エコポリシーで貢献循環経済と脱炭素社会

カルネコは販促物を「いるとき」「いる量」「好きな場所」へ届ける実需調達のプラットフォームで環境負荷を減らし、循環経済に貢献する実践を進めている。また、森林保全を推進するエコバリュー・インターチェンジ(EVI)や、事業で利用するエネルギーを再生可能エネルギー100%にする「RE100宣言」によって脱炭素社会に貢献していく。さらに昨年は「カルネコ・エコポリシー(環境方針)」の制定や「SDGs宣言」も行い、目標達成を目指す。

加藤 孝一(カルネコ 代表取締役社長)

 

 

EVIで日本の森を守り
温室効果ガスを削減

カルネコの基本的なビジネスモデルは、お客様がお買い物をされる際に、価格だけでなくメッセージを通じてお買い求めいただくためのプロモーションを実現するプラットフォームです。お買い物をする際、商品と価格しかなければ、買うか買わないかは価格によって決まります。

しかし、心に響くメッセージがあってお買い物をする時は、価格は二の次になります。例えば、「来週お花見に行こう」と思っている時に「お花見にいかが」と書かれた商品があれば、状況は変化します。そのようなプロモーションがもし可能になれば、小売りや卸売り、メーカーの方々が適切な利潤を得られ、お客様を含む4者に喜んでいただくことができます。

商品を購入する理由は、お客様一人一人によって異なりますから、私たちはそこを喚起するメッセージを作ります。それぞれのお店のお客様に合ったデザインの販促物を作り、発注をいただき、印刷、加工、梱包を行い、発注から5日目にお届けします。

その際、1点から受注生産を行うので、大量に作って余りや欠品が出ることはありません。必要な販促ツールを「いるとき」「いる量」「好きな場所」へお届けする実需調達のプラットフォームは、環境に負荷をかけない仕組みなのです。

カルネコのもう1つの大きな柱は、森林事業者と企業と消費者をカーボン・オフセットでつなぐ環境貢献プラットフォーム「EVI(Eco Value Interchange)」です。これは温室効果ガス削減に向けた国内クレジットの流通とカーボン・オフセットを活性化させ、日本の森林保全を推進する取り組みで、2011年にスタートしました。

このプラットフォームは現在、全国の94の森林と結びついています。植林や森林の間伐を行うと、単位面積当たりの二酸化炭素(CO2)吸収量は上昇します。その上昇分について「J-クレジット制度」の認証を受け、企業が事業活動で排出するCO2のカーボン・オフセットに利用できるようになります。

企業がそのクレジットを購入すると、その資金でさらに森林の手入れがなされ、地球温暖化の抑制につながります。94の森林は、全国の84%をカバーしています。これにより、自社の製品やサービスをご利用いただいているお客様の環境を守るというプロモーションを展開することができます。

カルネコSDGs宣言にあわせて制定されたロゴ

販促物の作り過ぎや
無駄をなくす

カルネコのクライアントの中には、新商品をリリースする際に地域限定でテスト販売し、全国展開するメーカー様もいます。

テストはまず狭いエリアで行い、消費者にご理解いただけると確認できたらエリアを広げる方針です。狭いエリアで販売し、お客様にメッセージを伝えていくような少量の調達場面では従来のロット型ではコスト面や使い切るという面でも見合いません。1枚からでも調達可能なカルネコがお役に立っています。

カルネコの実需調達のプラットフォームは、企業だけでなく自治体でも利用されています。愛知県豊田市はその例で、豊田市では「WE LOVE とよた」というメッセージを売り場で発信し、地元の産品を売る取り組みを進めています。

このような中、私たちは昨年、企業だけでなく社会の幅広い方々にカルネコのシステムを活用していただけるよう、WEB印刷サービスの「POP'n ねっと」を開始しました。この取り組みを通じて世の中の作り過ぎや無駄を減らし、CO2の排出削減にもつなげようとしています。

私たちの無駄を出さない環境にフィットしたビジネスモデルや、EVIによる全国の森林支援が評価され、カルネコは昨年12月、「第19回グリーン購入大賞」の優秀賞をいただきました。

POP'n ねっとの販売イメージ

脱炭素社会の実現に向けて
「RE100宣言」を実施

カルネコでは、販促物を作る際に排出されるCO2を森林のクレジット等を用いてオフセットし、お客様にお届けしてきました。クライアントには、オフセットしたCO2の量に関する証明書をお届けしており、クライアントはそのCO2削減量をCSR報告書に記載していただくことができます。

