FSC・CLT利活用推進協議会」を発足させ神奈川県川崎市や東京都港区などと提携を進めている。

また1990年の出入国管理法改正以来、地域の基幹産業である自動車製造に従事する労働者としてブラジル人をはじめ多数の外国人を受け入れ、「多文化共生」を推進してきた。SDGsを貫く「誰一人取り残さない」に照らし、外国人家庭の不就学状態をゼロにすることを達成し、犯罪発生率も全国の政令市内で最下位に位置している。

そして2011年東日本大震災の発生以後、「新エネルギー推進事業本部」を立ち上げ再生可能エネルギーへの転換を促すと共に、「スマートシティ推進協議会」を発足させて市内外140企業の参加を仰ぎ、取り組みを進めている。

中島 恵理氏(長野県 副知事)

鈴木 康友氏(浜松市長)

企業の積極的な実践

来ハトメ工業株式会社は埼玉県八潮市に所在し、アルミ電解コンデンサーをはじめとする電子部品を製造する金属プレス加工企業である。SDGsとの出会いは、2017年2月の環境コミュニケーション大賞の表彰式まで遡るという。石原隆雅氏は、同社で取り組みの契機とした4つのスローガンを紹介した。

第1に「『背伸び』してみませんか?」。「中小企業だから」と尻込みせず、各種表彰制度やセミナーへ積極的参加を通じてハイレベルな知識に触れ、成長のチャンスを探る。第2に「急がば、回れ!!」。ゴールやターゲットへ直ちに飛び付かず、現状を分析し、自社の風土、社風に合った取り組みを考えてみる。来ハトメ工業の場合、2010年9月に、エコアクション21の認証を取得して以来8年にわたる環境活動の積み重ねがあったため、これを基に構想を練り上げた。

第3に「まずは、体感!!」、各社員に「私のSDGs」として活動と各ゴールを紐付け、まず自分個人で行動し、達成への成功(失敗)体験を得る。

これらの積み重ねを基に「『見える、見せる』SDGs!!」として、社内外への発信を強化する。同社では特に社内向け広報として、従業員向けの月刊情報誌『まいにちSDGs』を発行。また毎年の「環境活動レポート」もSDGs対応版に刷新し、項目ごとに達成度を採点する指標を設けた。「2017年の当時はまだSDGs達成へ本格的に取り組んでいる中小企業はほとんどなかったように思います。発想を転換すれば『今始めることでパイオニアになることができ、自社の成長のチャンスも掴めるのではないか』と社内で検討し、今まで取り組んできました。私の報告をきっかけに是非多くの中小企業がSDGsへ取り組んでいただきたいと願っています」(石原氏)。

石原 隆雅氏(来ハトメ工業株式会社 管理責任者)

SDGsによる『新しい協働』と
地域の成長を考える

後半のパネルディスカッションでは更に2人の有識者を交え討論が行われた。冒頭にモデレータの河口真理子氏が問題提起。SDGsはとかくゴールとの紐付けに終わったり、他社事例を聞いて形だけを真似たりする方向に走りがちだ。自社の経営課題とし使いこなす知恵を得ることが重要である、という。

髙橋一朗氏によると、西武信用金庫では、地域活性化をミッションとする金融機関であると同時に、まちづくり支援を担うようなNPOやソーシャルビジネスなどの新しい主体にも支援を提供している。過去16年余で350を超すNPOに、約50億円の融資を行い、「まちづくり助成金」制度も設けている。

また日本学術会議の幹事も務める大山耕輔氏は、行政学で言う「参加のはしご」の観点から、参加主体としての「市民」の多様性を指摘。全数調査によるアンケートでもステークホルダーが多過ぎると利害調整が難しくなる事実から、専門家や行政がSDGsや生物多様性といった長期公益的なアイデアを共有して、目標の共通化を図りパートナーシップを深める重要性を示した。

質疑応答では、地域循環共生圏におけるデカップリングの契機のほか、組織変革のための目標付け、そして個人にとってのSDGsの捉え方など、目標の本質を捉え行動に移していくための具体的な示唆について議論が交わされた。

河口 真理子氏(大和総研 調査本部 研究主幹)

髙橋 一朗氏(西武信用金庫 常務理事)

大山 耕輔氏(慶應義塾大学 法学部 教授、日本学術会議 幹事)

『環境会議2019年春号』

『環境会議』は「環境知性を暮らしと仕事に生かす」を理念とし、社会の課題に対して幅広く問題意識を持つ人々と共に未来を考える雑誌です。
特集1 循環経済と脱炭素社会の構想
特集2 環境と生命のデザイン

(発売日:3月5日)

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