「地域新電力」が自治体SDGs達成の原動力に

今、自治体と地域内企業が参画して設立する「地域新電力」が注目されている。佐賀市で開催された環境ビジネスシンポジウム『低炭素化推進と持続可能な地域づくり』で、Looopの戦略本部・電力事業本部本部長、小嶋祐輔氏が講演。地域新電力の意義と設立についてレポートする。

小嶋 祐輔(Looop取締役戦略本部・電力事業本部本部長)

地域新電力は
SDGs達成の原動力に

地域内の資源を電源として活用し、新たなエネルギーを生産。そして地域内で使うのが「地域新電力」だ。新たなエネルギーの地産地消ともいえるこのしくみは、低炭素化社会の実現などの環境に関する課題の解決だけでなく、地域の雇用促進や資源活用、産業振興など「持続可能な地域づくり」にもつながる。

つまり、自治体にとって、SDGs達成への原動力となる大きな可能性を持つのが地域新電力なのである。

小嶋氏は『早期に収益化 これから始める地域新電力』と題した講演で、地域新電力が注目される理由やその意義、立ち上げポイント、先進事例などを紹介した。

自家消費へのシフト

地域電源は、地域内に還元すべき

Looopは、2011年4月、東日本大震災でのボランティア活動から設立された企業。「エネルギーフリー社会の実現」を企業理念とし、再エネ施設の設置や設備の販売、電力事業などを手がけている。

「日本の電力業界は、東日本大震災以降、固定価格買取制度(FIT)の導入と電力小売全面自由化によって、大きく変化しました」と小嶋氏は述べる。発電、送電、小売のうち、送電は震災前も現在も変わらず規制領域となっているが、発電においては分散型発電が拡大。直近では、北海道地震の全域停電の経験もあって、特に分散型エネルギーに関する議論が高まっている。

また、小売においては低圧市場が解禁となり、事業者が一般消費者向けの市場に参入できる状況となった。

そのようななか、地域新電力の意義について小嶋氏は、「地域内に電力源があるにもかかわらず、地域外から電力を購入すれば、利益は地域外へと流れます。地域新電力を設立すれば、地域電源を地域に還元できます。電力が余ったら外に売れば良い。さらには、地域新電力を使って何をするか。地域新電力を早々に立ち上げて、次のサービスを考える余力をつくることが重要です」と解説する。

地域新電力の一般的意義

FITよりも「自家消費」が経済的

これまでの地域新電力立ち上げ方は、まず自治体が管理する学校や庁舎などに電力を供給、次に法人、そして最後に市民へ供給するというステップを踏むことが一般的であった。

しかし近年の市況を考えると、このフローに工夫が必要だと小嶋氏は言う。「電力小売市場は、全面自由化によって大きく変化しました。どの電力会社も値下げ攻勢をかけている。法人は一円でも安い電力会社と契約したい。新規参入の地域新電力がその中に入り込むのは厳しい状況です」(小嶋氏)。

そこで考えるべきが「自家消費」だという。固定価格買取制度(FIT)は消費者が払う電気代に上乗せされている再エネ賦課金で賄われている。近年はFIT単価が下がっているが、再エネ設備が増え、法人や一般家庭が負担する再エネ賦課金の上昇が続いている。「それを考えると、FITで売るよりも自家消費をして、電力会社から電気を買わない方が、経済性が高いという状況に変わってきました。これを地域新電力の強みの一つとして、早期立ち上げを推進するのが得策と言えます」(小嶋氏)。

とはいえ、初期費用の高さが導入のネックであることは変わらない。そこでLooopが打ち出しているのが『MY自家消費セット』。設備導入費用をリースや割賦払いにして初期費用をゼロにし、削減された電気代を支払代金に充てるというもの。工場や社屋に電気を供給し、いずれ太陽光発電設備は事業者の資産となる仕組みだ。

このソリューションを活用すると、例えば、小中学校にクーラーを導入する助成金を設ける自治体がある場合、太陽光発電設備とクーラーを組み合わせて導入し、初期費用をゼロにするというビジネスモデルも考えられるという。

地域新電力を核に
地域ソリューションを

千葉県銚子市で設立された『銚子電力』は、地域新電力の先進例の一つ。銚子市とエックス都市研究所、そして地元金融機関の出資で設立された。同社は、電力だけでなく、再エネ設備、エネルギーマネジメントサービスも提供する構えだ。

「まずは市の施設からはじめ、長期的には、漁業が盛んな地域内で電力を使う方々に適したメニューを考えていきます」(小嶋氏)。電気供給だけでなく、地域貢献となるサービスをどのように提供するかもポイントだ。銚子市は、人口の半分以上を60歳以上が占めており、「こうした課題を中心とした地域貢献サービスを企画し、地元に営業活動をしていきます」(小嶋氏)と抱負を述べる。

「地域新電力において、基本的には、地域に住む人が『主語』となって循環させていかなければならない」と小嶋氏は語る。「私たちLooopは、ノウハウや枠組みを提供し発電や小売りを担いますが、地域に根差したコンテンツなどは、地元の人が手掛けることで好循環が生まれます。またいかに人を呼び込めるか。事業者側、生活者側、地域を活性化するサービスでは人の問題が切っても切り離せない。地域新電力を核として、様々なソリューションを提供しながら、地域に根差した人材開発が重要」(小嶋氏)とし、地域の課題に悩む自治体関係者に向け力強く語った。

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