2016年4月号

環境会議

2013年度比26%削減へ 今春までに温暖化対策計画

平口 洋(環境副大臣)

0
​ ​ ​

昨年末の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、すべての国々が参加する初の合意である「パリ協定」が採択された。国内では、温室効果ガスを2030年度に、2013年度比で26%削減するという目標の達成に向けて、今春までに地球温暖化対策計画が策定される見通しとなっている。地球温暖化問題の解決に向けては、皆が気候変動を自分の問題として意識し、取り組みを進めていくことが重要となる。

平口 洋(環境副大臣)

自然と人間の安定的な関係の構築

―環境副大臣として、どのような自然環境を理想と考えていますか。

人間は大昔から、身の回りの自然を活用、利用してきました。かつては、自然と人間の間に安定的な関係がありました。しかし、産業革命以降、自然が破壊され、人間の生活も脅かされるようになり、それが地球規模で起きているのが気候変動問題ではないでしょうか。

このため、もう一度、自然との安定した関係を取り戻す必要があると思います。自然を利用することは、人間が生きていく上で不可欠ですが、持続可能に利用させてもらう術を、そろそろ生み出さなければなりません。先進国はこれまで、かなりの自然を破壊してきたので、その分、今後は自然と人間の安定的な関係を先導的に模索していく必要があると思います。

―環境問題への取り組みには、多くの人が関わることが重要ですね。

環境問題と聞くと、自分とはかけ離れた出来事だと思う人もいるかもしれませんが、環境とは本来、人間を取り囲むすべてを指す言葉です。私たち人間は、その環境から日々、様々な恩恵を得ることで暮らしをつないでいるのです。

昨今の便利過ぎる世の中では、私たちの暮らしが環境に支えられているという実感を持ちにくくなっていますが、だからこそ、小さいことでも良いので、多くの皆さんに環境問題に取り組んでいただきたいと思います。そして、自分たちは環境と密接につながっているのだという実感を得ていただくことが、非常に重要だと考えています。

気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)のメイン会場の様子。写真提供:環境省

各界、各層が一体となった取り組みが必要

―昨年末の気候変動枠組条約第21回締約国会議では、パリ協定が採択されました。日本としては今後、どのような指針を持って地球温暖化対策を進めていきますか。

パリ協定は、気候変動政策に関して歴史上初めて、すべての国々が参加する公平な合意となりました。このような合意に、日本も積極的に貢献できたことを、大変喜ばしく思っています。

昨年末には、政府の地球温暖化対策推進本部において、パリ協定を踏まえた我が国の取組方針を決定しました。まず国内では、温室効果ガスを2030年度に、2013年度比で26%削減するという目標を立てています。その達成に向けた道筋を明らかにするため、今春までに地球温暖化対策計画を策定します。これに基づき、省エネの徹底や再生可能エネルギーの最大限の導入等、対策や施策を進めていきます。

地球温暖化問題の解決には、国民、各界、各層が一体となった取り組みが必要です。このため、国民運動について、取り組みの方向性をしっかり示す必要があると考えています。さらにパリ協定では、気温上昇を2℃より十分低く抑える「2℃目標」が世界の共通目標となりました。これらを踏まえて我が国も、世界規模での排出削減に向け、長期的、戦略的に貢献していきます。またパリ協定の実施に向けて、我が国の署名および締結に必要な準備等を進めていきます。

―エネルギーの課題では、再生可能エネルギーの今後について、どのような期待を持たれていますか。

再生可能エネルギーは、二酸化炭素(CO2)を排出しないエネルギーで、地球温暖化対策として非常に重要です。我が国の26%削減目標においては、現在の2倍の再生可能エネルギーの導入を見込んでいます。

再生可能エネルギーの促進では、例えば、島根県の隠岐諸島で風力発電や太陽光発電、蓄電池を組み合わせて導入する実証事業を進めています。風力や太陽光などの再生可能エネルギーに関しては、電気の安定供給の面で課題があり、大幅な導入拡大に向けては、蓄電池の活用促進をはかることが必要です。

