社会的課題からビジネス創造―利益を追求する価値観

ビジネスを生み出す事業構想力を育むためには「仮説創設力」が求められる。そして、その力を身につけるためには物事を深堀して考える必要がある。私が大学や大学院でビジネスプランの作成を指導する際、論文のフレームワークを引用したビジネスプラン作成のためのフレームワークを用いているのは、そのためだ(図1)。

図1 ビジネスプラン作成のためのフレームワーク

出典:「社会科学系のための「優秀論文」作成術」川崎剛(2010)をベースに筆者作成

 

私自身は「仮説創設力」を「課題の抽出力」と「本質的原因の探求力」と定義しているが、誰の目にも留まるような目に見える課題は、実は真の課題ではないかも知れないし、真っ先に頭の中に浮かぶような表層的な原因をいくら探求しても、本質的な解決には繋がらないこともあり得る。私のゼミや講義の中では、「なぜ、その事業を構想するのか」というビジネスの背骨となる目的部分、つまりビジネスの「Why」に相当する部分にかなりの時間を費やすことになる。ビジネスの目的部分を、①社会的課題を解決するため、②顕在化している需要に対応するため、③潜在的な需要に対応するため、④これまでにはない新たな価値を創造するための4つに類型化しているが、本稿では、①の社会的課題を解決するためのビジネスについて述べていきたい。

想像力が生まれる場面とは

ここ最近、大学、大学院の講義やゼミでの指導に加え、企業や行政機関から新規ビジネスに関する企画やコーディネーターの依頼を受ける機会が増えている。新規ビジネスへの期待が高まる一方で、ビジネスの芽を見つけることはとても難しい。

新たなビジネスの「創造」を目指すものの、多くの人が「想像」の段階で行き詰っている。想像力(=イマジネーション)が生まれる場面は、どのように訪れるのだろうか?

あらためてこのことを考えてみると、二つの場面が浮かんでくる。ひとつは、夢や希望から生まれるポジティブな場面。つまり、子ども心に立ち返る時だ。そしてもうひとつは、時間や予算など、様々な「制約」に追い込まれ、それを何とか克服しようと知恵を搾り出す瞬間に訪れるもの。締め切り間際にストーリーが降りてくる小説家の如く、相当追い込まれた局面で事態打開の妙案が浮んで来たという経験をした人は多いのではないだろうか?

「社会的課題からビジネスを生み出す」ということは、一見後者に分類されるものと考えられがちだが、あながちそれだけとは言い切れない。

希望溢れるバングラデシュ

これまで仕事で30回以上訪れているバングラディシュで、いつも感じることは、河川汚染やごみ問題など衛生面や環境面での社会的課題が山積し、現地の生活は厳しい状態にあるものの、そこで暮らす人々は未来への希望に溢れているということだ。

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