一方、環境省が主導してきたカーボン・オフセット推進の動きは近年、やや鈍くなっているように感じます。その背景には、まずはエネルギー、素材等の実質的なCO2削減を進めようとの考えがあります。その背景には、どこかで既に減らしたものをクレジットとして買うことが、総和として本当にCO2削減になるのかという考えがあります。

気候変動対策の世界的な取り組みである「パリ協定」では、産業革命前からの平均気温上昇を2℃より十分下に保ち、1・5℃に抑える努力をするとしています。この目標達成に向けては、従来のカーボン・オフセットの取り組みだけでなく、エネルギーを再生可能エネルギー100%にし、実質的にCO2排出量をゼロにしていく必要があります。

そこでカルネコは昨年、自社のオフィスや工場で使用する電力を再生可能エネルギー100%にする「RE100宣言」を行いました。自社工場に太陽光発電設備を導入し、再エネ由来の電力会社と契約したことで、再エネ比率は75%に上昇しました。残りの25%分は再生エネ由来のクレジットを用いて埋め合わせすることで100%を達成しています。

このように、私たちの自社工場は既にRE100に対応していますが、国際的なイニシアティブのRE100は大企業を対象としたもので、私たちのような中小企業はその対象ではありません。しかし、再生可能エネルギーへの転換には中小企業も取り組む必要があります。私たちがそのモデルとなれれば、他の中小企業の皆さんにも取り組んでいただけるのではないかと思います。

昨年末には山形県で、太陽光発電などによって生み出されたクレジット約1500トンの入札が行われ、カルネコはこのうち924トンを落札しました。自社工場だけでなく、取引先の印刷会社にも利用していただくことで、RE100対応の幅を広げたいと考えています。

「SDGs宣言」で持続可能な
社会づくりに貢献

現在、「持続可能な開発目標(SDGs)」が非常に注目されていますが、多くの企業は「何をすれば良いのかわからない」というのが本音だと思います。私たちの活動、EVIによる森林支援にご参加いただくことでSDGsの多くの項目に合致します。そこで皆さんに『まずは森林支援から始めてください』とお話しています。これをカルネコの事業にあてはめてみると濃淡はあるものの、SDGsの17項目のうち10項目に当てはまります。例えば、無駄なものは作らないという私たちの事業モデルそのものが、SDGsの目標12「つくる責任・つかう責任」に適っています。また、RE100への対応はエネルギーに関する目標7に、森林支援は目標15に関係し、両者は目標13の気候変動対策にも適っています。

多くの企業の方々は、「何がどの項目に当てはまるのかわからない」ということで悩んでいます。また、実際に当てはまる事業を行っているのに、当てはまらないと思っているケースもあります。

そこで私たちは、まず企業の方々に何を行っているのかを聞きます。そして、その取り組みをSDGsの各項目の横に書き、「今後10~20年でさらにここまでやる」と宣言するのがSDGs宣言だと説明すると、皆、「それならできる」と納得されます。

世の中の人たちが取り組みやすくなるよう、実はSDGsは身近なものであることを、カルネコの事例で示したいと思っています。そのためにも昨年は「カルネコ・エコポリシー(環境方針)」の制定と共に、「SDGs宣言」を行いました。この宣言は、カルネコの取り組みをSDGsの項目に沿って整理し、SDGs達成を目指すものです。

このような整理をすると、自分たちが良い取り組みをしていることに気づきます。企業は成長していくもので、環境への取り組みがお客様にご理解いただける時代になったと確信できれば、成長意欲も高まります。そしてSDGsの残りの項目には、どのような取り組みが当てはまるかと考えるようになります。これがSDGsの最大のメリットで、その総和が世の中全体を前に動かしていくのだと思います。

販促ツールを通じて地域や企業と結びついた環境貢献を実践する加藤社長。「SDGsは身近なもの」と気づきを促すための様々な観点をお話しいただいた。

 

加藤 孝一(かとう・こういち)
カルネコ 代表取締役社長

 

『環境会議2019年春号』

『環境会議』は「環境知性を暮らしと仕事に生かす」を理念とし、社会の課題に対して幅広く問題意識を持つ人々と共に未来を考える雑誌です。
特集1 循環経済と脱炭素社会の構想
特集2 環境と生命のデザイン

(発売日:3月5日)

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