DX時代の新たな自治体文書管理 PDFで電子化の課題を解決
人口減少時代の自治体には、DXによる事務の効率化が強く求められている。その鍵を握る文書の電子化、ペーパーレス化においては、セキュリティや住民の閲覧権とともに、組織内の円滑な意思疎通の確保も重要な課題。Adobe PDFはDXの推進に伴う様々な課題の解決策を提供する。
日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年頃をピークに減少が続き、2020年には16.3%、2045年には35.9%減少する見通しだ。また、20代の人口減少は更に深刻で、既に2020年には36%減少しているが、2045年には約半減の49.5%もの減少が予測されている(いずれも1995年比)。
人手不足で避けられない
自治体DX、ペーパーレス化
「諸外国では人口の減少分を移民の受入れで補っていますが、日本ではなかなかそうも行きません。ですから、稀少化する労働力を有効に活用する、生産性向上が重要になります」。総務省「自治体DX検討会」構成員で、元京都府CIO兼CISO情報政策統括監の原田智氏は、こう指摘する。
労働力不足が顕在化すると、望む人材の確保が難しくなる。特に条件面で不利な地方で優秀な人材を確保できなくなり、結果、地方の自治体における住民サービスの質の低下が懸念されている。人材の確保が難しい中でも、生産性を向上させるために自治体が採り得る手段として、デジタル技術の活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進がある。
「仕事を効率化し、生産性を向上させるためには、まず時間を無駄にしない働き方に変えていくことが必要です。コロナ禍で取り組まれるようになったテレワークを更に推進し、様々な事情に配慮しつつ、いつでも、どこでも働ける柔軟な労働環境を提供することが、最初に手を付けるべき方策になるでしょう。そのためには、役所という場所に縛られないようにする、クラウド化やペーパーレス化の取組が必要です。最近は、キャッシュレス化、デジタルインボイスへの対応もあって、自治体の財務会計業務のペーパーレス化、電子決裁化に注目が集まり、導入に取り組む自治体が増えています」(原田氏)。
財務会計を完全に電子決済化
するも、様々な課題が浮上
京都府では、予算要求から決算処理までの業務を一気通貫でシステム化し、ペーパーレス化した際に、紙決裁の廃止にも取り組んできた。「財務会計の電子決裁化が必要になったのは、決裁の大半、約8割がお金の支出を伴うものだったからです」(原田氏)。
財務会計の電子決裁化の目的としては、決裁状況の可視化や意思決定速度の向上が挙げられる。また、テレワークでは場所や時間に捉われずに決裁する必要があるほか、膨大な紙書類の保管場所に困り果てている実態もある。システム導入までに必要な留意事項は、いくつかある。まずは添付書類の見直しや請求書等の電子化、PDF化が必要となる。さらに、協議調整を済ませた上で意思決定を電子決裁で行うというように、決裁の定義を見直すことも必要だ。さらに決裁者の見直しや、会計審査、監査関係の環境整備も求められる。
一方、現状では紙決裁の方が優位な点もあり、電子決裁の導入には課題も残る。「まず、見た瞬間に概要がわかるという一覧性においては、紙が優秀だと思います。また、電子決裁では会計サイドからの修正指示の内容と意図がしっかり伝わっているかという点で若干不安が残ります。電子決裁では上司が上書き修正してしまうことがあるなど、修正内容と意図が部下に伝わりにくく、部下育成の面でも課題があると感じます」(原田氏)。
他には、情報公開への対応で、電子化された文書の公開が増えており、部分公開となった場合には、黒塗りにした部分のデータを読み取られないようにすることが重要だ。さらに長期保存、歴史的文書となると20年以上も保存する必要があるだけでなく、見読性や完全性を維持し続けなくてはならない。
ISOの要件に準拠し、紙と
同様に扱えるAdobe Acrobat
これら自治体における文書の電子化に関する様々な課題に対し、アドビ(Adobe)ではソリューションを提供している。「まず、長期保管と情報公開という2つの観点では、住民の知る権利を保護する責務が自治体に求められています。その際、必要な要件をカバーできる電子フォーマットは、おそらくPDFしかありません。PDFは情報の発信者と受信者が、環境を問わずに意図どおり情報共有できる唯一のフォーマットで、官公庁や自治体でも広く普及しています」。アドビのシニア ソリューションコンサルタントの永田敦子氏は、こう語る。
PDFは元々、アドビが開発したフォーマットだが、現在はその仕様が完全に公開され、国際標準化機構のISO3200-1として標準化されている。また、PDFの公共性を将来にわたって担保できるよう、その運用は第三者機関に譲渡されている。PDFの規格はオープンで、各社が作成ツールを提供している反面、その品質にはばらつきがある。このような中、アドビでは、ISOの要件に完全に準拠したAdobe Acrobat、そして閲覧要件に完全準拠した閲覧ツールのAdobe Acrobat Readerを提供している。
AcrobatのエディションにはProと Standardがあり、特にProを使えば、情報公開などで文書を公開する際に必要なセキュリティ対策が、簡単かつ確実に行える。例えば、文書の一部を隠して公開する際は、非公開の部分で「墨消し」が必要になる。また、文書を作成する際には、作成者名や作業の進捗状況を示すコメント、メールアドレスなどがプロパティの中に機密情報として残ってしまう場合がある。このため、文書の公開前にこれらの情報を削除することも必要だ。Acrobat Proの墨消しツールを使えば、機密情報も完全、かつ恒久的に消去できる。アクションウィザードを使えば、セキュリティ統制という処理の一連の操作を、ワンクリックで自動化できるコマンドも用意されている。
さらに自治体の文書では、障害者や高齢者なども閲覧できるようなアクセシビリティも重要になる。「Acrobatなら、アクセシビリティに関しても様々な機能があります。文書を正しい順番で読み上げられるよう構造化しているほか、表示を強いコントラストに切り替え、弱視の方が読みやすいようにすることもできます」(永田氏)。
PDFは紙と同様の見栄えで扱える点が最大のメリットだが、他にも紙と同様に、書き込みや付箋、注釈の追加、スタンプによる押印もできる。「画像は自由に取り込み、スタンプにできます。また、紙に付箋を貼るのと同様に、PDFにも付箋が付けられます。さらにコメントのやり取りを残したり、紙でできることはAcrobat PDFでそのまま電子化できるので、ぜひご活用いただきたいです」と永田氏は講演を締めくくった。
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