NTT西日本、プログラミング教育サービスに挑む 子供たちに「未来の選択肢」を

2020年の初等中等教育からのプログラミング教育必修化に向けて、NTT西日本は教育ITベンチャーなどと組み、プログラミング教育サービスを検討している。課題のひとつである「プログラミング教育の指導者不足」も解決する、そのサービスモデルとは。

NTT西日本は大阪府寝屋川市立石津小学校でプログラミング教育の実証事業を行っている

求められる「教育の進化」

IoT、AI、ビッグデータ、ロボティクスといった技術が急速に発展する今、世界の構造は大きな変革期を迎える。米デューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソンは「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」と予測。2045年にはAIが人間の知能を超えるシンギュラリティが起こり、人の仕事の大半がAIに置き換えられるといった見方もある。

「世の中の変化に合わせ、教育もまた、変わる必要がある」と話すのは、NTT西日本アライアンス営業本部の松浦克太氏。「新しい時代を生きていかなければならない子どもたちが、何か問題にぶつかった時の解決力や新しいモノを生み出していく力の基礎を身に着ける教育の一つが、プログラミング教育だと思います」

小型ロボットOzobotを使い、楽しみながらプログラミング的思考を身につける

地域に存在する人材をプログラミング教育指導者に

NTT西日本は、2020年のプログラミング教育必修化を見据え、小中学生を主な対象としたプログラミング教育サービス『CodeKids(仮称)』をアライアンス企業などと開発中だ。

『CodeKids(仮称)』は、教育現場へのICT環境の整備に加え、教材の配信、教材コンテンツの開発(カリキュラムや指導者養成教材など)、さらには教育ICTの地域人材を養成するハブとして講師養成や派遣まで行う、総合的なサービスとして行う考えだ。

最大の特徴は、子どもの教育はもちろん、プログラミング教育指導者の不足という課題も、解決を図ることだ。

アライアンス営業本部の中村正敏氏は、「プログラミング教育の必要性に関する議論が先行し、『誰がどうやって教えるか』という問題が残ったままです。指導者不足が最大の課題となっています」と指摘する。NTT西日本は、独自のプログラミング指導者養成カリキュラムを持つベンチャー企業のキャスタリア及び上越教育大学などと連携することで、この課題を解決したいと考えている。キャスタリアは、NTT西日本がベンチャー企業などとの共同事業開発を目的として開催したビジネスコンテスト「Startup Factory 2015」において、ネクスト・アライアンス賞を受賞した企業でもある。

NTT西日本 アライアンス営業本部ビジネスデザイン部ビジネスクリエーション部門 中村 正敏 氏

「仕組みとしては、寺子屋のイメージです」(中村氏)

寺子屋では近所の学生や大人が先生となり子どもを教える。地域には学生だけでなく、会社をリタイアした優秀なエンジニアも多くいるはずだ。こうした地域に存在する人材をプログラミング指導者として養成し、地域完結型の教育モデルを創出する。

NTT西日本では、プログラミング指導者養成講座を同時に展開し、地域の大学などと連携した講師養成・派遣モデルを構築したい考えだ。

楽しみながらプログラミング的思考を習得

文部科学省は、子ども向けプログラミング教育の目的を、プログラマー養成ではなく、普遍的な生きる力としての「プログラミング的思考」と「問題解決手法」などを育むこととしている。

『CodeKids(仮称)』では、この目的を実現するプログラミング教材として、小型ロボットOzobot※を用意。紙やマーカーペンなどでOzobotを自由に動かす、タブレットなどでプログラミングしてOzobotを制御するといった内容で、一見敷居の高そうなプログラミングを楽しく学習させる。(※Ozobotとは、3センチ弱四方のとても小型のロボットで、紙の上に描いた線や、タブレットなどの画面に描いた線を辿りながら動くロボット)

現在、NTT西日本は、総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業」の一環として、大阪府寝屋川市立石津小学校でOzobotを使った実証事業を行っている。5回の講座で、プログラミングの重要性や、プログラミング基本3構造の理解、簡単なプログラミング作成能力までを身につける。小学生を教えるのは、プログラミング指導者として研修を受けた地元の大学生や高専生たちだ。

講座を通して、プログラミングに対する恐怖心は消え、どんどんトライ&エラーをして動かしてみようという前向きな姿勢が芽生え始めたという。

NTT西日本 アライアンス営業本部ビジネスデザイン部ビジネスクリエーション部門 松浦 克太 氏

「複数解を容認する姿勢を身に着けることが、教育カリキュラムの一つの目的です」(松浦氏)

教材コンテンツやカリキュラムを学校に提供する考えだが、「ある程度ノウハウがたまってくれば、イメージとしては我々が7割のカリキュラムを提供し、残り3割は指導者が現場に合わせたオリジナルなカリキュラムを作るなどの自由度も必要と感じています」と中村氏は話す。

『CodeKids(仮称)』は2017年度以降の提供開始に向けて準備中。公教育だけでなく、私学や塾といった私教育へもアプローチしていく方針だ。

プログラミング教育で地方創生に貢献

子ども向けプログラミング教育は地方創生、すなわち“まち・ひと・しごとづくり”に直結する。先進的な教育で21世紀型人材を地域で育成する〈ひとづくり〉、圧倒的に不足しているプログラミング指導者を養成し雇用創出につなげる〈しごとづくり〉、そして、こうした人材がイノベーティブな〈まちづくり〉を担っていく。

「プログラミング教育を通じて、地域からでも世界へチャレンジできるという夢を子どもたちに持ってもらいたい。そして、地方創生×ICTを実現したいと思っています」(松浦氏)

“すべての子どもたちに未来の選択肢を”これが、NTT西日本がめざすプログラミング教育の姿だ。

NTT西日本のプログラミング教育サービス「CodeKids(仮称)」の特徴

プログラミング指導者を養成し、地域完結型教育モデルを構築

 

お問い合わせ

  1. 西日本電信電話株式会社
    アライアンス営業本部
    ビジネスデザイン部 ビジネスクリエーション部門

  2. Mail:programming-edu@west.ntt.co.jp

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