この隠岐諸島の事業では、発電出力の変動に対応できるよう、2種類の蓄電池を組み合わせた国内初の蓄電池システムの技術、実証を行っています。蓄電池の効果的、効率的な活用方法の普及を通じ、26%削減目標で示した、再生可能エネルギーのさらなる導入を実現したいと考えています。

2015年12月12日(日本時間13日未明)、パリ協定の採択が宣言された瞬間。写真提供:環境省

二国間クレジット制度のパートナーは16ヵ国に

―気候変動対策では、途上国・新興国への協力も重要となっています。日本としては、どのような点で協力の可能性があるでしょうか。

世界全体での排出削減に貢献していくため、途上国や新興国に対しては、我が国の経験や知見を基にした政策立案に関する支援や、低炭素技術の海外展開などを推進していきます。例えば、途上国、新興国では温室効果ガスの削減に加え、環境汚染対策も課題となっています。これらの課題への対応を同時に実現する、コベネフィット型の技術の導入などを、研修やセミナーによる能力強化、制度設計支援、実証事業を組み合わせた協力によって、実施していきます。

また、我が国は、優れた低炭素技術の途上国における普及等を進め、そこで実現した排出削減分を日本の削減目標に活用する二国間クレジット制度(JCM)を実施しており、そのパートナー国は現在16ヵ国に上っています。例えば、ベトナムでの送電網の効率化や、パラオでの太陽光発電設備の導入など、様々な省エネルギー、再生可能エネルギーのプロジェクトに取り組んでいます。

今後も、都市間連携の活用や、国際協力機構(JICA)、アジア開発銀行(ADB)との連携などにより、さらなるプロジェクトの形成をはかっていきます。

―気候変動への適応策では、日本のどのような技術が世界に寄与できるでしょうか。また、個々人としてどのような姿勢で生活を考えていくべきでしょうか。

昨年11月に、気候変動の影響の評価と対策を取りまとめた「気候変動の影響への適応計画」を、我が国で初めて策定しました。適応計画には、これまでの日本の経験に基づく知見が大変豊富に含まれています。

例えば、私たちは数多くの災害を経験し、それを克服してきました。あるいは、農業の品種改良の技術や、気候変動の観測、予測の技術にも長けています。こうした世界に誇れる技術やノウハウを提供しながら、特に、途上国で気候変動影響の評価や適応計画の策定が進んでいくよう、後押ししたいと思っています。

また、日本は気候の変化が豊かであり、そうしたものに、国民の皆さんの感度が高いという思いを持っています。地域や企業の皆様に、それぞれの場面で気候変動を自分のこととして考えていただくことが大変重要だと思います。

COP21の会場正面入り口の様子。196の国と地域の国旗をデザインした柱が並んだ。写真提供:環境省

平口 洋(ひらぐち・ひろし)
環境副大臣

 

『環境会議2016年春号』

『環境会議』は「環境知性を暮らしと仕事に生かす」を理念とし、社会の課題に対して幅広く問題意識を持つ人々と共に未来を考える雑誌です。
特集1 生物多様性と人類の未来−地域を基点とした環境づくりと人づくり
涌井史郎(東京都市大学環境学部 教授)、進士五十八(東京農業大学名誉教授・元学長)、桝太一(日本テレビ放送網 アナウンサー)、他
特集2 COP21「パリ協定」を踏まえた世界と日本の動き
特集3 「モノ」から「コト」へ 地域の発信力
(発売日:3月5日)

» 宣伝会議ONLINEで買う 

0
​ ​ ​

バックナンバー

別冊「人間会議」2018年冬号

哲学を生活に活かし、
人間力を磨く

特集1 事業承継で地元企業が甦る

特集2 地域の経営資源を探してみたら

バックナンバー検索

注目のバックナンバーはこちら

最新情報をチェック。

会員になると 最新「事業構想」が読み放題。さらに

会員の特典をもっとみる