「脱炭素」型ビジネスモデルと森林保全への対応

カルネコは、販促物の実需調達を通じ、無駄がなく環境負荷が少ないプロモーションを提案している。また、「日本の森と水と空気を守る」をテーマに、森林事業者と企業、消費者を結ぶ環境貢献プラットフォーム「EVI(Eco Value Interchange)」を運営。

森林事業者の二酸化炭素(CO2)吸収実績をクレジットとして購入するカーボン・オフセットを活用し、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成を目指す。

加藤 孝一(カルネコ 代表取締役社長)

 

 

販促物の受注生産で無駄を削減

カルネコのビジネスモデルは、プロモーションにおけるニーズの変化に対応し、同時に環境への負荷をなくしていくものです。企業のプロモーションは、かつては全国一律で行ってきましたが、次第に地域の特性に沿ったチェーンごとのプロモーションが求められるようになりました。今後はさらにメッシュが細かくなり、店舗ごとに異なるプロモーションが求められていくでしょう。

実需型生産のカルネコシステムは、販促物を「いるとき」「いる数」「どこへでも」1つからお届けするもので、このようなメッシュの細かさにも対応しやすくなっています。また、カルネコシステムはSDGs達成への取り組みや、無駄なCO2を出さないことにも寄与します。

販促物を「いるとき」「いる数」だけ発注できるため、大量発注・在庫型(見込生産)のように、大量に廃棄して燃やしたり、リサイクルで環境負荷をかけることはありません。これまで約30社の企業にご利用いただいていますが、このシステムの利用で65%の経費ロスを削減できたという会社もあります。

カルネコではまた、外装材やPOP等、すべての販促物の製造段階で排出されるCO2を、森林などのクレジットでカーボン・オフセットしており、2017年度の実績は1416トン︲CO2になります。

カルネコは、店頭でお客様に適切なメッセージを訴求することで、安売りすることなく、消費者や小売・卸売業者、メーカーというすべての人々に適切な利潤がもたらされる仕組みを作ってきました。その際、販促物の無駄をなくし、CO2排出量をオフセットし、企業の責任を果たしていく中で、世の中の変化やニーズに対応できるビジネスモデルができたと考えています。

カルネコのSDGsへの貢献(上)と、「POP'n ねっと」事業(下)の各ロゴ

国産材とクレジットの有効活用

森林を持続可能にするためには、木が売れることが重要です。カルネコは、木材の有効活用として、国産材を使用した木工品の通販サイト「森のめぐみのおとりよせ」も運営しています。そして2015年には楽天、Yahoo!、Amazonで、商品購入と同時に森林保全ができる環境貢献型商品だけを取り揃えたショッピングサイト「EVI SHOP」も立ち上げました。各サイトを通じて木材を使った製品を売るお手伝いをしています。

西日本豪雨や猛暑、従来とは異なるルートの台風など、地球温暖化の影響と考えられる異常気象が国内でも顕著になっています。日本の面積の68%を占める森林は、CO2を吸収して酸素に変える光合成を行っており、地球温暖化の進行を食い止めるためにも重要です。

この森林の機能を担保するため、多くの方々に木を使ってほしいと考えています。私たちは企業がノベリティを作る際にも、国産材を使った製品を採用してほしいと呼びかけており、近年は多くのオファーをいただいています。

被災地支援にも
つながる森林支援

森林支援は、大規模な災害に見舞われた地域の支援にもつながります。2011年3月に発生した東日本大震災の翌年には、「あなたが選ぶ!ともに生きる!」というサポート企画を立ち上げ、9月1日の「防災の日」には、被災地の子供たちの未来の環境を守る「ともに生きる! 防災・復興キャンペーン」を3年連続で実施しました。そこでは、防災品メーカーや日本スーパーマーケット協会、日本チェーンストア協会などにご協力いただき、防災アイテムを購入すると1つにつき1円が被災地の森林クレジット購入に充てられる仕組みを作りました。3年間で419トンのCO2量に相当するクレジットを購入し、469万7500円の支援ができました。

2016年の熊本地震は、熊本県有林のクレジット200トン分を購入しました。そして、カーボン・オフセット付きのくまモンのシールを作成し、シールが貼られた商品を購入すると1円が熊本の森林支援に、1円が被災した方々への寄付に使われるキャンペーンを展開しました。

さらに今年7月の西日本豪雨では、被災地の森林18カ所のクレジットを各10トン、計180トン購入し、支援を続けています。

多様な環境方針を提示

カルネコでは今年8月1日、基本方針と行動指針から成る「カルネコ・エコポリシー(環境方針)」を制定し、また「SDGs宣言」と「RE100宣言」も、同時に行っています。

カルネコは環境配慮型のビジネスモデルやEVIの環境貢献活動を通じ、SDGsの達成を目指します。SDGsの17項目のうち、10の目標に対して具体的な取り組みを行っています。また、「RE100宣言」はオフィスや工場で使用する電力を、再生可能エネルギー100%にしていくものです。自社工場に太陽光発電設備を導入し、再エネ由来の電力会社とも契約して、2030年までに100%達成を目指しています。

さらに「私たちの道 CalNeCo Way」として、常に革新的な変化をもたらす製品やサービスを開発することに情熱を傾け、新素材・新製法・新機能に合致した新しい製品やサービスを生み出す努力を絶え間なく続けていこうとしています。

今年8月下旬には、幅広い方々にカルネコシステムを活用していただけるよう、WEB印刷サービス「POP'n ねっと」も開始しました。メーカーだけでなく、学校や町内会、地方自治体など様々な場で活用していただきたいと考えています。私たちの受注生産モデルによって世の中の作り過ぎや無駄をなくし、CO2排出も削減していきたいと思っています。 (談)

 

加藤 孝一(かとう・こういち)
カルネコ 代表取締役社長

 

 

『環境会議2018年秋号』

『環境会議』は「環境知性を暮らしと仕事に生かす」を理念とし、社会の課題に対して幅広く問題意識を持つ人々と共に未来を考える雑誌です。
特集1 地域特性でつくる日本型SDGs
特集2 自然資源の利活用で新事業を創出

(発売日:9月5日)

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