関西医科大、日本IBM 医療生成AIの基盤構築 看護サマリー作成5分に

関西医科大学と日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は2026年7月7日、「医療AI共通ICTプラットフォーム」を共同開発したと発表した。最先端のAI活用の場を広げる次世代の医療DX基盤と位置づけるもので、関西医科大学が推進する「スマート病院構想」と医療DXをさらに加速させる。第一弾として、医師・看護師向けの「生成AIサマリー作成支援アプリケーション」の実運用を開始した。

このプラットフォームは、関西医科大学附属病院、関西医科大学総合医療センター、関西医科大学香里病院の3病院で共通利用できる診療支援AI基盤となる。各病院が個別にシステムを構築することなく、高度なAIアプリケーションを迅速に横展開できる点が最大の特徴だ。あわせて、同大学が持つ医療ナレッジを一元的に蓄積・反復利用する仕組みを整え、将来的な医療データの高度化や最先端の臨床研究を支える技術基盤の確立を目指す。

第一弾の生成AIアプリケーションは、医師・看護師の深刻な業務負担となっている文書作成の効率化を目的とし、「看護サマリー」「退院サマリー」「外来サマリー」の作成を支援する。3病院で統合運用されている富士通製の電子カルテシステムと、今回構築したクラウド上のプラットフォームを連動させ、電子カルテ内の情報を生成AIが安全に取り込んでサマリー作成を支援する仕組みだ。

看護サマリーでは、従来30分程度を要していた作業が5分で完了するなど、定型的な事務作業を大幅に削減できるという。AIが自動作成した文章はそのまま診療記録となるのではなく、医療従事者の専門的知見による最終判断を経ることで正確性を担保する。文書業務の負担を軽減し、医療従事者がより患者中心の診療に注力できる環境を創出するとともに、働き方改革にも寄与するとしている。

この医療生成AI基盤は3つの技術で支えられている。第1に、大規模言語モデル(LLM)など最先端のAIサービスを安全に利用できる環境をクラウド上に構築し、迅速な機能拡張にも柔軟に対応する。第2に、国際標準規格「FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)」に対応したサーバーを導入し、異なる電子カルテシステムとの接続を可能にすることで、地域医療連携や臨床研究への適用を可能にした。第3に、ゼロトラストネットワークによる堅牢なセキュリティ基盤を構築し、機微な医療データやAIアプリケーションをどこからでも安全に利用できる環境を実現した。なお今回のアプリケーションには、日本IBMが提供する「病院業務支援AIソリューション」を活用している。

関西医科大学は、医療の質向上と医療従事者の働き方改革を両立させるため、デジタル技術を駆使した「スマート病院構想」を推進してきた。すでにAI問診システムや生成AIを活用した患者対応システム、ICU(集中治療室)入室患者の退院判断支援システムなどを導入。今後は、院外から安全に電子カルテへアクセスできる業務用スマートフォンの配布(教職員向け)や、動画を用いた手術の患者説明システムの導入も予定する。今回のプラットフォームは、こうした構想を次世代へと進化させる「AI・医療データ中核基盤」となる。同大学は今回のプラットフォームをエンジンに、AIアプリケーションのラインアップをさらに統合・拡充し、蓄積した医療データの利活用や臨床研究支援、データ駆動型の病院経営の高度化を推進する方針だ。