生物多様性とローカリゼーション

生物多様性という言葉がもてはやされて久しいが、生物多様性の意味や重要性に対する理解が十分に多くの人に得られているとは言いがたい。同時にどれほど生物多様性が危機にさらされているのかも実生活上では実感しづらいところがある。しかし、生物多様性の衰退は、水・土壌・大気環境の悪化や感染症・有害生物の蔓延というかたちで確実に我々の生活にも影響を及ぼし始めている。本文では生物多様性の意義と現状について、解説するとともに、私たち人類の未来を支えるために生物多様性とどう向き合うべきかを議論してみたい。

大絶滅は生物種の減少と新しい種の進化の場を与えた

生物多様性とは、遺伝子の多様性から個体群・種の多様性、生態系の多様性に至るさまざまな階層での多様性を包括する概念をいう。地球上に存在する種は、種名がつけられているものだけでも170万種以上、未発見の種を含めると3000万種とも1億種ともいわれている。これだけの膨大な数の種によって多様な遺伝子プールが維持されると同時に、多様な生態系が全地球上に展開され、地球レベルでのエネルギー流動および物質循環が安定して行われている。

地球上に生存する何千万種もの生物は、種ごとに形態も生活史もさまざまであり、それぞれの種内にも豊富な遺伝的変異が含まれている。このような生物多様性は、今からおよそ38億年前に地球上に生命が誕生して以来、脈々と続いてきた生物進化と絶滅の歴史の繰り返しのなかで誕生したものである。

生物は、その進化の歴史の中で多くの種が絶滅しており、特に大絶滅とよばれる地球規模での生物種の激減を5回も経験してきた。なかでも有名なのは6500万年前白亜紀後期の恐竜の大絶滅である。これらの大きな破局の原因は、大陸移動などの地殻変動や隕石の衝突などの大異変に伴う気候変化と考えられている。

大絶滅のたびに生物種は大幅に減少したが、それは新しい種の進化の場を与えてくれる重要なイベントでもあった。白亜紀後期の恐竜の絶滅によって、それまで影を潜めていた哺乳類が代わって地上で繁栄し、6000万年以上もの年月をかけた進化の果てにわれわれ人類が誕生した。

健全な生態系と人口爆発後の崩壊した生態系

しかし、人類の誕生は、新たな絶滅の歴史の始まりでもあった。人類は先史時代の分布拡大に伴い、地球上の生物たちをつぎつぎに絶滅に追いやってきた。現在の地球上で起こっている生物種の絶滅速度は過去のいかなる絶滅よりも圧倒的に大きいとされる。現在の大絶滅では、熱帯林の奥地から極地の氷上に至るまで、地球上のいたる所に人間活動の影響が及び、新しい種を生み出すための遺伝子資源と進化のための時間が急速に奪われている。

森林破壊は生物多様性の低下をもたらす

世界規模での生態系破壊の中でも森林破壊は最も深刻な問題である。今から8000年前の地球上は、50億〜60億ヘクタールにも及ぶ森林に覆われていた。しかし、人間による土地開発や木材資源の伐採のために、現在では森林の総面積は3分の2の34億5000万ヘクタールにまで縮小し、今もなお消失を続けている。森林破壊でもっとも深刻で危機的状況にあるのが、熱帯林地域である。熱帯林の面積は17億3000万ヘクタールで地球上の全陸地面積のわずか7%を占めるに過ぎない。このわずかな面積地帯に地球上の全生物種の40%以上が生息しているとされる。すなわち、熱帯林は生物多様性の宝庫とも言うべき重要な地域であり、熱帯林の消失は地球レベルの生物多様性減少に直結する。

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