ナナメイズム しなやかに自分らしく生きるためのキャリア形成支援

30〜40代の女性会社員を対象にしたキャリア支援プログラム「しなやかさんのナナメンター」。ナナメンターとは斜めとメンターを掛け合わせた言葉で、縦でも横でもない関係性の中で学び合える間柄を表している。このユニークな事業を興したnanameism代表取締役社長の小坂佳子氏に話を聞いた。

小坂佳子
株式会社nanameism代表取締役社長
(東京校12期生/2024年度修了)

出産や育児も経験しながら
記者そして管理職として活躍

世界経済フォーラムによるグローバル・ジェンダー・ギャップ指数の日本の順位は2025年も118位にとどまった。育児・介護休業法、男女共同参画社会基本法、女性活躍推進法などを背景に、女性が働く環境の整備は進んでいるものの、今なお課題は少なくない。

2025年5月に株式会社nanameism(ナナメイズム)を立ち上げた代表取締役社長の小坂佳子氏は、そんな社会の変化の中でキャリアを形成してきた1人だ。大学卒業後、読売新聞に入社し、地方支局を経験した後、本社の生活情報部(家庭面担当)に配属され、食文化・食の安全や子育て・児童虐待といったテーマを主に担当。地方支局時代には結婚や出産を経験し、子育てしながら記者を続ける社内初の世代として活躍してきた。

「ある程度の年齢になると、同期の男性は昇進していきます。私は働きやすい環境だったとはいえ、生活情報部での仕事が長く続き、これで良いのかという気持ちはありました。そのころに秋田支局長のポストを打診され、思い切って挑戦。管理職としての重みや難しさを経験しました」

その後、本社で女性向けのウェブサイトの編集長に就任。初めて営業目標を課される立場となったが、良い記事を作るだけでは数字が伸びない。SEO対策などを猛勉強したものの、「営業面での力のなさを痛感しました」。ただ、それまでの記者としての経験に、編集長として多数の女性リーダーに取材した経験が重なったことで「ビジネスを学べば、自分にも何かできるのではないか」と考えるようになる。これが大学院進学へのモチベーションになった。

無形の資産を可視化して価値化する
大学院での学びが起業を後押し

2023年4月、事業構想大学院大学(MPD)に入学。特に印象に残っているのは「職業や役職を問わず対等に議論できる環境だったこと。長らく縦社会の組織で生きてきたので、青臭い議論をする経験自体が新鮮で、大人になってからの仲間ができたと感じました」。

事業構想のテーマは自分自身のキャリア形成だけでなく、後進のキャリアパス整備に苦労したことで「女性のキャリア支援」にすると決めていたが、講義で学んだ「無形の資産を可視化して価値化する」という考え方に大きく影響を受けた。記者として当たり前だと思っていたインタビューやファシリテーションの技術は無形の資産であり、これを事業に生かすには外から見える状態にする必要があるというわけだ。

MPDを修了した2025年春、小坂氏は新聞社を退職し、事業構想を実現するべく会社を設立した。前職の読売新聞社は協賛として会場を提供するほか、グループ会社との取引も始まり、円満な協力関係にある。

「振り返れば、MPDで過ごした2年間は人生100年時代に自分をリ・クリエーション(再創造)するための期間でした。昨今は中高年の起業やキャリア形成への関心が高まっていますが、長い間、現役を続けるために必要な時間だったと思います」

斜めの関係で人脈を広げ
対話を通して自己効力感を獲得

小坂氏が立ち上げた会社の名はナナメイズム。「ナナメ」は縦でも横でもない「斜め」のこと。会社員時代、困難な局面で支えになったのは、元上司や元先輩、取材先の経営者など、組織の上下関係や横のつながりではない人たちだったことから、斜めの関係性に着目。「困ったときに気を許せる相手が1人でも2人でもいることが、しなやかに自分らしい選択をしていくために大切」だと考え、縦でも横でもない関係の中で学び合える間柄「ナナメンター」を増やす活動を事業化することにした。

その象徴ともいえるプログラムが、30〜40代の女性会社員を対象にした「しなやかさんのナナメンター」だ。6月から翌3月まで約10カ月間で全9回、約20時間をかけて、講義やグループディスカッションなどを実施。参加者には自己成長のエンジンとして自己効力感や人脈、コミュニケーション力などを獲得してもらう。それと同時に、参加者間のネットワークとして斜めの関係構築を促していく。

第1期「しなやかさんのナナメンター」の様子

プログラムを通して参加者は斜めの関係を築いていく

「プログラム設計でこだわったのは通常マンツーマンで行うメンタリングをグループ形式にしたこと。一対一だと個人の価値観や相性に引っ張られますが、グループならば多面的な見方ができます。『私なんて』とおっしゃる方が、ディスカッションを通じて誰かの役に立てることを体験する瞬間こそが一番の肝です。また、私が記者として培った取材やヒアリングのノウハウをコミュニケーション技術として提供する回も設けました。プログラムの最終回では参加者が自身のキャリアビジョンを発表し、次のアクションを言語化してもらいます」

参加者は、女性社員の能力を生かしたい企業や、女性活躍を推進したい企業に対象者を推薦してもらう企業派遣が中心。初開催となった2025年度は小売やメーカー、金融、建設など多様な業種から7名が参加した。プログラム修了後も自発的に学習を始めたり、職場で具体的な行動に移したりした参加者が多く、アンケートでも満足度が高かったという。2期目は参加者が10名に増えた。

また、企業の要望を踏まえて、カスタムプログラムを提供することも可能だ。2025年10月から2026年3月に日本テレビ系列局が実施した研修をサポートした実績があり、メディアからの問い合わせが増えている。

「今後は『キャリア』『メディア』『エリア』の3領域を軸に展開したいと考えています。地方在住の方はプログラムに参加するために東京まで出張しなければならないので、地方でも同じような内容を提供したい。人口減少を埋めるためではなく、一人ひとりが自分の考えで自分の人生を選択できるようにするために、ポジティブな選択のお手伝いを地方やメディアでもやっていきたいと思っています」

図 キャリア、メディア、エリアの3領域で構想を実装

提供:nanameism